【連載】芸能人夫婦百景

「ガサツ妻であり続けること」北陽・虻川美穂子、シェフ夫との離婚回避策を考える

2013/06/23 17:00

■虻川は実は「超良妻」だった?

 そんなくだらない小競り合いがウリのこの夫婦だが、一度だけ「夫婦らしい」ところを見せたことがある。それは、『さんまのスーパーからくりTV』(TBS系)で、虻川夫が大ファンの明石家さんまのために、料理を作ってもてなすという企画の時だった。虻川夫は長年のさんまウォッチングから、料理の好みを分析し、さんまに「通うわ」とまで言わしめる出来の料理を作る。虻川は面白いことを何ひとつ言わずにサポートに徹し、達成感に酔いしれる夫を見て、うれしそうにしていた。

 虻川夫がさんまのファンであり、おいしい料理でもてなしたいと思った気持ちに、偽りはないだろう。だが、目的はそこだけではない。なぜなら、さんまは虻川夫の大好物である「超有名人」だからである。

 お笑いビッグスリーの1人であるさんまに気に入られるということは、芸能界の重鎮のお墨付きを得たということ。つまり、虻川夫が言いたいことは「俺、すげえ!」なのである。

 虻川夫の料理は、さんまから「百点満点で105点」と高い評価を得たが、これらのきっかけを与えたのは、虻川である。世間には、コンサバファッションの料理上手な女性はたくさんいるだろう。しかし、自分をテレビに出してくれて、さんまとのコネクションまで作れる人はそうそういない。そういう意味で、虻川は夫にとって「超良妻」であり、別れて困るのは、実は夫の方なのである。


 虻川夫はバツイチだそうだが、それゆえに「結婚とは何たるか」をよく知る男だと思う。

 虻川夫が、さんまにナポリタンを作った際、定番の具材・ピーマンを入れなかった。川島なお美が「なんで入れないの?」としゃしゃり出ると、虻川夫は「さんまさんは(ピーマンは)いらない」と突っぱねた(実際、さんまはピーマンが嫌いだった)。ピーマンを入れた方が彩りと栄養のバランスはよくなる。しかし、嫌いなら入れない。ここに結婚の極意がある。何が正しいかは問題ではない、相手が望むことを満たすのが結婚なのである。

 虻川は変わってはならない。ガサツ妻としてエピソードをがんがん作って、夫にテレビでそれを暴露させ、有名人と夫を会わせることが、結果的に虻川の幸福感を倍増させる。一部報道では、虻川は「利用されているのかも」と、愛される理由に疑念を持っているそうだが、そんな考えはすぐに捨てるべきである。愛を確認しなくていいのが、結婚の長所なのだから。嘘は女の聡明さの一種である。他人と自分にうまく嘘をつく能力を持つことも、結婚の裏の極意であることを付け加えておく。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2019/05/17 20:27
『おしごと体験バラエティ~北陽の「なりたい!」』
さんまを捌けるより、さんまに会わせる嫁のが偉大