高いのはギャラだけじゃない!

1話に41億円!? 映画を超える品質となった米ドラマの驚きの製作費

2011/05/18 11:45
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『バンド・オブ・ブラザース コンプリート
・ボックス』/ショウゲート

 ハリウッド映画顔負けのハイクオリティーな名作ドラマシリーズを、次々と送り出しているアメリカテレビ界。近年では映画を超える製作費が投入されるようになり、作品のスケールは、どんどんビッグにダイナミックになり、大きな話題を呼んでいる。今回は、映画を超えたテレビドラマシリーズの中から、「製作費が高い米テレビドラマ 5」をリストアップしてみた。

■第5位 『24 -TWENTY FOUR-』

 不死身の男ジャック・バウワーの魅力がさく裂する『24 -TWENTY FOUR-』の、最終シーズンの製作費用は、1話当たり500万ドル(約4億円)だったと伝えられている。ドラマはヒットすると、視聴者を満足させるために豪華なシーン・派手なアクションシーンを撮影するようになったり、人気のある出演者を引き留めるためギャラを増やすようになる。『24』のケースも同じで、シーズンを重ねるごとに、映画顔負けの爆破シーンやアクションシーンが増え、主役ジャックを演じるキーファー・サザーランドは、1話出演するごとに約4,500万円のギャラを得るようになった。ちなみに、この出演料はテレビドラマ部門で最高額であり、当分この記録は破られないだろうと言われている。

 なお、ドラマが終了した一番の理由は視聴率低迷であった。制作プロダクションは、放送局のFOXが放送の契約更新をしないと知ったとき、他局に『24』を放送しないかと持ち掛けたが、一番高く提示してくれたNBCでも1話350万ドルと採算が取れないため、ドラマの継続を断念したと伝えられている。

■第4位 『LOST』

 アメリカのドラマはパイロットと呼ばれる1話目に大金を費やすケースが多い。パイロットの視聴率が悪いとドラマが打ち切りになってしまうため、どのプロデューサーも相当な気合を入れるのだ。現在、パイロットの平均制作費は3億2,000万円とされているが、2004年にその倍以上の10億円を超えて作られたドラマ・パイロットが登場した。不思議な現象が起こる無人島が舞台の作品で、社会現象を巻き起こした『LOST』である。


 ドラマは、飛行機が無人島に墜落するシーンからスタートするのだが、よりリアルに制作するために、廃機となった飛行機を購入。ロケ地であるハワイに飛行機を移送するだけで2,000万円以上掛かったと伝えられており、墜落現場を見事に再現した。

 出演するのは無名に近い役者ばかり。プロデューサーを務めたJ・J・エイブラムスも、当時は未知数だと評価されていたころで、通常ならばこれほどの製作費用は与えられない。『LOST』が、これだけの大金を得たのは、放送局であるABCの重役ロイド・ブラウンが企画から参加していたからで、彼が押しに押したからである。ちなみに、ロイドは「成功するかも分からない新ドラマに10億円以上を費やすのは、あまりにも危険な冒険だ」としてクビになっている。

■第3位 『バンド・オブ・ブラザース』

 破格の1億2,000万ドル(約98億円)を掛けて制作されたのは、01年に放送された米HBOと英BBCの共同作『バンド・オブ・ブラザース』。映画を超えるハイクオリティーのテレビドラマを手掛けることで知られているスティーヴン・スピルバーグが、トム・ハンクスと組み制作した戦史ミニシリーズで、一切妥協することなく1年半という長い年月を掛けて作られた。

 この作品は、第二次世界大戦が展開されている1942~45年のヨーロッパを舞台に、米陸軍の激闘を描いた物語。当時のヨーロッパの街をそのまま再現した巨大レプリカが建てられるなど、莫大な製作費用が投入されたのだ。BBCは、共同制作権としてHBOに700万ポンド(約9億5,000万円)を支払っているが、これは同局が購入した最も高い海外番組となっている。


 自動車メーカーのクライスラーは、撮影用に600~1,000台のジープを提供しており、ドラマの映像を使用して広告キャンペーンを行う権利を得た。クライスラーは、そのキャンペーンに約12億円費やしたと伝えられている。ほかにも、番組プロモーションに約12億円が費やされるなど、大金が舞った作品として今なお語り継がれている。

