「不妊は母の遺伝」「高熱で無精子症に」氾濫する不妊症のうわさの真偽とは?
――卵巣年齢を見る「AMH(アンチミューラリアン ホルモン)」がはやっていると聞きました。
松村 卵子の数の目安となる血液検査のことです。女性は生まれる前から、卵子の元を何百万個と持っていますが、それはその後増えることはなく、だんだん減っていきます。初潮を迎える前には20~30万個まで減り、毎月1,000個くらいは体内に吸収されて減ってしまうんです。AMHは、現段階でどれくらいの卵子があるかの目安になるものですが、卵子自体の質まではわかりません。AMHを受けているのは、30代後半の方が多いですね。
――もし、AMHで調べた卵巣年齢が高かった場合、どう対応すべきなのでしょうか?
松村 現実的に考えて、早く妊娠するしかない。AMHでは、卵子の質の良し悪しはわからないですし、数が少ないのであったら、妊娠を急ぐほかないですね。ただ卵子の数が少なかったからといって、それだけで不妊症か否かの判断はできません。「AMH」を、自分のライフプランを考えるきっかけにするのは、とてもいいことだと思いますよ。
――不妊予防に前のめりになっている20代女性については、どう思われますか?
松村 卵子の老化を加速させないような生活習慣をつける、などの意識は大切だとは思いますが、正直、20代の独身女性までもが「卵子の老化」に頭を悩ましているのは、早いかなと思います。20代で、避妊をせず、タイミングを合わせて性交渉をしても、妊娠する確率は20%程度。5カ月チャレンジして、1回妊娠する確率です。もしそれで2年間妊娠しなかったら、不妊症を疑ってみるのもいいですが、単にタイミングが間違っている場合も少なくありません。ただ、今は30歳をすぎて妊娠を考える人が多いから、2年といわず1年でできなかったら、病院に来てくださいねとは言っています。
不妊症に怯えすぎる必要はないですが、自分の体に興味を持つことは、とてもいいことだと思います。「仕事が忙しくて検診に行く時間がない」「基礎体温なんかつけている暇はない」「むしろ生理がなくて楽」という人もいますからね。そのつけはあとあとになって回ってくることを、知っておいてほしいです。また、不規則な生活を送る人には、生活習慣をあらためることから始めてほしいですが、なかなか難しいことだと思います。その日のうちに寝る、休みの日に寝溜めしない、朝はちょっとでも食べ物を口にするとか。今の世の中は、ホルモンバランスが崩れやすいライフスタイルが普通になっている、女性史史上初めての異常事態ですからね。なので、完璧じゃなくていいから「できることからやる」を心がけてもらえればと思います。