サイゾーウーマンカルチャー女性誌レビュー「STORY」読者のファッションが横並び? カルチャー [女性誌速攻レビュー]「STORY」7月号 ファッションで冒険しなくなった世代に受けた、「STORY」の横並びな通販 2012/06/04 21:00 女性誌速攻レビューSTORY 「STORY」2012年7月号(光文社) 今月の大特集は「40代の夏は『ゆる楽ちん』で、もう頑張らない宣言!」です。キャッチもダラっと「暑いし、忙しいし。涼しくて締めつけなくて、でもキレイに見える服がイイ」。かつて「STORY」では、お出かけ服とご近所周り限定のアラホー服(アラウンドホーム)をきっちりと区別していましたが、スウェットやジャージー素材のアラホー服が進化し、もうどこへ出しても恥ずかしくないクオリティーになったとのこと。「タイトなジーンズに私という戦うバディをねじ込む」時代はもう終わったのか……。しかし、この手のタイプは、微妙な丈の長さや組み合わせ方など、着る側の持って生まれたセンスが問われるところが恐ろしい。リードにも「それを着こなせるくらいに、40代がオシャレになったという事実」とありますが、本当のところはどうなんでしょう? <トピックス> ◎40代の夏は「ゆる楽ちん」で、もう頑張らない宣言! ◎夏はこの新顔小物で楽させてもらいます! ◎昔も今も。私たち、「3高ワンピ」LOVE ■もう頑張らないで宣言!が頑張ってる証 先月号で「毎月のお小遣い1万円主婦」向け企画を登場させ、時代の変化を否が応にも感じさせた「STORY」。今月の「ゆる楽ちん」特集は、お金とはまた違う観点で非常に象徴的な企画でした。 「STORY」の分析によりますと、「ゆるアイテムが街着へと格上げされ始めたのは、約3年前」で、ハリウッドセレブ御用達ブランド「ロンハーマン」が日本に上陸したのがきっかけだとか。この頃は「家着からご近所服へ格上げ」企画が特に人気だったそうです。シャレブ(おしゃれセレブ)たちがTシャツやジャージ、チェックのシャツなどカジュアルなスタイルを好んで着ていることから、「ゆる楽ちん逆にオシャレ」現象がスタート。ゆる楽ちん服が、ご近所用からさらにお出かけ用へと昇格したと思われます。 「仕事の打ち合わせ」「ママ友とのランチ」「保護者会」などシチュエーション別のスタイリング、単なる部屋着に見られない着こなしテクなどが紹介されている中、特に興味深かったのが「『夏のFacebook同窓会』でもゆるく涼しく、モテる!」です。学生時代の友人をフェイスブックで発見、久々にみんなで会おうという時こそ、ゆる楽ちん服が大活躍するんですと。 そして「久々の再会時は、ついファッションにも力が入ってしまいがちだけど、こういう時こそ、今年顔の“ゆる楽ちん”服がさりげない女らしさと現役感を演出する……」という一文に注目。「現役感」などというのは、本当に現役の人はまず意識しないことですから、「ほ~ら頑張ってないよ~」というサインとして、ゆる楽ちん服があるんですね。単なる「楽したい欲求」ではありませんでした。例えば「パンプスは気恥ずかしいので、ショーパンにはグラディエーターサンダル」という着こなしも、「パンプス=大人(ババア)」の象徴と考えれば、この選択は「私はまだ現役(ババアじゃない)」アピールなのかと察します。 とにかく「頑張ってる」「気合入っている」ことを見咎められたくないというのが、現在の40代女性の思考。頑張りがバレたら、現役から追放されてしまう……今号のゆる楽ちん特集に、彼女たちのコンプレックスのようなものを感じずにはいられませんでした。 ■「私の格好こそがオシャレ」というバブルが抜けた穴 冒頭で「この手のタイプのスタイルは、微妙な丈や組み合わせ方など、着る側の持って生まれたセンスが問われるところが恐ろしい」と書きましたが、その問題を一挙に解決せんとするのが「STORY」が展開するデジタル通販マガジン「セレSTORY」。毎号ブックインブックとして封入されていて、発売日に完売商品が続出するなど人気上々のよう。女性誌が通販を絡ませるのは決して珍しいことではありませんが、こと「STORY」に関しては媒体の特徴上難しいのでは? と思っていました。 というのも、ファッションにお金と時間をかけることをアイデンティティにしてきた「STORY」読者にとって、通販の持つ「そこそこ」感や「お手軽」感は相いれないものだと信じていました。今回あらためて「セレSTORY」を見ると、それこそ「40代女性が欲しい!」と思うものを形にしたらこうなるんだろうなぁと感心するものばかり。「腕が細く見える袖丈、首がスラリと見える胸開き、お尻が隠れるレングス」の部分レーストップス、「下着が出ない、脇肉出ない、体の当たりも出にくい重ね着風」のマキシワンピなどなど。デザインだけでなく機能性も抜群。 で、わかりました。大特集のゆる楽ちん服や、「STORY」イチ推しの無糖派服、シンプルが故にセンスが問われるこれらのスタイルには、「セレSTORY」で「正解」を提示しているのです。「自分で見つけろ」と突き放しません。今号にあった「『重ね着苦手さん』に贈るおさぼりレイヤード!」でも、同じ感覚を覚えました。カットソーにカシュクールカーディガンを合わせた風、デニムシャツにスウェットを重ねた風、オシャレを追求する人には邪道とも思えるこれらのアイテムをオススメするのが、今の「STORY」なんだと思います。 言い換えれば、「失敗」もなければ「大成功」もない、その代わり「横並び」という安心感があるということかもしれません。編集部が転ばぬ先の杖として差し出す「セレSTORY」は、頑張っている姿をさらしたくないのと同時に、人より目立つことも志向しない現在の「STORY」読者を何より安心させる力がある。先月の「1万円主婦」で明らかになったように、ファッションにかけられるお金はどんどん減り、思い切った冒険ができないということもあるでしょう。しかし、ヤラかして学んでいく過程がファッションの醍醐味だとすれば、もうそれほどまでに着る物に対する深い執着がなくなったとも考えられますよね。あまりファッションに造詣のない筆者が「最近のSTORYは参考になるわ~」と感じるところに、そんなアリバイが隠されているような気がしました。 「大人仕様」「大人顔」「大人の余裕」。「STORY」に躍るこれらの言葉も、まぁ考えてみればおかしな話。40代女性は立派な大人なはずです。たぶんそこには「まだ大人じゃない」と思っている自分がいて、大人っぽい服装に一定の距離感がある。だから「大人プロパガンダ」に乗っかれるのではないかと思います。もう女子じゃない女がなくしたものを求めるかのように「女子女子」言うのとは逆ですね。DKJ(団塊ジュニア)世代がバブル世代さんを「がんばっちゃってイタイ」と思うのと同じように、DKJも「気づいてなくてイタイ」と思われるのでしょう。なんだかんだで同じことを繰り返しているのです……。 (西澤千央) 「STORY」 「STORY」読者がライバル視してるのは、「VERY」読者か! 【この記事を読んだ人はこんな記事も読んでます】 ・読者層の新陳代謝を促す「STORY」に、「お小遣い月1万円」層が登場 ・小泉今日子、泉ピン子、林真理子が「STORY」で40過ぎた女の生き方を語る語る! ・林真理子の閉経宣言、泉ピン子の連載スタート! 「STORY」から何かが香る 最終更新:2012/06/04 21:09 次の記事 バレーとジャニーズの怪しい関係!? >