「不妊は母の遺伝」「高熱で無精子症に」氾濫する不妊症のうわさの真偽とは?
――遺伝云々より、やはり自身の生理の状況を冷静に見た方がいいということですよね。生理不順や不正出血などが不妊症につながるとは思うのですが、毎月生理がちゃんときていれば、ひとまず安心してもよいのでしょうか?
松村 規則的に生理が来ていても、実は排卵していなかったということはあります。それを、無排卵周期症といいます。その場合、出血量が少ないことが多いのですが、当人が「普通」と思い込んでいたら、気づかないわけだから。無排卵周期症を見極めるには、毎日基礎体温を測るしかありません。基礎体温が高温期と低温期の2相になっておらず、1相性になっている場合が、無排卵周期症となります。
今、ちゃんと排卵して、生理がきている人も、ストレスや極端なダイエットでホルモンバランスが崩れたら、生理が止まってしまうことがあるということを頭に置いておいてほしいですね。それが長期間続けば、当然不妊症になりますから。
――最近、「35歳から妊娠率が下がる」とよく聞きますが、生活習慣などを改善することで、妊娠率低下を食い止めることはできるでしょうか?
松村 卵子の老化は37~38歳ぐらいから急激に進むので、そのスピードを早くするのか、遅くするのかは、確かにライフスタイルが関わってきます。ただ、老化するというのは、基本的にどの女性も一緒です。日本人女性の平均寿命は80歳以上に延びたけれど、卵巣の寿命は50歳で変わらないんです。
――卵子の老化を防ぐために、卵子を凍結保存するのもありでしょうか?
松村 今、卵子の凍結保存で妊娠出産を先延ばしにすることが注目を集めていて、1,000年保ちますなんて説もあるようだけど、私は危険だと思っています。若い頃の卵子を使っても、母体の老化は進んでいますからね。胎児にとっての命綱といわれる胎盤が老化すると、低出生体重児などのリスクが上がりますし、母体にも、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)などのリスクが上がります。
――不妊症と診断される前に、自分が妊娠できる体かどうかを検査できますか?
松村 妊娠できる状態かどうかは、正確にはわかりません。ただ、エコーで卵子を包む袋である卵胞が育っているか、排卵を起こしているかなどは、ある程度わかります。しかし、不妊の原因には、卵管が閉塞していたり、まれながら抗精子抗体といった、精子をやっつけてしまう抗体がおりものに含まれている場合もあります。通常、不妊の疑いがない段階でこれらの検査まではしません。不妊症は、総合的に見極めるものだから、1つの検査でどうのこうの言えるものじゃないんですね。不妊の疑いがある場合は、段階を踏んで、血液検査をしたり、子宮卵管造影で子宮や卵管の様子を見たり、顕微鏡で精子と卵子を観察し、受精する力があるかどうかを判断したりします。
結婚前なら、まずは「ブライダルチェック」を受けるといいのでは? 病院によってメニューは違いますが、卵管障害を引き起こすクラミジアに感染していないか、子宮内膜症ではないかなど、一般的な検査は入っているので。