[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」2月22日号

モラハラされた妻の欲望は娘へ……「婦人公論」西川史子母の闇

2013/02/15 22:00
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「婦人公論」2月22日号(中央公論新
社)

 「婦人公論」(中央公論新社)今号の特集は、「夫を捨てたい 妻たちの本音」です。「婦人公論」名物“妻(オンナ)たちのだんじり祭り”ですよ! 冒頭の読者アンケートにて、妻たちの7割が「夫に愛情なんてありません」。仮面夫婦期間は平均で12年。その横には「仮面夫婦で干支が一周」の文字が。たとえにも長年このネタを扱ってきた年季を感じさせますね。今号は井上荒野VS岡野あつこによる「夫婦の賞味期限とは?」や川崎麻世の別れぬ理由、片山さつきに松平健、西川史子母の子育てインタビューなどテンコ盛りですので、早速中身を見てみましょう。

<トピックス>
◎夫を捨てたい 妻たちの本音
◎仮面の下に見え隠れする“情”までは捨てられぬ女ゴコロ
◎娘・西川史子に教えた「人生、大切なのは金とコネ」

■仮面夫婦にも王道があるのか!

 何からご紹介しようかウズウズしちゃう今号ですが、やはりここは読者による本音アンケートから。「夫のココがイヤ!」の1位は「暴言を吐く」、2位は「偉そう」、3位は「金銭感覚」。「『夫を捨てたい』瞬間は?」にも「男尊女卑を思想ではなく、社会の決まりごとだと思っていること」「『女は金を生まない』『悔しかったらワシより稼いでこい』『誰のために働いて食わしてやってるんや』など、無収入に対するモラハラ発言の数々」などが。「婦人公論」世代(アンケート回答者平均年齢は53.9歳)においては、若い世代の悩みの種である“家事を手伝わないこと”よりも、夫によるモラハラ被害に苦しんでいる人が多いようです。

 「手作りのジュースに猫のフンをいれたことがある」「床に落ちたものを平気で出す。さらに、夫がそれを食べる顔をじっと見ている」などの憂さ晴らしを日常的にしちゃうくらい疲弊した関係なのに、どうして妻たちは離婚をしないのか。その理由としては「経済的問題」が最も大きく、その後に「子どもには父親が必要」「離婚は面倒だから」が続きます。このアンケート結果について対談しているのが、作家の井上荒野VS離婚カウンセラー岡野あつこ。「仮面の下に見え隠れする“情”までは捨てられぬ女ゴコロ」です。

 愛情がないのに、どうして離婚しないのか。2人は「(経済問題は)財産分与や年金分割で、ある程度はクリアできる問題のはず。回答者の平均年齢が54歳だから、まだ離婚に抵抗のある世代なのかもしれません」(岡野)、「結婚している状態が一種のステータスとして重要な世代なのかも」(井上)と分析しています。離婚はせずにあえて“仮面夫婦”でいるのは“愛”が“情”に変わったからであり、「仮面夫婦というけれど、これこそが“夫婦”そのもの、なのでは」(井上)と指摘。さらに“正しい仮面夫婦の姿”にトークが進みます。岡野曰く「『とことん無視』『洗濯は別洗い』『夫の年金を使いつくしてやる』というのは(仮面夫婦として)邪道」とのこと。さらに「セックスは絶対にしてやらぬ」という回答に対し、「セックスも夫婦の義務のひとつで、それを含めて婚姻生活だから、これもルール違反」。セックスのある仮面夫婦……それはもう仮面ではないのでは? と思いますが「仮面夫婦の王道とは、お互いに意地悪もせず、その状態を納得し合っていること」なのだそうです。加えて岡野が提案するのは“おしゃれな仮面夫婦”。


