磯山さやか『ぽちゃモテ!』に隠された、女に嫌われないモテ方の極意
というのは、磯山は本書のインタビューで「ぽっちゃり体型が女性にも受け入れられて幸せ」「女性誌からのお声がけも多くなって」とターゲットがそちらであることを意識した発言をしている。小顔に見える写真の映り方では「あえてほっぺをぷっくりふくらませる」とアドバイスした後で「やりすぎるとブリッコと女子の反感を買うので、注意が必要です」と付け加えたり、小学生の時、男子にディズニーグッズをプレゼントされ、「女の嫉妬の怖さを学びました」と語るなど、女性を敵に回さないよう心を砕いている。 また「有吉先生のタレント進路相談」において、有吉に「上昇志向がない」と評されていたのも、上昇志向があってギラギラしている女=同性に敬遠されることを考えると、いかに磯山が女ウケを心得ているかがわかるのだ。
さらに磯山が、自慢もしないかわりに自虐もしないのも、女ウケする。自虐は同性のコミュニケーションを円滑にする場合もあるが、その一方で聞き手はマナーとして「そんなことないよ」と言わなくてはならないので、面倒くさいという側面がある。磯山は女性の反感を買う事を避け、自虐に走ることなく、程よくなめられることによって同性からの「好き」を獲得したのだ。つまり、磯山は「ナメられモテ!」なのである。
親交のある男性芸能人のコメントが大絶賛でないのも、男性芸能人にも「ナメられモテ!」していることの表れである。磯山自身、そういった褒め言葉の方が、女性読者から反感を買わないことを意図していた可能性も大いにある。1つの雑誌に従来型の細いモデルと、ぽちゃが同居するのは、誰かに憧れたい、でも、誰かを見下したいという女性の幅広い「好き」に対応した結果なのである。
しかし、読者の関心事はぽっちゃりブーム派生の経緯より、「ぽっちゃりはモテるか否か」だろう。ぶっちゃけモテますかという質問に、磯山は「ぽっちゃりブームのおかげですかね(笑)」と謙虚に肯定している。 しかし、本書を通読するとわかる。磯山は、昔からモテている。 小学校の時は「超モテた」そうで、高校の時は交流のない校外からの男子にモて、面と向かって告白されたのは8回で、予想外のところから来る告白に、意外過ぎてお断りすることもしばしば、とかなりのモテぶりを披露している。つまり磯山は、ぽっちゃりブームだからモテているのではなく、生まれてこの方モテているのである。
「弘法、筆を選ばす」という故事がある。これは弘法のような実力のある人は、どんな道具を使ってもうまく描けるという意味であるが、磯山も一緒である。「ぽちゃモテ!」は「ぽちゃだからモテる!」のでも「ぽちゃなのにモテる!」のでもなく、「モテる人はぽちゃだろうとモテる!」のである。
食欲の秋、女性の皆さまにおかれましては、秋の味覚を楽しみつつ、健康的にダイエットに取り組んでいただきたいものである。
(仁科友里)