「25ans」の「少女マンガ顔メイク」がくだらなくて、楽しい!
今月号の「25ans」、まずは付録に注目です。今やポーチやらトートバッグやらタイツやら、いらないものまで付いてくる女性誌。そこにあって、付録といえども「らしさ」を忘れないのが、「25ans」なんです。2012年12月号ではケイト・スペードのサングラスケースが、そして今月号はマイケル・コースのパスポートケースが付いています。確かに「25ans」読者は海外に行って、頭にサングラス乗せて、肩で風切っちゃうイメージですよね。完全にRIKACOじゃねえか、というツッコミはナシでお願いしますよ。でも50万円以上かけて地中海バカンスに行こうが、H.I.S.のお年玉企画の恩恵を受けてイチキュッパで韓国に行こうが、同じ「海外旅行」ですから。not RIKACOな方もガンガン使い倒しましょ!
<トピック>
◎春のシーン別 エレ女のレストランスタイル
◎華麗なる社交界デビュタントStory
◎ときめかなくてはキレイになれない! ロマンチック美容
■そもそも「春ブルゾン」ってなんぞ?
まずはファッションページの「春のシーン別 エレ女のレストランスタイル」を見てみましょう。その名の通り、「ビジネスランチ」には「Iラインワンピ&スプリングコート」、「家族会」には「上品セットアップ&フレアワンピ」、「ママ友とランチ」には「前開きトップス&カシュクールワンピ」などシーン別コーディネートを提案しているのですが、ビックリしたのは「ペット連れランチ」には「春ブルゾン」という項目。「ペット連れ」にコーディネートが必要なんですか?? しかも「25ans」読者のほとんどは、小脇に抱えられる小型犬が好きなんでしょ?? それなのに、ブルゾンを着るなんて正気ですか?? お犬さまの足は汚いだろうし、糞的なものもあるでしょうし、下手すりゃ汚れちゃうだろうに、正気ですか?? 実際に誌面のブルゾンを見たら、お値段はなんと21万えぇぇぇぇん! 正気ですか??
「25ans」には「エレ女’s 社交レポート」という連載があるのですが、今月号のテーマは奇しくも「華やかドッグ社交」。元女性誌モデル、元ヴェルファーレ代表取締役、元国際CAという3人が、お犬さまを連れてお茶しながらガールズトークをしているという社交スタイルを紹介しているのですが……おい、誰もブルゾンなんて着ちゃいねえぞ! 「まだ春じゃないしね……」と納得しようとしたんですが、半袖ワンピース1枚でほほ笑む3人を見る限り、今の季節でもなさそう。もう「25ans」、筋が通ってなさすぎ・季節感なさすぎだよ!
■実用性だけが楽しさじゃない!
一方で今月号の「25ans」は、優雅で楽しい“ムダ”がふんだんに詰まっています。1つは、「華麗なる社交界デビュタントStory」です。日本人にはなじみのない、というかデヴィ夫人しか知らないんじゃないかと思ってしまうほど我々には程遠い「社交界」という世界。「社交界デビュー」という場になるデビュタント、2012年は日本人姉妹2人をはじめ、アジアのご令嬢が参加したそう。ユニクロのフリースを着ながら原稿を書いている身には1ミリも関係ないはずですが、誌面を見ているとすごく楽しいんですよ。豪華絢爛なホテルの装飾や、趣向が凝らされたドレスなどを見ていると、ユニクロのフリースに包まれているこの身が、非日常に飛んでいきます。この非日常感というのが、本来の雑誌の使命の1つ。今は合理化・効率化で夢を見させてくれる雑誌がなく、“ムダだけど楽しい”誌面が少なくなっています。ここはぜひ「25ans」に踏ん張ってほしいところ。
もう1つ、“全力でバカやってる”で好感が持てるのは、「ときめかなくてはキレイになれない! ロマンチック美容」です。この企画のリードが素晴らしいので、抜粋し紹介します。
「ここ10年ほど、美容の進化はすさまじいものが。どんどんディープにどんどん幅広く…。一方で美容が義務や競争になっていたとしたらそれは寂しいこと。やはりときめいてこその美容だし、ときめくための美容だと25ansは思うのです(略)」
たしかに、今は美容を純粋に楽しむ人は少ない。「シミを防ぐためにターンオーバーを促す美容液を」「中身の処方さえしっかりしてれば、パッケージなんかどうでもいい」美容に飲みこまれると、そんな視野狭窄になってしまいます。でも現代においては、化粧は女性だけのもので、女性が自分を楽しむもの。そもそも美容オタクは「美的」(小学館)や「VoCE」(講談社)を読んでるわけですし、若さのための美容であれば「美ST」(光文社)が美魔女ってますから、任せればいい。「25ans」という、経済的に余裕があり遊び心を持つ淑女が読む雑誌で「ロマンチック美容」は相性抜群。
その中でも特に全力でくだらないのが、「『少女マンガ顔』をメイクで実現」というページ。現代っ子が読むような少女マンガではなく、『エースをねらえ!』や『ベルサイユのばら』の頃の、「ヒロインの瞳の中に、何個南十字星がありますか?」系の「少女マンガ」顔を目指すそうです。実際にどうやるかいうと、平行四辺形の目を作るためにあり得ないアイシャドウの配分をしたり、アイラインは上下ともに目の真ん中にしか入れなかったり、口角もアイシャドウでラインを描いたりと、全然実用的じゃない。それでも確かに、「1回ぐらいは、部屋でこっそり少女マンガ顔になりたいかも……」と思わせるパワーに感服しました。これこそムダの極み!
「春のシーン別 エレ女のレストランスタイル」にも“ママ友とランチ”という設定がありましたが、今月号には「エレママ式『痩せコツ』」などの企画もあり、「25ans」も「ママ」を読者ターゲットに入れています。でも「エレママ式『痩せコツ』」はカーヴィーダンスを入れたり、妙に現実的でイマイチ。“ママ”になると、夢ばかり見られないですし、それこそ効率的で合理的なものを重宝する傾向になります。ほかのママ雑誌を見るとその路線を踏襲していますしね。でも、「25ans」には誰も実用性なんか求めてない! ママになってもお金の力で無駄を楽しんでほしいし、夢を与えてほしいんです。貧乏人のひがみ根性で「25ans」を読むような人間は筆者以外にはいませんから、どうぞ札束握りしめて「ママ」という読者層と楽しいムダを両立してください!
(小島かほり)