自虐するハイキングウォーキングに、真実を告げた『奇跡のリンゴ』農家
数年前には数々のブームを生んだ、お笑いのネタ番組。お笑いブームが去り、ネタ番組がほとんどなくなったことで、テレビであまり見かけなくなった芸人もけっこういる。
今回ツッコませていただくのは、そんな「見なくなった芸人」の一組、6月8日放送分『メレンゲの気持ち』(日本テレビ系)に出演していたハイキングウォーキング。
ハイキングウォーキングといえば、かつては長い髪を耳のところで折り返し、両手でつかんで叫ぶ「卑弥呼さま~!」という一発ギャグや、コーラを飲み干してゲップをせずに山手線の駅名を全部言うなどの「Mr.スズキックスのスーパーイリュージョンショー」などで、子供たちを中心に大人気だった。鈴木Q太郎のインパクトあるルックスも、わかりやすいギャグも、テレビにピッタリに見えた。
だが、最近は、『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)の不定期企画「とんねるずにハマりにくる喫茶距離感」に登場する程度で、『メレンゲの気持ち』を除くと、あまり見かけない。実際にはショートネタは多くなく、意外ときっちり作り込んだネタ、シュールなネタなどもやるコンビだが、何しろネタ番組がないので、出番がないのだろうか……。
そんなことを感じていたとき、たまたま見たのが『メレンゲの気持ち』の「ビューティフルライフ」のコーナーだった。映画『奇跡のリンゴ』モデルとなったリンゴ農家の木村秋則さんを訪ねた際、松田が木村さんにいきなりこんな質問を投げかけていた。
「木村さんは、僕たちのこと、知ってますか」
木村さんが「はい。テレビでよく見てます」と答えると、さらに松田洋昌は自虐的にこう返す。
「ホントですか? 僕たち最近、あんまりテレビ出てないんですけどねえ(笑)」
それでも、名前を聞かれ、「ハイキングウォーキングさん」ときっちり答える木村さんに、「これもひとつの奇跡です☆」と告げていた。さらにその後、Q太郎の人生相談が始まってしまう。
「どうしたらおしゃべりが上手くなりますか? 僕ら、おしゃべりがあまり上手じゃなくて、芸人みたいに」
『奇跡のリンゴ』とは無関係! だが、実際にハイキングウォーキングをテレビであまり見なくなった理由って、まさにこの質問に集約されているのだろう。どう返すのかと思うと、木村さんは「良寛和尚の言葉で」として、こんなアドバイスをしたのだった。
「真っ直ぐなものは真っ直ぐ使う。曲がったものは曲がったなりに使う。努力はしなくちゃいけないけど、下手なら、下手なのがあなた方にとっては芸になる」
結局、「直さなくていいってことですね」という結論になり、軽い笑いでまとめてはいたが、実は今同じ悩みを抱えているであろう芸人たちにはズシリと響く言葉だと思う。
土曜のお昼のどうでもいい感じの番組で、不意に語られた、真実の重み。単なる映画の宣伝のはずが、いろいろ考えさせられる内容になっていた。
(田幸和歌子)