サイゾーウーマンカルチャー『ヤング≒アダルト』のメイビスは、都会と故郷どちらでも勝てない惨めな女? カルチャー 映画『ヤング≒アダルト』レビュー 『ヤング≒アダルト』のメイビスは、都会と故郷どちらでも勝てない惨めな女? 2012/02/24 21:00 レビュー (C)2011 Paramount Pictures and Mercury Productions, LLC. All Rights Reserved. 37歳、バツイチ独身女・メイビスの朝は二日酔いで始まる。デカいペットボトルのコーラをグラスにも注がず直飲みしては、シリーズ終了が決まった少女小説のゴーストライター仕事に取りかかるという、絵に描いたような冴えない朝。そんな彼女のもとに、学生時代の元カレから赤ん坊の写真が添付されたメールが届いたことから事件が始まる。 ただ赤ん坊の誕生を知らせただけのメールなのに、メイビスは「元カノにこんなメールをわざわざ送ってくるなんて、彼はきっと私に未練があるんだわ! 赤ん坊の世話に追われる毎日がつらすぎて私に救いを求めてるのかも!?」と怪電波ばりのSOSサインを勝手に読み取ってしまい、元カレとよりを戻すべく、普段着のヨレヨレのキティちゃんTシャツを脱ぎ捨ててゴージャスでセクシーな胸元開きまくりのドレスに着替え、実家のある(そして元カレの住んでいる)田舎町へと降り立った! ……という、もはや悪い予感しかしない始まり方をする映画『ヤング≒アダルト』だが、もちろんこの先にはヒドい展開が待っている。元カレは復縁など望んでいないし、むしろ子どもが生まれて幸せいっぱい。都会ではイケてるメイビスのファッションセンスも、田舎町では浮くばかり。仕事では成功しているフリをしてみても、実際には「作家」ではなく表紙に名前すら載らない「ゴーストライター」。唯一田舎でも誇れるのは「美貌」だが、それも37歳だとかなり微妙だ。それでもメイビスは「カレは私を好きなはず!」と信じて暴走を続けていく。その大迷惑な行動を見ていると「いくら独り身で仕事もうまくいかなくて寂しいからって、元カレのメールをきっかけに変な電波を受信するのだけはやめておこう……」と彼女を反面教師に教訓を心に刻み込みたくなるが、その一方で簡単に「イタイ女」と切り捨てられないところもある。 メイビスは高校時代、プロムクイーンと呼ばれたモテ女だった。田舎町からミネアポリスという小都市へ自力で出て行き、ライターといういわゆる「クリエイティブな」職業に就いた。華やかでモテモテな人生をこれからも謳歌するつもりだったに違いない。なのに、実際に待っていたのは陽の当たらないゴーストライターの仕事と、37歳になっても男と継続的な良い関係が築けないため、寝る相手はいてもバツイチで彼氏もいない孤独な生活……。気づけば、あんなにバカにしていた田舎の同級生たちのほうが堅実に生きて幸せそうな暮らしをしている。「こんなはずじゃなかった!」という心の叫びが聞こえてくるようだ。だが、メイビスはそこで自分の負けを決して認めようとしない。自分をみじめな女だとは全然思っていないし、元カレを奪えば何かに勝てると思い込んでいる。ちなみにメイビスが元カレを本気で愛していると感じられるエピソードはまったくと言っていいほど、ない。田舎の同級生に負けられないとか、自分が振った元カレが、自分なしで完璧に幸せそうな顔をしていることが許せないとかいう「プライド」しか見えてこない。 これだけなら「プライドが高くて見栄っぱりで、自分の自尊心のために他人を踏みつけにしてもいいと思ってるイヤな女」だろう。だが、メイビスが今までの人生で努力し、ささやかに勝利して得てきたはずの「37歳でもイケてる女としての自分」「素敵なレストランでも堂々と振る舞えるファッションセンス」「普通とは違うクリエイティブな肩書き」は、地道で安定した生活が良いとされる保守的な田舎町では「37歳になっても浮ついた格好をして、夫も子どももおらず得体の知れない仕事をしている可哀想な人」というマイナスイメージでしか見られないのだ。メイビスが得た「ささやかな成功」は、田舎町では空虚な表面のことでしかない。