[女性誌速攻レビュー]「GINGER」12月号

イケメンですら楽しめない……キャリア女の理性が邪魔する「GINGER」

2010/10/24 17:00
ginger1012-1.jpg
「GINGER」(幻冬舎)12月号

 「GINGER」(幻冬舎)12月号の表紙は、アーティストの倉木麻衣。今まで誌面に度々登場しては、宣伝だらけのインタビューを展開したり、CDリリースに伴って2010年9~11月号に3カ月間のみ連載をするなど、政治の香りがプンプン。今月号で更に不自然さを感じるのが、華々しい表紙に対し、2ページのみの倉木の誌面記事。インタビューは一切なく、写真と簡単なキャプションのみの構成に違和感を感じずにはいられません。倉木の事務所は、倉木の掲載記事に厳しいことで有名ですし、大人の事情の連続に編集部のモチベーションが下がっていることの表れかもしれません(注:全部、勝手な妄想です)。そんな倉木問題にモヤモヤしながら、中身を見ていきましょう。

<トピックス>
◎シンプルなのに、女っぽい! 着こなし講座
◎男性上司の生声リサーチでわかった! デキる女のスマートお仕事Style
◎連載「Focus on the Speaking People」Vol.8 紀里谷和明
◎女が惚れる!”本気のイケメン”発掘図鑑

■男性上司に気に入られるには「スカート丈はヒザ上5cm」

 ファッションページでは山田優、西山茉希、香里奈、Nanamiといったお馴染みのモデルたちが、コンサバに少しだけスパイスをまぶした「GINGER」らしい秋冬スタイルを紹介。オンワードやTheory、FREE’S SHOPなど、伊勢丹に行けば揃うアイテムがほとんどです。更に今月はGapのダウン特集を組むなど、高飛車だった以前の「GINGER」と比べるとお財布に優しくなった印象。

 また、「GINGER」の夫婦雑誌「GOETHE」(幻冬舎)とのコラボ企画『男性上司の生声リサーチでわかった! デキる女のスマートお仕事Style』では、「上司や仕事相手からも一目置かれる、好感度の高いお仕事服」を「GOETHE」読者へアンケート。その結果、出された法則がこちら。

「女性部下のスカート丈はヒザ上5cmがベスト」
「泊まり掛け出張は美脚シルエットパンツ」
「得意先との会食はノーカラーJK」

 さすが「仕事が楽しければ人生も愉しい」をキャッチコピーに掲げる「GOETHE」。同じアンケートを雑誌「SPA!」(扶桑社)で行ったら全く違う法則が出来そう……なんてことを考えてしまうほど真面目で新鮮味のない結果となりました。


■紀里谷和明が「人間活動」中の前妻の心を代弁

 山田優の対談連載に、映画『CASSHERN』や『GOEMON』の監督で、宇多田ヒカルの元夫・紀里谷和明氏が登場。現在、映画の脚本を執筆中の紀里谷氏ですが、ここ2~3年スランプであることを告白しています。何やら、創作活動中に一番欲しいのは『「あなたは天才よ」と言ってくれる彼女』だそうで、そういう彼女がいないためにスランプ状態とのこと。これは間違いなく「人間活動」中の前妻へのメッセージでしょう。更に紀里谷氏の愛のメッセージは続きます。

「実際、結婚してたときはいい作品がつくれたと思うし。思考がキレてたよね。だけど今は井戸が枯れちゃって、努力して必死に生み出そうとしてる感じでさ。何が足りない? 何が違う? って考えたら、やっぱり愛だなと」

 そう、愛と人間活動が必要なんですよ。そしてメッセージはまだ続く。

「未来も怖いし、自分が人に好かれてるだろうか、結婚できるだろうか、仕事はどうなるんだろうか(略)そんなことばっかりで、もうみんなヘトヘトなの。(略)雑誌やテレビだって規制ばっかりでさ。(略)そもそも僕たちはたかが動物なのに、あまりにも本能ってものをないがしろにしすぎ」


 前妻の今の気持ちを代弁するような発言。これだけ2人はシンクロしているのだから、元サヤに戻ったら幸せだと思います。そして紀里谷氏は、宇多田の「人間活動」を越えた「動物活動」に勤しみ、本能を開花させたら、スランプから抜け出せるかもしれませんね。

■なぜか上から目線のイケメン特集にムカッ

 長らく「男よりも仕事!」の精神を貫いてきた「GINGER」ですが、生まれ変わった今となっては遠い記憶。今月は「目指せ!スタイルのある大人婚」と題した特集を20ページ以上に渡り展開。「明治記念館」や、「4℃ブライダル専門店」の広告も挟みつつ、結婚の素晴らしさをアピールしています。

 そして後半には、読み物大特集『女が惚れる!”本気のイケメン”発掘図鑑』があり、リードによると「簡単に取材に応じてくれない彼らを口説き落とし、仕事ぶりから、プライベートにいたるまでを包み隠さずに見せてもらった。生きることに真剣な日本男子の姿が今ここに!」とのこと。

 まずスナップ記事に、会社経営者やマスコミ業界人、美容師、佐川急便のセールスドライバーなど、37人の一般人男性が登場。しかし、「能力の限界を自分で作ってしまうのはもったいないこと。どんなときも諦めずに、次のステップに進んでいってほしいです」などと、全員がなぜか頼んでもいない上から目線のアドバイスを女性に贈ってきます。あれ? これって男を品定めする企画じゃないの?

 他にも会社社長による「人生に無駄なことは何ひとつない! 社員が輝ける会社を」といった社訓のようなインタビューがあったりと、イケメンをセクシャルに楽しむ企画なのか、自己啓発企画なのか分かりづらい印象です。もしかしたら、この企画のように理性と本能の間で揺れ動く、キャリア女性特有の”踏ん切りの悪さ”こそが「GINGER」なのかもしれません。

 イケメン特集で男をあさって、4℃でマリッジリングを買って、明治記念館で挙式、という流れが出来上がっていた今月号。ついでに紀里谷和明氏の離婚後の侘しさも感じることができ、まさしく「結婚したくなる号」でした。さて、来月も倉木さんはどこかにヒョッコリ出ているのでしょうか? 今後も見守りたいと思います。
(林タモツ)

『GINGER (ジンジャー) 2010年 12月号』

もう理性なんてふっ飛ばしちゃいな!

amazon_associate_logo.jpg

【この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます】
赤文字化が進む? 「GINGER」の専属読者モデル”GINGERers”が発足
「私の大嫌いな”モテ”という言葉」……連載で山田詠美が「GINGER」のモテ解禁に反発!?
「結婚願望が男たちを不能にした」、賢い女のモテ雑誌「GINGER」が語る語る

最終更新:2010/10/24 17:00