[連載]ハリウッド版「あの人は今!?」

『ER』の伝説的ヒールから、テレビドラマの監督に出世したポール・マクレーン

2013/03/21 16:00

 若い頃は繊細な役を演じていたポールですが、年を重ね、髪の毛が薄くなるなど外見の変化に合わせ、演じる役を変えていきました。『ロボコップ』(1987)では悪役を演じ、『Xファイル』では全身がガン細胞に侵されるという遺伝子疾患の役としてゲスト出演し、視聴者を震撼させました。実は『ER』にも1話限りのゲスト出演でしたが、脚本家たちがポールの演じるロマノを見て、「(小さいのにパンチのある)タスマニアデビルみたいだ。すべてを揺さぶる、そんな力が彼にはある」と感激。1997~2003年にレギュラーとして出演することになったのです。

 『ER』で一躍知名度が上がっても、『フェーム』で最初のブレイクを経験しているだけに至って冷静。彼はジュエリー・デザイナーのダナと98年に結婚しており、00年には長男が誕生。オムツ替えにお風呂など、なんでもこなす超イクメンであるため、1分でも早く帰宅したくて撮影現場でもそわそわしていたそうです。

 『ER』のロマノは、ヘリコプターのテール・ロータに左手を吹っ飛ばされて大ケガを負い、精神的に立ち直ったところで、墜落したヘリコプターの下敷きとなり死ぬという、この上なく悲惨な最期を迎えました。テレビドラマで壮絶な死に方をする役を演じる役者は、プロデューサーや脚本家から嫌われているからという定説がありますが、ポールに限ってはその逆。ロマノの最期も、いつまでも語り継がれる伝説のヒール役のために用意された、インパクトの強い設定だったのです。

 キャストや制作スタッフたちからも信頼されていたポールは、『ER』で監督デビューする機会を与えられ、9話も監督。その監督ぶりが名プロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーの目に留まり、『FBI失踪者を追え』も監督した。『ザ・ホワイトハウス』『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』『Dr.HOUSE』『ライ・トゥ・ミー 嘘は真実を語る』『CSI:科学捜査班』など、数多くの人気テレビドラマの監督を務めるようになり、今ではテレビ界の名監督としてひっぱりだこ。2010年にジェリーが手がけた医療ドラマ『Miami Medical』の監督を務めた時には、取材に来た記者に向かって、「このドラマにはドクター・ヘリのシーンがあるんだよ。かなり離れていたから大丈夫だったけどね」とジョークを飛ばし、笑わせていました。

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