サイゾーウーマンカルチャーインタビュー遠野なぎこ「母を愛してるけど許さない」 カルチャー 『一度も愛してくれなかった母へ、一度も愛せなかった男たちへ』著者インタビュー 「愛しているけど許さない」遠野なぎこが絶望の果てに見いだした、実母との距離 2013/07/31 11:45 インタビュー遠野なぎこ ――そうやって長年苦しんだお母様との関係ですが、遠野さんは6月から始めたブログの中で、「33年間生きてきて初めて認めます。…私は母を愛してます」と書かれていました。もちろん決着がついたわけではないですが、長年の苦しみに一区切りついたという印象も受けました。 遠野 母を愛していることを認めてから楽になったし、逆に母に対して何も感じなくなりましたね。いままでは自分の心が複雑に絡まり合っていたし、そのこと自体にも気付かなかったのですが、ブログを始めて心を分解できるようなったんです。そうしたら、ずいぶん気持ちが楽になって、母を愛していることを認められるようになった。 ――認めたから楽になったのでしょうか? 遠野 楽になったから、認められたのかな。ブログを始める前に、本を出版し、テレビで母との関係を告白したことによって、どんどん毒が抜けたんです。そうしたら、母というより、自分の気持ちと向き合えるようになった。いままでは母を憎む気持ちに囚われすぎて、ほかのことが見えていなかったんですよ。 ――愛していることは認めつつも、お母様のことは許さない? 遠野 それは許さない。許していいことじゃないですから。ただ、一生許さないということじゃなくて、摂食障害が完治したら許します。そこまで苦しんでいたことは取り戻せないし、謝ってもらっても許せない。けど病気が治れば、許さない気持ちも捨てられるだろうし、また楽になれると思います。 ――ブログには、遠野さん同様、母娘関係に悩む人からの相談が多いですね。ご自身の体験を通して、どうして母娘関係はここまで複雑な問題になるのだと思われますか? 遠野 子どもは親の所有物じゃない、ということをわかってない人が多いんだと思います。以前に番組で共演した俳優さんが、「うちは子どもを『個』だと思っているから、そこまで口を出したりはしない。その子がやりたいことを手助けをしている」とおっしゃっていて、素晴らしいと思いました。そこをわかってないと、互いに自立できない。親も生きがいと称して、子どもに頼っているんですよ。 ――近年、母親側に問題がある場合は「毒母」という言葉で表現されますが、遠野さんはこの言葉を使っていませんね。 遠野 それは世の中が「親」をまとめて言っている言葉。母のタイプはそれぞれじゃないですか。私にとっての母は、あの母だけなので、その中には入れないです。だから「毒母」という言葉は使わない。一括りにするのは、危険な気がします。本当に苦しんでる人もいれば、それに流されて親のせいにする人もいるかもしれない。自分や親子関係を見つめ直すきっかけとしてはいいけれど、なんでもかんでも言葉のせいにしちゃいけないと思います。 ――母娘/親子問題は家庭という密室で起こる問題なだけに、悩んでいる人がどんどん追いつめられる傾向があります。遠野さんがお母様のとの関係で苦しかった時代を思い出すと、周囲の人にどんなことを望んでいましたか? 遠野 何を言っても絶対に否定しないでくれる「人」と「場所」が欲しかったですね。99%の人に、「親の悪口を言うな」「そうはいっても、子どもを愛さない親はいないんだよ」と言われますからね。同じ経験をした1%の人だけが「わかるよ、大丈夫」と言ってくれるんです。みんな、否定されるから言わなくなる。理解しなくていいから、せめて否定しないでほしい。それは押し付けですから。 ――遠野さんのブログにも「押し付け」というか、「自分の正義を疑わない人」からのメッセージが見受けられます。そういった人への対処法はありますか? 遠野 そうじゃない人を周りに作る! 仕事上でどうしても会わなきゃいけない人がそのタイプだったら、心を硬くしてやり過ごします。「正義に従わなきゃダメだ」と思う自分がダメなんですよ。従わなくていい。でも、「自分の正義を疑わない人」は世の中意外に多いと思っていた方が、ビックリせずに済むと思います。 ――いま家族関係で悩まれている方に、当事者だった遠野さんだから言えることは? 遠野 一言では難しいんですが、必ず誰にでも平等に未来があるので、焦らないでほしいということ。ただでさえ自分を責めるタイプが多いだろうから、立ち止まっていいし、今の自分の考えに自信を持ってほしいですね。一番いけないのは孤独になること。いまそれが必要だと思ったら依存すればいい。私のブログにメッセージを送ってくれる人も、「いっぱいメールしてごめんない」と、それすら謝るんですよ。甘える・図々しくなる訓練をした方がいいんです。人が怖かったらネットからでもいい。よく「そんなのは傷のなめ合い」と言う人もいますが、傷のなめ合いは悪いことでも恥ずかしいことでもない。癒やし合うことだから、ネガティブなことじゃないとわかってほしいですね。 (インタビュー・文=小島かほり) 遠野なぎこ(とおの・なぎこ) 1979年11月22日生まれ。子役から芸能活動をスタートし、99年にはNHK連続テレビ小説『すずらん』のヒロイン役に抜擢される。映画、舞台、テレビなど幅広く活動し、近年はバラエティ番組で奔放な異性関係を語り、注目を集める。『一度も愛してくれなかった母へ、一度も愛せなかった男たちへ』では、異性関係の裏には実母への複雑な思いがあることを告白している。 『一度も愛してくれなかった母へ、一度も愛せなかった男たちへ』(ブックマン社) 母から受けた暴力・暴言、ネグレクト。どんなに望んでも得られなかった母の愛の代わりを求めるかのように、男性と関係を持ち、激しい愛を求め、もがき続けた遠野さんの半生がつづられた自伝的小説。 前のページ12 最終更新:2013/07/31 12:46 Amazon 『一度も愛してくれなかった母へ、一度も愛せなかった男たちへ』 “己の正義”では語りきれない親子もいるんだよ 関連記事 出産によって蓋が開いた……小島慶子が語る子育てにおける母親の影響支配したがる母からの自立と自尊心を取り戻す過程を描く、『母がしんどい』古典に育児放棄の記述も! 「昔はよかったのに」という幻想を暴く老後はすぐにやってくる! 親の介護に独り身の老後、それぞれの現実問題「いじめの原因でもあり、アイデンティティーでもあった」細山貴嶺くんが語る、子役の光と陰 次の記事 恐怖! やっぱり私、ニオってる!? >