TBS『対岸の家事』がお気に入り登録数で『キャスター』に大差! 20代にも“刺さる”ワケ

2025/05/22 19:00
サイゾーオンライン編集部

サイゾーオンラインより】

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多部未華子(写真:Getty Imagesより)

 ドラマの人気の指標として、近年視聴率とともに重要視されているのが、TVerでのお気に入り登録者数。今年の春ドラマのTVerお気に入り登録者数(5月17日時点)を見てみると、もっとも多いのが約122万のフジテレビ系『続・続・最後から二番目の恋』、続いて約118万のTBS系『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』、そして約86万のTBS系『キャスター』となっている。

【お気に入り数TOP3】(5月17日時点)
1位 121.5万『続・続・最後から二番目の恋』
2位 117.7万『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』
3位 85.6万『キャスター』

 トップ3のなかで、阿部寛主演の日曜劇場『キャスター』に大差をつけて2位につけているのが『対岸の家事』だ。朱野帰子による小説を原作とする同ドラマは、自ら専業主婦を選択し、育児と家事に奮闘する村上詩穂(多部未華子)が、働くママやエリート官僚など、主婦視点では“対岸”にいるような価値観の違う人々と交流しながら、さまざまな生き方があることを浮き彫りにする物語である。

 家事は専業主婦だけのものではないし、専業主婦が家事のことだけを考えて生きているわけでもない。ただし、専業主婦が「絶滅危惧種」であるのは事実で、労働政策研究・研修機構の調査によれば、1980年は全1,728万世帯のうち専業主婦世帯が1,114万世帯と約64%を占めるが、2024年では全1,808万世帯のうち専業主婦世帯は508万世帯と28%に激減。さらに共働き世帯では妻の就業時間も年々増え、2024年では1,300万世帯のうち妻が週35時間以上働く世帯は547万と4割を超える。

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(労働政策研究・研修機構より)

『対岸の火事』が支持を得る大きな意味

 女性もバリバリ働く共働き世帯が多くなった現代において、「意思をもって専業主婦になった」女性を主人公に据えた同ドラマが支持を得るのは大きな意味をもつ。ドラマ評論家でコラムニストの吉田潮氏は、「自分とはまったく異なる立場(=対岸)にいる人でも、相手が困っていたら、詩穂はしなやかに目の前の川を渡る。その姿に気付かされることは多い」と話す。

「専業主婦と聞くと、今なら“夫の一馬力で悠々自適で暮らせる人”というイメージをもつ人もいるかもしれませんが、詩穂の夫は居酒屋店長で特にセレブでもない。詩穂はただ、家庭を運営するためには自分が専業主婦になるべきだ、という合理的かつ矜持をもった判断で美容師を辞めただけの女性なんです。

そしてこのドラマが小気味良いのは、ワーキングママの長野礼子(江口のりこ)や厚労省の官僚で、育休中の中谷達也(ディーン・フジオカ)など、“専業主婦”という生き方に当初否定的な人たちが登場するのですが、それぞれ詩穂の機転によって救われる事件があり、それまで自分がもっていた価値観の扉が開かれる瞬間があること。

詩穂は詩穂で専業主婦ならではの孤独を抱えていて、立場や環境が違えど、人それぞれに悩みはあることが提示されていくさまは、対岸もこっちの岸も、同じような悩みがあるのかもねって思わせられます」(吉田氏)

 詩穂は他人に自分がどう思われようとも相手の生き方は否定せず、困っていれば助け舟を出す。また、礼子の会社では結婚していないことを揶揄される女性が出てきたり、反対に礼子が結婚して子供を産んでいることで嫉妬からの陰口を叩かれたりするが、そうした時、手を差し伸べるのは意外にも「対岸」側の人たちだ。

「ほかにも、詩穂は仲良くなった主婦の先輩・坂上知美(田中美佐子)が一人暮らしをする家にお邪魔しては料理を教わったり、知美にやや認知症の気配が出てくると、娘で仕事に邁進する独身キャリアウーマン・里美(美村里江)が家に帰ってきて詩穂とも交流するようになる。どんな立場であろうとも、救ったり救われたりしてゆるやかに連帯したコミュニティがつくられていく。さまざまな生き方がある今の時代、それはある意味誰もが思っている理想郷なのでは」

 多様性といいながら、子供がいる・いない、既婚・非婚、バリキャリかそうでないかなどで、ともすれば「分断」を煽られがちな現代。『対岸の家事』が描く人間模様は、自分が経験したことが相手にとっても「正しい」わけではないし、経験していないからといって、相手のことを「わからない」と決めつけるのは早計だということを暗喩する。

 ドラマは5月20日で第8回を迎えるなか、不穏な動きを見せているのは詩穂に「のうのうと生きてる専業主婦は淘汰されるべき」といった脅迫状を送りつける女・白山はるか(織田梨沙)の存在だ。しかし人間が抱く黒い感情を発端に、どう相互理解につながっていくかを見せるのが、このドラマの真骨頂。

「自分が専業主婦じゃないので、こんなにこのドラマにハマると思っていなかった」という吉田氏は、「誰も置き去りにしない心地よさがある」と話す。

「他人と比べるとどうしても後ろを振り返りがちなんだけど、全編を通して貫かれるのは、“自分の選択を信じて”というエール。対岸だからこそ見えるものや助けられることがあり、岸のあっちとこっちは、行き来してゆるくつながればいいということを教えてくれます。ラストスパートに向けて、詩穂たちがどうはるかに向き合うのか、どう大団円にもっていくのかは見どころです」

 視聴率こそ『キャスター』が毎回10%超えと安定的な数字を叩き出しているのに対し、『対岸の火事』は5~6%と約半分の数値だが、テレビ視聴データを分析する「スイッチメディア」が作成した性年齢別の視聴傾向グラフを見てみると、F1(20〜34歳女性)やM1(20〜34歳男性)でも一定の視聴率を獲得していることが明らかとなっている。自分の道を模索する人たちの行く先を、そっと照らしてくれるような脚本と演出が、高い支持の秘訣なのかも。

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視聴率トップ5の2025年春ドラマを対象に、性年齢別の視聴傾向をグラフ化したもの(スイッチメディアより)
https://www.switch-m.com/blog/202505drama-ratings

(取材・文=サイゾーオンライン編集部)

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最終更新:2025/05/22 19:00