[連載]亀井百合子の「オシャレな女に憧れて」

家出、いじめ、セックス……暴露系「読モ本」をオバサンが読む

2010/11/02 11:45
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『中学生失格』(竹書房)

 若者の”気”を吸収すれば若返るかもしれない……。そんな思いで、オバサン記者(37歳)が、読者モデル3人のエッセイを読んでみた。

 まず、はじめは、雑誌「egg」(大洋図書)のモデル・板橋瑠美の『from Black… 娘がくれた第二の人生』(小学館)。「from Black」といってもチェケラなブラックカルチャーは関係ナシ。23歳の板橋が、これまでの母との葛藤、家出、パラパラサークルの結成、20歳での出産、結婚を振り返るという内容だ。あとがきを見ると「『from Black』は十代の心も体もすさんでいた過去の悲しい自分を指していました」とある。それが出産したことで人生が代わり、「生きる意味が明確に、前向きになれた事で、本物の『WHITE』になれました」とのこと。自分を色にたとえて「本物の白」と言い切ってしまえるあたり、若いって素晴らしいですね。「生きる意味が明確に」って……、オバサンはいまだに生きてる意味が分かりません。教えて。

 過去の写真公開やメイク法などのコーナーもあるが、予想に反して字が多く、必要以上に真面目。残念なことに、真面目すぎていちいち道徳的で予定調和的で、逆に安っぽくなってしまっているきらいがある。まとめると以下の通り。

(マンバギャル生活)お母さんなんて、ウチのこと全然わかってくんない。

(パラパラサークルに入る)いまのウチには、モデルとサークル活動の方が、卒業するためだけに学校に通うよりも、人として成長させてくれるんだ。

(デキ婚)産んで良かった。逃げなくて良かった。

(ギャルママ生活)子育てするようになって、社会貢献について深く考えるようになった。

(まとめ)いまのわたしがいるのは、お母さんのおかげです。ありがとう!

 葛藤とか挫折とか成長とか愛とか感謝とか。まあ、いいんだけど、カルビを食べると胃もたれするオバサンにとっては、もう少し軽さと新鮮みがほしいところ。なんの驚きもない惰性でつけてる美容液みたいなモンですね。オバサンの若返り度50点。

 2冊目は、「梅しゃん-6 〜いじめで奪われた6年間〜」(大洋図書)。 「men’s egg」(同)のモデルであり、益若つばさの夫である梅田直樹が子どもの頃に受けたいじめを告白するというもの。約120ページのオレ語りのうち約100ページが、自分が近所の”タッ君”からどういういじめを受けていたかの細かい説明(残りのページは他の人のいじめ体験談)。せめて「from Black…」のような、”大人になった今だから分析できる自分の気持ちやタッ君の気持ち”など、俯瞰的な視点があればいいのだが、ひたすらいじめの記録ばかり100ページを読むのはキツい。個人的な恨みつらみを晴らそうとしている風にしか読めない。ページを繰るごとにストレスでちりめんジワが増えそう。オバサンの若返り度10点。


 最後は、てんちむの『中学生失格』(竹書房)。もうすぐ17歳のてんちむは、2004~06年までNHK『天才てれびくんMAX』に出演していたが、その後いったん芸能活動を休止し、ギャルとして再登場。現在はファッション誌「Nicky」(同)のモデルを中心に活動している。NHKにレギュラー出演していた清純派子役が、金髪ギャルになったというだけでも驚きなのに、中学生でセックス三昧だった過去を告白するなんて衝撃的、ってことらしいが、オバさんにしてみれば「子役ってそんなもんだろ」と思ってしまう。

 しかし、この本は素晴らしかった! 何が素晴らしいって、中学時代の日記をそのまま掲載しているところだ。臆面もなくバカ丸だし。偉い。これは本気の誉め言葉。17歳なんてまだまだカッコつけたい年頃だろうに肝が据わっている。内容は、ひたすらオトコの話題と、芸能活動を続けるか続けないかという悩み。

3/4 顔だって鈴正(=元カレの鈴木正人)がいーのに、なぜか渉太(=今カレ)にいってしまう。チューしたかんかく、だきしめられたとき、今でもわすれない。

3/6 (渉太のこと)”キライ”なんじゃなくて、どーでもよくなった。

3/12 (渉太と)ちゅープリ撮った。たからもの さいごのはなくそキモかった。もう会いたくないっス! 今好きな人いないんかも~


3/14 渉太はもうキライ。やっぱりうちは、顔なんかなー。顔キモいし、はなくそはあるし、なんであんな奴のためにうちは夜ぬけだしたりしたんだろうッて感じ。

4/2 渉くんとのはじめてのディープ。はじめての2人きりのおとまり。2人で上半身ぬいで。…やらなかったけど。

 と、心情がくるくるめまぐるしく変わる。もう書いてるそばからどんどん変わっていくらしく、支離滅裂。日本語の文章としては、他の2冊のほうがはるかにまともである。よくこんな本出したな、というレベル。でもだからこそ、思春期の不安定さがものすごくよく伝わってくる。そう、中学生は鼻くそが見えたから彼氏に幻滅するようなアホなのだ。オバサンはみごとに10代にタイムスリップして震えました。震えるならやっぱり綿矢りさより西野カナよりてんちむだな。最後に母親への書き下ろしコメントも添えられているのだが、それも優等生っぽくなくていい。
 

私は自分の母親を決して尊敬はしません
だけど1人の女性として見習いたい部分は沢山あります。
自分の母の背中を見て成長! とかはあんまり思わないけど
「この人の子供でよかった」と思います。

 泣ける。10代の女の子と母親の微妙な距離感が、素直な文章でよく表されている。切なくて開いた毛穴が閉じてきた。オバサンの若返り度100点満点。ただ……、まだこんなに低年齢のうちから自分を売って開き直って今後どうするのだろうか。てんちむの将来が心配になった。なるほど、老婆心をくすぐる書でもあるわけだ。
(亀井百合子)

亀井百合子(かめい・ゆりこ)
1973年、東京都の隣の県生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスライターに。ファッション誌やカルチャー誌のライター、アパレルブランドのコピーライターとして活動中。

『中学生失格 [単行本]』

「病み病みMAX☆ 」とか書いてあるんだよ!

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最終更新:2019/05/17 20:39