「仮面夫婦であることに自信を持って、前向きに堂々と仮面夫婦をやる」
「親や子どもの期待に応え、『みんなのために離婚しないのよ』と胸を張るのもいい。そのくらい割り切った方が、お互いに『こうすべき』『こうあってほしい』というプレッシャーから解放されて楽なのでは。キレイさっぱり捨てなさいとか、捨てられないなら我慢しなさいの二者択一じゃなくて、現状をいかに納得できるものにするか。その努力をするほうが、苦しまなくてすみます」

 素顔で生きるよりも、仮面でいる方が楽だし、何より傷つかなくて済む。それは1つの生きる知恵なのでしょうか。ただ友人知人、あるいは親から「私たち仮面夫婦だから!」と元気に宣言されても……リアクションに困りますよ。仮面プレイは何卒家庭内のみで、“玄関開けたら2分で仮面”でお願いしたいものです。

■“入れ物”としての西川史子

 先ほどの読者アンケートでも多かった、“働いていないことを夫からなじられる”というモラハラ。その矛先の1つの例が「娘・西川史子に教えた『人生、大切なのは金とコネ』」です。セレブ女医でおなじみ西川先生の母、西川令子さんの「ユニークな英才教育」とやらを見てみたいと思います。

 24歳で医師の夫と結婚した令子さん。自分で働いて稼いだ経験はほとんどなく、「そのために、ことあるごとに『おまえは稼いだことがないだろう』と夫にバカにされ、内心、悔しかったです(笑)」。(笑)はついておりますが、たぶんシャレにならないほどムカついていたのでしょう。娘にだけは同じ思いをさせまいと、幼い西川先生を医者にさせるためのモーレツ育児を始めます。その内容がスゴイ。小学校にあがると同時に、主要4科目すべてに家庭教師をつけます。「かけっこが遅くても、絵が描けなくてもいい。だけど、勉強ができないことはとても恥ずかしいことなのよ」と繰り返し教えたという令子さん。体育の授業は手を抜け、図工や家庭科の宿題はプロに依頼、きわめつきは「100点取ったら、1万円あげる」という仰天ルール。想定外に100点を取ってきて「持ち合わせがないわ」と言う令子さんに、「約束したでしょ!」と怒る西川先生。どっからどう見ても家庭内カツアゲですが、「親の言う通りに勉強してくれるなら、お小遣いは好きに使わせてあげようと思っていました」とサラリと言ってのけます。


 「世の中、金とコネがあれば万事OK」という令子さんの教えは確かに賛否両論ありそうですが、要するにそれが可能な家庭環境・経済環境だということ。一般人がおいそれと参考にできるものではありませんしね。ただ家庭内カツアゲより衝撃的だったのは、「娘を八重歯にするために、乳歯が抜けて永久歯が顔を出してから毎日口を開かせ、その歯を上に上にと押し上げた」というエピソード。なんでも令子さんが子どもの頃、近所に八重歯のかわいい子がいたからということですが、自分の満たされない欲求を子どもにブツけた感があまりにもリアル。令子さんをそこまで追い詰めていたものとは何だったのでしょうか。

 西川母の育児話にはちょいちょい「私自身も、学生時代に先生に可愛がられてずいぶん得をしました」とか「以前は夫が7時に起きる前に、お化粧と朝食の用意を済ませていました」とか、自分自身を褒めたたえる記述が出てきます。私はこんなに愛される存在で、こんなに良い妻・良い母なのに、どうして私のことを認めてくれないの……? そんな思いが行間から滴り落ちていて、なんとも重たい気持ちに。

 メディアでは“高飛車キャラ”を演じ、家では“ワガママで勝気な娘”を演じる。西川先生を見ていると“所詮自分は入れ物だ”というような諦念を感じるのです。母親の欲望の入れ物。「母親としての今の願いは、とにかく結婚生活を平穏無事に送ってほしいということ」という令子さんの言葉の裏に、深い深い呪詛を感じて震えました。
(西澤千央)

最終更新:2013/02/15 22:00
「婦人公論」
「西川史子の好感度上がるための陰謀論」が出てきそう