■第2位 『Boardwalk Empire』

 たった1話制作するのに5,000万ドル(約41億円)も使われたテレビドラマがある。巨匠マーティン・スコセッシが監督し、マーク・ウォルバーグ(『アントラージュ★オレたちのハリウッド』プロデューサー)がプロデュースし、名優スティーヴ・ブシェミが主演と、業界随一の実力派たちがタッグを組んだ『Boardwalk Empire』だ。41億円も掛けて制作されたのは、記念すべき第1話(パイロット版)であり、アメリカテレビシリーズ史上において最も高い製作費用(1話当たり)だとされている。

 『Boardwalk Empire』は、ニュージャージー州のアトランティックシティが、「海辺のリゾート」から「ギャンブルの街」へと大変貌を遂げた1920年代が舞台の作品で、監督、プロデューサー、俳優に支払われた多額のギャラのほか、本格的なセットや小道具に大金が費やされた。ドラマでは、政治家や権力者たちの汚職や残虐な抗争シーンが多いのだが、これまで使われてきた特殊メークではなく、高額な特殊映像効果(VFX)を駆使することにより、よりリアルに描写しており、これにもお金が掛かったとされている。

 この作品のように、歴史劇は製作費が高くつくものであり、紀元前のローマ帝国が舞台のテレビシリーズ『ROME』(全22話)も、制作に200億円以上が費やされたと伝えられている。

■第1位 『ザ・パシフィック』

 ハリウッド映画でもトップクラスのプロデューサーしか使えない、破格の2億1,700万ドル(約178億円)を費やして制作されたのが、『ザ・パシフィック』(全10話)。この作品は、太平洋戦線を舞台に、3人の海兵隊員を中心に描かれた戦争ドラマで、『バンド・オブ・ブラザーズ』のスティーヴン・スピルバーグとトム・ハンクス、ゲーリー・ゴーツマンのゴールデントリオがプロデューサーを務めた。

 お金の掛かる爆破シーンが満載なのはもちろんのこと、リアリティーをとことん追求したため莫大な費用が掛かったという。パラオ諸島・ペリリュー島上陸のシーンを撮影するだけで4億円以上が費やされ、撮影も4つのカメラを駆使し、ワンショット撮影するごとに約570万円が飛んでいったという。撮影が行われたオーストラリアで118億円以上が使われ、同国で制作されたテレビ番組の中で最高額の作品となった。『ザ・パシフィック』の撮影で、オーストラリア人4,000人が職を得て、オーストラリア経済に158億円を超える利益をもたらしたと報じられている。

 また製作費用とは別に、プロモーション費用として1,000万ドル(約8億円)が用意され、世界中で大々的に宣伝された。アメリカの作品にしては珍しく、精神的に追い詰められた米兵が子どもを含む民間の日本人を虐殺するシーンもあり、いろいろな意味で大きな話題を呼んだ。

 ほかに、00年に制作されたジェームズ・キャメロンがプロデュースし、ジェシカ・アルバが主演した『ダーク・エンジェル』のパイロット制作費用は約6億5,000万円で、当時は最高額だと大きな話題となった。ジェニファー・アニストンがブレイクした『フレンズ』は、メインキャスト6人のギャラが暴騰し、最終シーズンでは1話当たりの制作費用が約5億7,000万円に。また、ドン・ジョンソン主演の刑事ドラマ『刑事ナッシュ・ブリッジス』の最終シーズンは1話あたり約1億6,000万円掛けて制作され大赤字となったと伝えられている。

 ひと昔前、アメリカのテレビドラマシリーズは「映画レベルまで達しないプロデューサー、監督、役者の舞台」と陰口をたたかれていた。しかし、今やオスカー監督や名プロデューサーが自ら進んでテレビ界で活躍。作品のクオリティー、役者の演技力、製作費用、何もかもが映画を超えるようになってきた。海外ドラマシリーズは、今後ますます面白くなりそうだ。

『バンド・オブ・ブラザース コンプリート・ボックス』

アメリカ人って電卓持ってんのかね?

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最終更新:2011/05/18 11:45