今井舞の「週刊ヒトコト斬り」

寝ず食わずで27時間を駆け抜けたタモリが、ほぼ仏と化して見えた

2012/07/27 21:00
tamori.jpg
『タモリ』/ アルファレコード

――毒舌コラムニスト・今井舞が、話題のアノ人物やアノニュースをズバッとヒトコトで斬り捨てる!

◎『27時間テレビ』お疲れ様!
 いやあ、盛大な生前葬であった。今年の『FNS27時間テレビ』(フジテレビ系)。もうこれでいつでも、タモリは『笑っていいとも!』(フジテレビ系)をやめられるな。

 過去の映像がほとんど出回ることのなかったタモリの、往年のあんな姿、こんな姿が拝めて、結構本気でありがたかった。この、例年にない「局をまたいでアーカイブ」な感じ。改めて強くなるリスペクト。これを生前葬と言わずしてなんと言おう。

 そして本当に寝なかったタモリ。逆にいえば、例年はどんだけ寝てたんだ、って話である。タモリが寝ないもんだから、共演者もみんな寝ずの頑張りで、ロレツが回ってなかったり(中居正広)、ケアレスミスしてたり(ベッキー)、ピアスが片方落ちてたり(ローラ)と、全員リアルにヨレヨレしてた。

 最後、視聴者と共演者にだけでなく、「スタッフの皆さん、ありがとうございます」と自然にスッと口から出てくるタモリ。そりゃ草彅剛も頑張るわな。この後で、どんなに大音量でサライ流されても、北斗晶じゃ誰もひとっつも泣けないんじゃないか。どうすんだ、今年の『24時間テレビ』(日本テレビ系)。別に心配はしてないが。

◎キムタクという病をこじらせて
 タモリに草彅に、いつ話を振られても一定の結果を出していたローラなど、27時間中で株を上げた人物がいる一方、ダダ下がりしていた人物も。さんまは、笑福亭鶴瓶とタモリという、「話の腰を折る」「話にノラない」「オチを求めない」がモットーの、最もやりにくい相手に苦戦し、挙句の果てに「話面白くしなきゃいけないっていうアンタのそれ、病気だよ」と一刀両断されていた。タモリの番組キャラクターの似顔絵描いたマンガ家からも、「さんまさんって、いつも見られたもんじゃないんですけど、ああいう人たちと絡んだ時だけは面白かった」とバッサー。そして鳴り物入りのBIG3は、たけしにとにかく覇気がなく、3人だけではコーナーが成り立たないと判断が下されたのか、すぐに中居や鶴瓶が投入された。ああ……。


 そしてキムタク(木村拓哉)。SMAPのモノマネするそっくりタレントにマジでキレちゃう5秒前。ほかのメンバーは、「負けたよ」という感じでモノマネに笑っていて、それが一番ヤケドしない対処法でもあるのだが、彼1人だけが最後まで「はぁ?」「意味わかんないんですけど」という顔してモニターを睨みつけ抵抗。「あんなの出して、(後ろで演奏してる学生の)バンドに失礼だろ!」と本気で抗議してた。でも直後に、ヒヤッとしたスタジオの空気を察して、「でも(稲垣)吾郎のは似てたよなぁ」と続けてたが。這っても黒豆。アンタのが一番似てたよ。

 しかし、生放送でキムタクにそっくりさんを突き付けるなんて、全盛期には考えられない荒技である。メンバーは皆それぞれ「その後」を模索し何かを掴んでいるのに、この人だけホントどーすんだろ。画面に映った顔、ほとんど松崎しげるみたいだったぞ。

◎私、タモリが好きだったんだ
 そして、番組中に断食を貫いていたタモリ。あまりに何も口にしないので、番組中いろんな人に何度もその点について尋ねられ、その都度、「消化ってのはものすごく体力を奪う」「こういう時は、何か食べるとかえってスタミナを消耗する」「本番中は絶対何も食べない」と繰り返していた。

 「食」に関しては一家言あり、でコンセンサスが取れているタモリ。「一日一食」とか、「断食でデトックス」とか、「食べない健康法」が今持てはやされているが、全国ネットでこれだけタモリに「ここぞという時、俺は食わない」って言われたら、かなり勢いに拍車がかかると思うな。来るぞ、大断食ブーム。

 以上、今週は「勝手に27時間テレビスペシャル」でお届けさせていただきました。今気付いたけど、結構タモリが好きなのな私。だからといって、『笑っていいとも!』(フジテレビ系)は見る気しないのが不思議。もうそろそろやめてもいいかなー? いいともー!!


mishuran.jpg

今井舞(いまい・まい)
週刊誌などを中心に活躍するライター。皮肉たっぷりの芸能人・テレビ批評が人気を集めている。著書に『女性タレント・ミシュラン』(情報センター出版局)など。

最終更新:2019/05/22 19:19