小島慶子の「コミュニケーション術」から読み取る、「女に嫌われる女」像
――タレント本。それは教祖というべきタレントと信者(=ファン)をつなぐ“経典”。その中にはどんな教えが書かれ、ファンは何に心酔していくのか。そこから、現代の縮図が見えてくる……。
会話上手で上司や先輩に可愛がられ、ひっきりなしに女子会をし、SNS上での信奉者も多い――。現代、このような生活を送る女性は、コミュニケーション上手の「成功者」とされ、羨望を集めている。この手の「量こそ全て」のコミュニケーション論に、真っ向から意義を唱えるのが、元TBSの女子アナ、コジケイこと小島慶子である。
コミュニケーションとは何か、良いコミュニケーションを図るためには何が大切なのかについてまとめた『失敗礼賛』(KKベストセラーズ)は、自虐、毒舌、噛みつきという正統派女子アナが決してしない奇襲攻撃で異例の遅咲きを果たしたコジケイらしく、 世間の常識と反対の逆説的な見出しが並ぶ。
コミュニケーションにおける「失敗」は成功の始まり、とコジケイは解説する。
本書にはその「失敗」エピソードが収録されている。かつてコジケイは某テレビ番組で、自らの発言が原因となり、男性ゲストを怒らせ、番組の撮影を中断させたことがあるという。食事をしながらの撮影の最中、コジケイの発言にゲストが立腹。「やめた」と離席した。それでもカメラは回り続け、スタッフが謝罪に行っている間、コジケイは料理を食べ続けていた。コジケイは、「ゲストを怒らせることになった発言を、正確には覚えていない」と書いているが、実は「うるさい」と発言していた。
世間は「小島慶子が失敗した」と騒いだが、コジケイの認識は違う。コジケイいわく、高圧的な態度に出る人にはビクビクしないで、礼儀を尽くす。これが相手の心を開くコツだそうで、コジケイの起こしたこの「騒動」の結果、番組はとても良い出来になったと総括した。ゲストに向かって「うるさい」と発言するのは、一般的には非礼にあたるが、コジケイ理論では「礼を尽くした」ものであるらしい。スタッフがゲストに謝りに行っている間、料理をぱくついていたのも、これまた料理を作ってくれた板前さんへの「礼」であるなど、常人とは違ったセンスを披露する。
ほかにも、番組関係者の男性から打ち上げに誘われ、「マネージャーと伺います」と言ったところ、相手を激怒させたことを挙げ(相手は、番組の責任者とコジケイの3人での食事を意味していた)、「怒るということは、私と人間関係を作ろうとしている」「私にアドバイスをしてあげたい親切心」とポジティブに受け止めている。