メイビスの両親でさえそういう目で娘を見ている。自分の財産が、認めてもらえるどころかマイナスに見られる。これほどキツいことがあるだろうか。 迷惑きわまりなく、滑稽で見苦しいメイビスの行動すべてに共感はできなくとも、田舎を捨てて都会に出てきた女の意地として、そこで戦いを挑みたくなる気持ちだけは、わかる。戦い方も、戦う相手も、なにもかも間違っていたとしても、都会の独身女の意地見せたる! と無謀な戦いに挑むメイビスの姿を笑う気持ちには、どうしてもなれないのだ。 (雨宮まみ) 『ヤング≒アダルト』 自称”作家”のゴーストライター、メイビス・ゲイリー(シャーリーズ・セロン)は三十代後半のバツイチ独身。執筆中のヤングアダルト(少女向け小説)シリーズは人気が落ちて終了間近、新作の仕事もない。そんなメイビスが、妻子のいる元カレとヨリを戻すため美貌とセンスを武器にして自信満々に帰郷するが大騒動を巻き起こす。 出演/シャーリーズ・セロン、パトリック・ウィルソン、パットン・オズワルト、エリザベス・リーサー ほか 監督/ジェイソン・ライトマン ・公式サイト 2012年2月25日(土)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー 最終更新:2012/02/25 00:40 次の記事 「イノッチを見習え」!? 赤西仁電撃婚で問われるジャニタレ結婚報告のあり方 > Facebook Twitter プッシュ通知を受け取る クリックしてプッシュ通知を有効にする クリックしてプッシュ通知を停止する アクセスランキング カルチャー 慰謝料ほしいのはこっちだわ! 見知らぬ女性からの内容証明……慰謝料!? 婚活したって遅いくらいよ “行ってはいけない”縁切り神社 アラフォー婚活、12歳下の韓国男子 ヨドバシ販売員が教える「最強の双眼鏡」 臨床心理士が語るアイドルの葛藤 のぶみ新作絵本、母はどこに怒る? 過激セックスがすごいエロ漫画 アラフォー婚活、「ラブホ行かない?」タップル婚活の男 “行ってはいけない”パワスポ11選 アラフォー婚活、お見合い後お断りしたワケ AV男優・しみけんがスパッと解答 TLマニアが選ぶ「どエロシーン」ベスト3! アラフォー婚活、「結婚しよう!」26歳男子からプロポーズ 【漫画】上野でせんべろ昼飲みツアー! 嵐・大野智の過激ファンを考察 素人が“行ってはいけない”パワスポ 悠仁さま成績不振報道は怪しい? Snow Man増員で見た地獄と希望 総合 店舗数が激減【ほっかほっか亭】 ドラスト【コスモス薬品】PBがすごい! 『オールスター感謝祭』炎上事件簿 【オイシックス】1,079円ミールキットが想定外 【ロピア】599円小林さんちシリーズ新商品 急拡大のパン屋【ペンギンベーカリー】は巧妙! ジェシー、Snow Manと間違われる Snow Man・目黒蓮をめぐってファンが分裂? キンプリ永瀬、同期参加のソロ曲に賛否 過去最高の売上高【日高屋】コスパ最高 粗品「味がしない」発言に心配続々 慰謝料ほしいのはこっちだわ! 売上倍増【ウェンディーズ】、1210円パスタ実食! 二宮、山田を「人格者」とベタ褒め 【角上魚類】名物天丼がすごい! TOKIO松岡、モテるためにしたこと語る 「ココイチ」プロおすすめトッピング 元美容師が教える“濡れ髪”セット術 Snow Manが紅白出場!? 旧ジャニーズ復活を図るNHKの変わり身の早さ 「ユニクロ」1.7万円分コーデに大満足! カルチャーの人気記事 慰謝料ほしいのはこっちだわ! 見知らぬ女性からの内容証明……慰謝料!? 婚活したって遅いくらいよ “行ってはいけない”縁切り神社 アラフォー婚活、12歳下の韓国男子 カルチャー一覧へ サイ女の精神!過去の人気コラム 「家に行くのを妨害しようと……」認知症の担当ケアマネジャーが恐怖を感じた言葉とは コラム 腐ってもキムタク! 主演ドラマ『Believe』視聴率下落でも……女性週刊誌の“持ち上げ”方は? 神林広恵「女性週刊誌ぶった斬り」 KAT-TUN・中丸雄一、『シューイチ』ヒデちゃん流派を受け継ぐMCぶりに見た可能性 コラム コラム一覧へ