カルチャー
マンガ家・尾崎南氏復帰記念インタビュー(前編)

完全復活! 尾崎南が語る”空白の5年間”、『絶愛』『BRONZE』への想い

2011/01/28 11:45
「コーラス」3月号(集英社)に掲
載される『BRONZE外伝 華冤断章
-天使降誕-』

 実の母親が父親を殺した過去から、他人を遠ざけて生きてきたサッカー少年・泉拓人。何もかもが手に入る環境ながら、無気力な人生を歩んできたカリスマシンガー・南條晃司。そんな二人が出会い、「男性同士の愛」に悩みながら、過酷な運命に翻弄される――。伝説の少女マンガ『絶愛-1989-』(以下、『絶愛』)、その続編でもある『BRONZE-ブロンズ-ZETSUAI since 1989』(以下、『BRONZE』)をご存じだろうか? 衝撃的なストーリー展開と、”王道少女マンガ誌の「マーガレット」に掲載された男同士のラブストーリー”に、思春期に熱狂したアラサー女子は少なくないだろう。作者である尾崎南氏は、2006年に『BRONZE』14巻を描き上げ、活動を休止。そんな尾崎氏が約5年のときを経て、本日発売の「コーラス」(集英社)で復活を果たすことになったわけだが、その心境やいかに!? 空白の5年間と、『絶愛』『BRONZE』に対する思いを聞いた。

――5年ぶりの復活ということで、ファンの皆さんも新作を楽しみにしていると思います!

尾崎南氏(以下、尾崎) ありがとうございます。

――今回、「コーラス」に掲載される『BRONZE外伝 華冤断章-天使降誕-』は、『BRONZE』に登場する、言わば主人公たちの敵キャラ、南條広瀬と、彼に仕える倉内史義の話。なぜこの2人のストーリーを描こうと思われたのですか?

尾崎 広瀬は番外編でも何度も描いているんですけど、もっと掘り下げたいと思っていた人なんです。活動を再開するのであれば、いきなり新作というよりは、読者のみなさんも続きを待ってくれていましたし、『BRONZE』に関連するものを描こうかと。でも、主人公の南條晃司と泉拓人を描くのは、ちょっとまだ精神的に無理ですね(苦笑)。

――5年間の活動休止を経て、「よし、また描こう!」と思えたきっかけは?

尾崎 この5年間はずっと闘病生活で、描くことからはほとんど離れていました。何年か前から活動再開のお話は何度か頂いていたんですが、その度に「やっぱりダメかな……」の繰り返しでした。今回は突然、こう、何か降りてきたんですね。ドカーンと。いつも突然降りてくるんです、何かが(笑)。

――壮絶なストーリーですもんね……。少女マンガで、主人公が自分の腕を切り落とすシーンが出てくるとは思いませんでした。

尾崎 自分の中では自然な流れだったんですが、皆さん驚いてましたね(笑)。

――そもそも少女マンガに描き始めたきっかけは?

尾崎 流されるがままに『絶愛』の連載が決まった感じです。最初に『3DAYS』という、『絶愛』の番外編のような話を読み切りで描かせていただいた後に、「とりあえず10回の連載で」ということで『絶愛』本編を描き始めました。でも、あの話を10回で完結させられるはずもなく、「じゃあ、いけるところまでいっちゃおう!」と。

――『絶愛』は「同性の恋愛」を描いたために、「人を愛するとは何か」という哲学的なテーマも含んでいましたし、間接的な性描写もあり、少女マンガとしては異色の存在でした。編集部側からの要望はありましたか?

尾崎 言葉の使い方や性的表現のチェックがあるだけで、ストーリーに関してはほとんどないですね。最初から、「私はこれしか描けません」というお話もさせていただいていましたし。絵として腰つきがNGだったりしたこともありましたが(笑)。ただ拓人がベッドに座ってるだけの絵なんですが、腰がそんなにやばかったんでしょうかね(笑)。あとはほとんど何事もなく好き勝手に描かせて頂きました。結局、体がもたなくなって、1年で連載を終わりにさせていただいたんです。月2回の連載は体力的にも精神的にも本当にツラくて、当時のことは記憶に残っていないぐらいです。

――『絶愛』だけでも物語としては十分完結していたのに、よりハードな内容の『BRONZE』を描こうと思ったのはなぜ?

尾崎 多分……なんですけど、『絶愛』では晃司の視点で描いた部分が多かったから、『BRONZE』では拓人の視点で描こうとしたんじゃなかったかな? 『絶愛』連載時はまったく余裕がなかったんですけど、『BRONZE』は比較的自分のペースで描くことができたので、自分自身を作品にさらけ出していたと思います。そのぶん、精神的にツラくなっていくんですよね。

――それで5年間の休養という形に……。

尾崎 私の場合、自分の中にある”すごく叫びたいこと”をゲロ、吐露というよりゲロ(苦笑)、するために描いているから、キツくなっていくんだと思います。私は”モノを創る人”ではないんですよね。ただ”感情をゲロしている”だけなんですよ。自分の中にあるものしか描けないので、何かを”創り出す人”ではないなと。

―― “叫び”を吐露するために、男性同士の恋愛を描かれているということですか?

尾崎 男同士の恋愛が描きたくて『絶愛』と『BRONZE』を描いたわけではなくて、何というか……晃司も拓人も私自身なんですね。性別云々ではないんですよ。性別というものは関係なくて、唯一無二の存在を追い求めているというか……言葉にするのは難しいですね。自分の中の感情のぶつかり合いみたいなものを吐き出すために、描いているんだと思います。

――それが恋愛ストーリーとして描かれたわけですが、尾崎さんにとって恋愛とはどういうものですか?

尾崎 私の場合は、拓人のように両親のトラウマが一番強いですね。だから恋愛に臆病なのかもしれません。もちろん普通に恋愛はしてきましたけど 、”永遠に続くものはない”という意識がすごく強い。ので、なんでしょうね……。そんなに男女の恋愛にキャピキャピしないというか。付き合いはじめはウキウキするんですけどね。

――恋愛モノは避けるという選択肢もあったのに、晃司と拓人を描いたのはなぜなんでしょうか。

尾崎 男の人のことがよくわからないから描きたくなるんだと思います。自分が女性だから、女性のことはわかりますけど、男の人の思考回路はよくわからない。そもそも、なぜそれを描くのか自分でもわからないから、描き続けているのかもしれませんね(笑)。
後編に続く)

尾崎南(おざき・みなみ)
マンガ家。1989年、「マーガレット」(集英社)で『3DAYS』掲載。同年、『絶愛-1989-』の連載をスタートし、それまでの少女マンガとは一線を画すストーリーとキャラクターで、女子たちを熱狂させた。1991年より、同作の続編となる『BRONZE-ブロンズ-ZETSUAI since 1989』(既刊14巻)の連載を開始。商業誌で活躍する一方、同人活動も積極的に展開しており、絶大な支持を得ている。
公式サイト 

特定書店でフライヤープレゼント

 5年ぶりに復帰記念として、「コーラス」3月号を特定の書店で購入した方に、尾崎南さん描き下ろしの「フライヤー」をプレゼンするキャンペーンも! 詳細は尾崎南さん公式サイト、もしくは「コーラス」公式サイトで確認を。(数に限りがあります)

『絶愛―1989―』

復習!


「コーラス 2011年 03月号」

そしてコレ!


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最終更新:2011/03/13 17:39
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