サイゾーウーマンカルチャー女性誌レビュー料理・掃除・貯蓄の「妻としての即戦力」が必要? 「MORE」の結婚特集が怖い カルチャー [女性誌速攻レビュー]「MORE」2月号 料理・掃除・貯蓄の「妻としての即戦力」が必要? 「MORE」の結婚特集が怖い 2011/12/29 17:00 女性誌速攻レビューMORE 「MORE」2月号(集英社) 2011年最後の「MORE」。「史上最強『モアモデルズ12』からHAPPY NEW YEAR」は、12名の専属モデルたちが一堂に会する何とも年末らしい企画。抜群の親しみやすさと若干のイモさ、そして適度な抜け目なさを併せ持つ、まさに史上最強に「フツー」っぽい布陣であることを再確認致しました。等身大のOLさんの心と体に寄り添うことを命題にした「MORE」においては、ちょっとの”浮き”が命取りなんですね。それぞれの方が2012年の誓いを書き初めしたり、お正月Q&Aに答えているのですが、これがなかなか興味深いです。「継続は力なり」(篠田麻里子)、「何でも笑顔で乗り切る」(矢野未希子)など、ポジティブ&ハッピーを推奨する同誌らしい一言をしたためているモデルが多い中、鈴木えみは消え入りそうな文字で「未知との遭遇」と書いていて二度見しました。インタビューでも「2012年は宇宙人が来るらしいよ!知ってた?」「(カウントダウンの過ごし方は?という質問に)テキーラ!」など、素面と思えない回答を。えみちゃんの年越しテキーラが灰皿には入っていないことを祈りつつ、年内最後の誌面チェックに参りましょう。 <トピックス> ◎「買った冬服」イメチェンBefore→After ◎MOREコスメ大賞デラックス ◎ママになってわかった「妊娠&出産」のリアル ■スイーツ(笑)コラムニスト 先月号からモアモデルズに仲間入りした矢野未希子。前述の企画で、「2011年、ハッピーだったことは?」という質問に「プライベートで行った宮古島。な~んにもない場所で、心が洗われた」と、報道にも出たウワサの彼との「一泊12万の高級ヴィラ旅行」をシレ~っと答えちゃうあたり、”大人スイートが似合う新星”というキャッチが見事にハマってます。そんな彼女が恒例の着回し企画に初登場です。題して「辛口シンプル派美保&大人スイーツ派みっこ 主役はアウター3着!お仕事着回し20days」。 今回みっここと矢野未希子が扮するのは「趣味で書いていた食べ歩きブログが話題になりOLからスイーツコラムニストへ転身」という仰天キャラ。「そんなやつおらへんやろ~」と心の大木こだま・ひびきが顔を出しがちな着回し企画のキャラ設定にあって、”スイーツコラムニスト”は最上級のありえへんではないでしょうか。筆者もこの業界の端っこにおりますが、そんな職業の方には今日日お目にかかったことがありません。さすがみっこ。「(どんな初夢を見たい?という質問に)おいしいものをお腹いっぱい食べる夢(笑)」と答えちゃうオンナ。そして、OLさんにいらん夢を見せちゃう雑誌「MORE」。 スイーツコラムニストみっこの日常は終始「友達が可愛いカフェをオープン」「今日の取材は、今話題のオーガニックスイーツ店」などで、もはや「スイーツ(笑)コラムニスト」とお呼びすべき逸品。同級生設定である相方の田中美保に「何でも話せるお姉ちゃん的存在」と勝手に年上キャラを押し付けてしまうあたりも、妄想企画とは言え、噛みしめた奥歯がキシキシします。矢野未希子に「大人スイーツ」を命名した「MORE」のセンスにあらためて脱帽です……。 ■策士、策に溺れちゃう婚活ページ みっこの”大人スイーツ”に女性誌の持つ様式美をまざまざと見せつけられたところで、もう一つの「MORE」の本懐、結婚特集を見てみましょう。 