サイゾーウーマンカルチャーインタビュー遠野なぎこ「母を愛してるけど許さない」 カルチャー 『一度も愛してくれなかった母へ、一度も愛せなかった男たちへ』著者インタビュー 「愛しているけど許さない」遠野なぎこが絶望の果てに見いだした、実母との距離 2013/07/31 11:45 インタビュー遠野なぎこ 母娘関係を俯瞰して見られるようになったという遠野なぎこさん 養父との入浴を強要され、母の不倫相手の男性器を写した写真を見させられ、「食べて吐く」ことを教えられて摂食障害へ――。これは女優・遠野なぎこさんが自伝的小説『一度も愛してくれなかった母へ、一度も愛せなかった男たちへ』(ブックマン社)で明らかにした、実母との壮絶な過去だ。肉体的な暴力はもちろん、言葉の暴力によって自己を否定され、リストカットや不特定多数の男性との関係など「自傷行為」を繰り返した遠野さんが、いかに母からの“呪縛”と向き合い、解いたのか。本人に話を聞いた。 ――本書には、お母様との関係について「彼女のお腹に私という命が宿ったときから始まっていたとしか思えない」と書かれていましたが、お母さまに対し、恐怖・違和感を覚えたのはいつからなんですか? 遠野なぎこさん(以下、遠野) 幼稚園の時の写真を見ると、どの写真も私の表情が暗いんですよ。その時には、寂しいという感情は抱いていたんでしょうね。小学校に入っても運動会などの学校行事には来ず、幼なじみの友人のお母さんが寝ている私の母を呼びに行き、お弁当の代わりに“ほか弁”を持ってきたこともありました。幼なじみに聞くと、本に書いてあることよりずっとエグいことが起こっていたみたいなんです。でも私はまったく覚えていないんですよ。よっぽどつらくて、だからこそ忘れようとしてるんでしょうね。 ――お母様にとって、遠野さんはどのような存在だったとお考えですか? 遠野 「分身」ですね、母は私の中に“自分”を見てたんだと思います。母は自分があきらめた女優の夢を、私を通してかなえたかったんですよ。でも、私が頑張るほど、分身じゃないと気付き始める。その現実を見たくないからこそ、母のところまで引きずり降ろすんですよ。私に「食べたものを吐けば太らない」と教えて摂食障害にしたことだって、彼女自身が摂食障害だから引きずり込もうとしているんです。でも子どもの時は、そんなことはわからない。まさか母親がそんなことをするとは考えないですからね。 ――本書を読む限り、不倫のことを嬉々として遠野さんに話すなど、お母様の方が遠野さんに甘えているように感じました。 遠野 私が母親のような気持ちになることの方が多かったですね。母の不倫についても「私が相談に乗ってあげなきゃ、この人は誰に吐き出すの?」という気持ちの方が大きくて。娘として甘えたい気持ちと、甘えさせてあげないと母がいなくなっちゃうかも、という両方の気持ちを持っていました。毎日立場が入れ替わるので、「娘」という立場で安定してたことはないですね。 ――家事をこなし、弟妹の面倒も見て、子役として家計を支えていた遠野さん自身が「母親」の役割を担っていたと、ひしひしと感じます。遠野さん自身は、お母様に何を求めていたんでしょうか? 遠野 それは“絶対的な愛”です。私は今でも、男性を試しちゃうんですよ。ケンカをふっかけてひどいことやっても、「それでも離さないよ」と言ってくれるかどうか、試してしまう。それは多分、かつて母親に求めてたことを、男性を通してやっているんです。一般的には、子どもが反抗期に家の物を壊したり、勝手に出ていったり、好き勝手しても、親は迎えて入れてくれますよね。そういった“絶対的な愛”が大人になっても埋まらないから、やってしまう。それに応えてくれる男性もいるんです。でも、彼は母じゃないから、私が突き離してしまう。どこかで収束されないといけないとは、わかっているんです。結局は、母に囚われていることになるから。 ――お母様は常に男の人に依存するタイプ、「母」よりも「女」としての側面が強いタイプに見受けられます。 遠野 「娘」の立場から言えば、嫌悪する部分もあるけど、自分の中に同じような部分を感じてます。だから、私は子どもを産むことが怖い。私のことをかわいいと言ってくれていた男の人が、「子どもがかわいい」になると……女として見られていないことを寂しいと思うような気がする。母親みたいになりそう、というのが正直な気持ちなんです。 12次のページ Amazon 『一度も愛してくれなかった母へ、一度も愛せなかった男たちへ』 関連記事 出産によって蓋が開いた……小島慶子が語る子育てにおける母親の影響支配したがる母からの自立と自尊心を取り戻す過程を描く、『母がしんどい』古典に育児放棄の記述も! 「昔はよかったのに」という幻想を暴く老後はすぐにやってくる! 親の介護に独り身の老後、それぞれの現実問題「いじめの原因でもあり、アイデンティティーでもあった」細山貴嶺くんが語る、子役の光と陰