サイゾーウーマンカルチャー女性誌レビュー「HERS」が黒恐怖症に陥った! カルチャー [女性誌速攻レビュー]「HERS」11月号 怖い、地味、保護者会風、詫びに行く人に見える、“黒”恐怖症に陥った「HERS」 2012/10/25 16:00 女性誌速攻レビューHERS 「HERS」11月号/光文社 突然ですが、中山美穂主演映画『新しい靴を買わなくちゃ』はご覧になられたでしょうか。バブル時代に青春を送った女性たちの「キュートな私はどこにいても歓迎されるはず」という自信と、「そうは言っても実は年齢を重ねた自分に不安も感じている」という二項対立に揺れる乙女心が沁みる映画でしたが、今月の「HERS」にも同じような構図が見えてしまいました。 <トピック> ◎ブリュッセルには「女でよかった(はーと)」が詰まってる ◎「しなやかな黒」なら負けない! ◎「細すぎないスリム」でデニムスタイルを更新しよう! ■どこへ行っても「女でよかった」 今月は、萬田久子さんのニューヨーク企画、賀来千香子さんのフィレンチェ企画、そして『ブリュッセルには「女でよかった(はーと)」が詰まってる』という旅の三本立て特集がありました。 ブリュッセルの特集では、モデルさんがレストランに入って美食に舌鼓を打っては「女でよかった」、街並みを歩いては「女でよかった」、ショッピングしては「女でよかった」と何をしても女であることを再確認し、ポジティブに受け止めまくっています。 ブリュッセルは「タンタン」発祥の地だそうで、町のいたるところにキュートな漫画の壁画があるのだそう。そこで、天使のような女の子を見つけて、モデルの女性が一緒に写真を撮っているのですが、そこでもやはり「異国のキュートな私」の演出が見てとれました。旅の終わりには「お気に入りとの出会いで、必ずスーツケースがいっぱいに」だそうです。 冒頭で話題にしましたが、映画の中のミポリンと同じで、「世界中、どこに言っても、キュートな私は歓迎されるはず!」というバブル女性特有の愛されオーラがビンビン伝わってきます。この自信は、どこからくるのか不思議でなりませんが、やっぱり若い時代に培ったイケイケな空気は、いくつになっても彼女たちの血や肉になって染みついているのかもしれませんね。 ■黒が怖い! 先ほど、「そうは言っても実は歳をおいていく自分に不安も感じている」と書きましたが、第2特集の『「しなやかな黒」なら負けない!』には、そんなバブル世代の女たちの不安が入り混じっていました。特殊の冒頭にも「かつては便利だった色も、いまや年齢をあぶりだす危険色だから」という、ちょっとおっかなびっくりなコピーが躍っています。 スタイリストの栗原登志恵さんと、「エストネーション」というショップを立ち上げたイメージングディレクターの高橋みどりさんの対談では、高橋さんが「エストネーションの立ち上げのときですが、私たちがとてもこだわったことがあります。当時の働く女性たちが、実力をつけてキャリアを積むとぶつかる壁に“怖そうに見られる自分がイヤ”ということがあることがわかったんですね」と語っています。そして、まさに黒は怖さを演出する色なので、マイルドさやフェミニンさを取り入れることに気を配ったとか。 世界の中でも女性の管理職の採用が少ないと言われる日本。「女性が偉くなる」という機会が少ないだけに、偉くなると敬遠されるし、何より「怖い」というイメージがついたら致命的と思っている人も多いでしょう。また、「怖い」と思われる恐怖から逃れたいために、同じ女性同士でも「怖い」女性を忌み嫌ったりすることすらあります。「怖くみられたくない」という願いは、現代の日本女性に共通する悩みかもしれません。そしてもちろん、「HERS」世代も、かなりこのことを気にしているんですね。 特集では、「HERS世代がこう黒を着ると危険」という実例がいっぱい。怖い上司風に見えないように、地味な人に見えないように、保護者会風にならないように、これからお詫びに行く人みたいに見えないように……と人目を気にした実例がたくさん紹介されていました。 また、前出の高橋さんは「私たちHERS世代は、バブルを経験していることもあって新しいトレンドをバンバン追う楽しさに、とても積極的だけど」と、どこかバブルに負い目を感じているような発言も。これを読んで、現代はイタい人になりたくない、人からつっこまれたくないという願望が本当に強い時代だということが透けてきて、切なくなってきました。ある時にはほがらかで天真爛漫な「HERS」ですら、やっぱり人からイタいと思われるのはつらいものなんですね。 ■イタいこと、怖いことに過敏な「HERS」 と、思いながら誌面を見ていたら今月の「HERS」には、それ以外にも「人からイタいと思われてはいないだろうか」の被害妄想に陥ってるんじゃないの? という言葉が。 例えば、デニムの特集『「細すぎないスリム」でデニムスタイルを更新しよう!』では、デニムの着こなしは当たり前だからこそ、「ちょっとしたことで“おしゃれの老け”が目につきやすいから注意です」とありました。 さらに、先ほど紹介した特集『「しなやかな黒」なら負けない!』に続くメイクページでも、黒のメイクは取り入れ方によって、「怖くなったり、キツくなったり」するという心配から始まり、実践編でも脱「イタい黒」「怖い黒」というキーワードが。確かに筆者も、これまでさんざん「HERS」のことを、バブルでイタいと書いてきましたが、そこまでイタいこと、怖いことを気にしてるなんて……思わず反省を抱かずにはいられませんでした。 (芦沢芳子) 最終更新:2012/10/25 16:00 Amazon 『HERS』 かといって、カラフル全開も怖い 関連記事 「HERS」が到達した“嫌がられても、マドンナルックがしたい”という境地旅行し、消費し、夫も捨てる! 今月も「HERS」読者は天真爛漫腰回りがもたない……ネガティブ起因の「HERS」ファッションページに好感毎号コンサバの扱いに迷う「HERS」、"頭にグラサン"問題はどうする?ズル可愛卒業の「HERS」と、片山さつきハマトラを脱せない読者の温度差が気になる! 次の記事 浅野&里依紗の本当の破局原因とは >