その前フリなのか、料理研究家のケンタロウが「ケンタロウ・ザ・ベストめし!!」と銘打ち牛丼カレーとか豚のしょうが焼きとかナポリタンとか、いかにも”胃袋つかまえる”系のレシピを紹介しています。「男子ってぇ~舌がお子ちゃまだからぁ~こういうゴハン好きだよね」……みっこに触発されて筆者の心のスイーツが騒ぎだします。 胃袋つかんだら次は玉袋……とばかりに、さらに「ママになってわかった『妊娠&出産』のリアル」ページへ。とらぬ狸の皮算用的な過去と未来に挟まれ、ようやくたどり着いたのが「今年こそ『結婚できますように!』をかなえます」。「今年、猛烈に結婚したいあなたのための、世界一わかりやすい道しるべがここに!」とリードも激しくあおります。 「出会い場別攻略法」「彼のタイプ別『成婚力』を身につける!」「”縁呼び魂”を味方にする」と、3段階で貴女の本気に答えるこの企画。「出会い場別攻略法」では、さまざまな出会いの場(同窓会、社会人サークル、街コン、結婚相談所、お見合い)ごとに、その特徴、集う男子のタイプ、メリット&デメリットを詳しく分析。 気になったのは「朝婚活」なるもの。読んで字のごとく朝の時間を活用した婚活イベントなのですが、その内容が「RUN婚、朝ペット、エコん活(公共スペースのゴミ拾い)」……早朝の公園に行けばそこいらのジジババがフツーにやっていそうな……。 また「成婚力」とは「知る力」「待つ力」「押す力」の3つに分類されると話すのは某結婚相談所の主宰者。この方のおっしゃっていることがまたスゴいです。「『待っていれば、そのうち……』と受身になるのではなく、最低限、彼に選ばれるための力を磨くべきです。そのためには、料理・掃除・貯蓄といった基本的な”妻としての即戦力”を磨いておくこと。料理教室に通ってお弁当を作ってあげたり、彼のお部屋を掃除したり、磨いた即戦力を月に1~2回披露して、いかに『この子と結婚したら幸せだろうな~』と思ってもらうかが重要です」って、ちょっと衝撃~!! 結婚相談所に行ったら、したり顔のババアにそんな説教垂れられちゃうわけ? 金払ってんのに? ありえないっす! この人の提唱する3つの力というのもまた微妙で、「知る力」→「偶然を装って結婚を連想させるスポットに連れていくと効果的」、「待つ力」→「料理の腕を磨き、月に1~2回程度、食材にこだわった和食のフルコースなどを作ってあげる」、「押す力」→「まずは『今度、ウチの親に会ってみない?』など、提案型のプッシュをかけてみること」など、「策士、策に溺れる」の典型的バージョンばかり。読んでいて胸が苦しくなりました。 男性に「選んでもらう」ために金と時間と労力をかけ、がんばったらがんばったで「重いんだよね」などと言われてしまう。そう考えると、結婚とは当たりくじのない福引きですね。5,000円買物してやっと1回引けたのに、除菌ティッシュかよ! スイーツコラムニスト、男心をくすぐる料理、そして幸せな結婚。今月号の「MORE」は、三十路女のオカズ要素が強すぎて、鼻血が出ました。 (西澤千央) 「MORE」 結婚=家政婦、なんて言ってると上野千鶴子センセにチクってやる! 【この記事を読んだ人はこんな記事も読んでます】 ・「MORE」娘がセックスしない理由は「面倒なわりに得るものがほぼない」!? ・キズナ婚でもいい! 「MORE」の”何が何でも結婚したい”が止まらない ・女友だちはこうあるべし? 「MORE」のノイローゼ一歩前の”友情”像 最終更新:2011/12/29 17:00 次の記事 “セックスに振りまわされる生き物”の本質を描いた『文字に溺れて』 >