上から目線に弱い「steady.」が、悩み相談の相手に“子役”を召喚!?
「付録ではもう部数は稼げなくなってきた」と言われて久しい女性誌業界ですが、やはり付録の老舗・宝島社だけに、今月の「steady.」の付録も、かなり力が入っています。何がって、バッグinバッグのポケット数が……。外ポケット3つに、内ポケット4つと合計7個のポケットがついている上に、付属のポーチまで! そんな力作すぎる付録を眺めていると、これらの多くが中国の工場で作られていることが、ふと頭をよぎります。反日デモの影響が、女性誌の付録に出ることはないのか、非常に気になってしまう今日この頃です。
<トピック>
◎石原さとみのAtoZ
◎1カ月着回し劇場
◎みんなのお悩み解決診療所
■さとみのポジティブさに食傷気味……
毎号芸能人が多数登場する「steady.」。3カ月前から、「石原さとみのAtoZ」という連載が始まったのですが、このページの「些細な幸せを見つけるのが上手な私」アピールがなかなかの見ものです。
今月は、石原さとみの「C」にまつわる事柄ということで、「child=子ども時代」のお話が。お稽古事でお琴、ピアノ、クラシックバレエ、ダンス、水泳、体操、習字、くもん、学校でトランペット、クラリネット、バレーボール、バスケットボール、硬式テニスと、かなりの習い事をしていたという石原さん。お琴以外はどれも長く続かなかったそうですが、結局、「芸能界に入ってすべてのことが役に立った。やりたいことをさせてくれた母に感謝」と、ポジティブ満開です。
また、「climax」の項目では、小栗旬と共演したドラマ『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系)の話題も。そこには「6月から休みなく撮影しているが、今のところ、毎日笑えている。笑顔皆勤賞です」という文言が! “笑顔皆勤賞”というポジティブワードに、「ひえー、なんかウソくせー」と思ってしまう筆者のような方も多いでしょうが、「steady.」読者は、「わー! 素敵。自分もそんな風に毎日を過ごそう」と思うのでしょうか。「ネガティブは敵」とする風潮が強くなる中、こういうポジティブな表現を好み、ポジティブであらねばならないと思う女の子というのは、想像以上にいるのかもしれません。
■「steady.」で男を奪い合う女同士の争いが!!
さて、毎月楽しみになってきた1カ月コーディネートのページです。今月は「スカート派美優とパンツ派こころ」の同期入社ライバル対決です!
モデルの美優が演じる「美優」は、自身もガーリィで女の子らしい雰囲気ですが、ここでの設定も、イベント会社で営業事務をしている25歳、将来の夢はお嫁さん。愛嬌たっぷりで社内でも狙っている男子が多数存在しているそうです。対して、三枝こころが演じる「こころ」の設定は、美優と同期入社の企画部所属で、大きなイベントを任されるような存在。見た目からサバサバしている感じがぷんぷん漂っていて、恋愛もご無沙汰ぎみのよう。そんな美優とこころが、黒澤先輩なる人物を同時に好きになりかけている……というストーリーが展開されています。
しょっぱなからこの2人は、
こころ「美優キレイになったなー。好きな人でもできたんでしょ」
美優「恋バナになったけど黒澤先輩を好きなことはまだ内緒」
と、あからさまな争いを避けつつも、腹のさぐりあいです。
その後、美優は、こころが先輩とランチに行ったことを知り、「私も誘ってよ」と激怒しつつも、がんばって先輩のために資料をまとめたり、先輩の好みのタイプになるために外見も内面も生まれ変わろうと、涙ぐましい努力を続けます。
一方のこころも、フランクな性格だけに、黒澤先輩から「女友達(美優)にほかの女の子の話をしたら気まずくなってさ」と相談されてしまったり、美優の発言から「お互いに同じ人を好きなんじゃないか」と勘付き、翻弄されっぱなし。
で、ほぼ同時に黒澤先輩に告白しようと決心するところで、この物語は「to be continued……」に。そんな女同士の争いに、「わー、美優とこころ、どっちが選ばれるのーーー!」と身もだえしてしまいましたが、これ、ちゃんと続編があると考えていいのでしょうか?
「ポジティブでみんな一緒!」が大好きな「steady.」読者のこと、こういうライバル対決をどう思うのかも気になるところ。「同じ人を好きになるなんて平和じゃないよ! 仲良くしようよ」と思うのか、はたまた「自分にもこういうことってある。両方がんばって!」と思うのか。もしかしたら、先輩がどっちを選ぶかが明確に描かれなかったのも、編集部の読者への配慮だったのでしょうか!?
■上から目線のお悩み相談はもう古い?
今月は不思議な企画がもうひとつ。“天才子役 本田望結ちゃんが「steady.」読者の悩みに答える”という「みんなのお悩み解決診療所」というページがありました。
質問内容も答えも、単純明快です。「どうしたら男子と気軽に話せるようになりますか」という質問には「自分から相手にいっぱい質問をしておしゃべりすると、だんだんお友達になれる気がします」。また「デートの帰りはいつも寂しくてすぐに大好きな人に会いたくなってしまいます。この気持ち、どうすればいいでしょうか」という質問には「帰り道、こういうことを言ってもらえれば嬉しかったなとか、(略)デートの思い出を振り返るといいんじゃないかなぁ。そうすれば、次のデートがもっと楽しみになるはずです」と、大人以上の回答を連発!
これはドラマ『サマーレスキュー』(TBS系)とのコラボとのことで、単発企画のようですが、連載化、なんなら書籍化すら期待したい企画です。どこまで望結ちゃんの言ったことが、そのまま反映されているのかはわかりませんが、すでにプロとして社会に出ている女優さんの言葉に、子どもらしいシンプルな考え方が加わるという、確かに目新しさは抜群の企画になっていました。
にしても、これまでの女性誌のお悩み相談というのは、酸いも甘いも噛み分けてきた大人の女性が「先生」となるもので、そして読者は怒られる立場というのが定番だったような気がします。「steady.」も、もともとはマツコ・デラックスの連載があったくらい(マツコは怒る役割ばかり求められるのはつらいとテレビで言っていましたが)。ところが、この想像の斜め上を行く、子どもによる下から目線のお悩み相談。センシティブでキツいな言葉に弱そうな「steady.」読者には、非常にしっくりきていた気がします。
今月の「steady.」を読んで、とにかく刺激や強いキーワードに弱そうな読者の姿が思い浮かんできました。「笑顔皆勤賞」もいいけど、そこまでみんなポジティブに生きてるのでしょうか? ネガティブな自分も受け入れないと、疲れちゃうよ! と頼まれてもいないのにアドバイスをしたくなってしまいました。
(芦沢芳子)