「CLASSY.」の宝塚特集は、“こなれ感”を押し付けられるアラサーの謀反?
今月の「CLASSY.」、特集は「CLASSY.的『こなれカジュアル』公式ガイドBOOK」。前号の「デニムを変えればオシャレも変わる」に続き、怒涛のカジュアル攻勢です。「CLASSY.」によりますと、「こなれカジュアル」とは「あなたのオシャレに対する固定観念を打ち砕く、洗練された大人に似合う服」ということ。ベージュやグレー、カーキなどオシャレ玄人っぽい色をベースに、素材やデザイン、小物でアクセントをつけるなど「わぁ、オシャレですねぇ」と思わず棒読みになってしまう、実用的ですがレビュー的には面白くもなんともないファッションが多数並んでおります。このようなシンプルファッションの恐ろしいところは、何よりも持って生まれた素材の良し悪しが物を言うということ。筆者の場合、シワ加工の白シャツは「……アイロン貸してあげようか?」と言われそうだし、グレーのパーカーは「コンビニ行くなら、ついでに肉まん買ってきて」と頼まれそうだし、とにかくこなれファッションを「TSUTAYAにDVD返しに行く」ラインより上に見せるのは、全てそのスタイルに依拠するのではないかと。非こなれ民として強く訴えたいです。
<トピックス>
◎CLASSY.的「こなれカジュアル」公式ガイドBOOK
◎薄軽アウター&旬ストールで3月の着回しDiary
◎今年こそ「宝塚」はじめます!
■なんでこの時期に『もちLOVE』?
さて、今回最初に注目したいのは着回しページ。「薄軽アウター&旬ストールで3月の着回しDiary」です。「こなれ感たっぷりの組合せで春を先取り」とありますので、「CLASSY.」的なこなれた日常を覗いてみたいと思います。
銀座にある「CLASSY.出版」に勤める編集女子・里子が今回の主人公。なんでも「4月発売予定のムック『パンLOVE』の担当編集として忙しく過ごす29歳」。「取材を通して知り合った代理店勤務の理志とは3月で付き合って1年」の里子は、「公私とも順調で、現在人生の絶頂期(?)」なんだそう。何となく憧れがちな「銀座」で何となく憧れがちな「編集職」につき、何となくどころかガッツリ希望している「代理店男子」とお付き合い。羨ましいわ~と思っている貴女、よくよく読み進めますと、里子の地獄のような日々に震えますよ。
まず、30日間毎日大量のパン漬け。しかも天然酵母のデッカくてカッタくてスッぱいオシャレなやつばかり。「読者にパンの魅力を伝えるべく、休日返上で徹底取材!」とありますから、相当顎にキているはずです。パンばかり食べ過ぎてカルシウムが足りなくなったのか、ちょっとした行き違いから代理店彼氏とケンカ。そこに追い打ちをかけるように「『取材のお礼に』と神戸のベーカリーから大量のパンが」送りつけられてきます。もちろんそれも完食ですよ。
なんだかんだでいつのまにか仲直りしているのが「着回し○○days」クオリティですが、仲直りのデートもまたパン。さらに2人の仲を深めるために一緒にパンづくり。確実に体重+3kgはイってそうな食生活です。顎はガクガク、口の中はパサパサ、さらに「『パンLOVE』に続いて来月からは『もちLOVE』の担当に。お餅の世界も奥が深そう!」……こ、これはあまりにも幸せそうな里子に対して、イラついたお局が仕掛けた炭水化物トラップに間違いありません。そしてまた、何がこなれファッションなのかまったく頭に入ってきませんでした……。
■アラサーの“所属欲”をくすぐるヅカ
こなれやシンプルの反動なのでしょうか、「今年こそ『宝塚』はじめます!」というページを発見しました。「知れば知るほどハマる憧れの世界」「女性なら誰もがうっとりしてしまうという夢の舞台」と謳われている宝塚。ちょっとハードルの高い宝塚観劇を身近に感じてもらおうという徹底ガイドのようです。
はじめに「宝塚歌劇団はいつからあるんですか?」「どうすれば入れるの?」「男役、娘役ってどう決めるんですか?」「芸名はどうやって決めるの?」など、ファン以外は知っているようで知らない宝塚Q&Aからスタート。元祖キラキラネームと呼ぶべき宝塚の芸名はすべて本人たちが決めているとのことで、芸名のほかに“愛称”があり、ファンは主に愛称で呼ぶようです。「このように芸名と愛称を持っているタカラジェンヌですが、ファンの夢を壊さないために本名は明かしません。年齢や必要以上のプライベートは明かさないことになっていて、これは『すみれコード』と呼ばれて守られています」
さらに「チケットはどうやって取ればいいか」「公演はどこでやっているのか」「どういう構成なのか」「銀橋、大階段、シャンシャンとは」など観劇についての豆知識が続きます。現在の各組男役トップスター一覧、注目の演目、星組トップスター・柚希礼音のインタビューなど、かなりしっかり宝塚特集。結婚前のアラサー世代を対象にしている「CLASSY.」で、どうして今宝塚なのか……この年代特有の“何かにハマりたい”“何かのファンになりたい”という願望が、うっすらと垣間見えるようです。
アラサー世代は“所属したい欲”が最も強く表れる年齢。専業主婦として“家庭”に所属したいと思うことと同じライン上に、“○○ファン”への所属欲があるような気がしてなりません。それは仕事に余裕が出てきたことの証しでもあり、うっすら見えてきた将来への倦怠でもあり。「皆さん忙しい中で、日ごろの疲れがマッサージでもとれないときもあると思います。そんなときは宝塚から恋のときめきや、ショーのパワフルさ、タカラジェンヌ全員の頑張りを体感して、心を癒していただけたら嬉しいです」という柚希さん(超絶美形)の一言に心をグッと掴まれました。現実なんて、寝て起きて食べてウンコしてで十分です!!
他にも、小泉里子、ゴマブッ子、佐伯チズ、小島慶子らに「キレイな年の重ね方」を聞く「“年相応の女”じゃダメですか?」や、「一目置かれる『憧れの先輩』チェックリスト」など、加齢に揺れる女心を扱った企画が多く見られた今号。ファッションも生き方も“こなれ感=じょうずさ”を求められる「CLASSY.」世代。パ~ッとヅカに走りたくなるのはあながち間違いではないのかもしれません。
(西澤千央)