サイゾーウーマン暮らし食べ物関西進出のスーパー、注目店は? 暮らし スーパーの裏側 なぜ関西に食品スーパー進出ラッシュ? オーケー、ハナマサ、バロー……いちばんの注目は? 2025/01/10 17:00 小林久(元スーパーやまと社長) 食品スーパーオーケー オーケー関西1号店の高井田店(写真:サイゾーウーマン) 食品スーパーに関する疑問や消費者が知らない裏側を、創業105年にあたる2017年に倒産した老舗スーパー「やまと」の元3代目社長で『こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~』(商業界)の著者・小林久氏に解説してもらいます。今回のテーマは「食品スーパー、なぜ関西に出店ラッシュ?」。 目次 ・食品スーパー、なぜ関西に進出ラッシュ? ・オーケー、肉のハナマサほか関西進出したスーパー ・オーケーを迎え撃つ関西実力派スーパー、万代、平和堂、オークワ ・オーケーの開店後、近隣にあるスーパーは売り上げが増えた ・ローカルスーパーや商店街の売り上げが「壊滅的」に? 食品スーパー、なぜ関西に進出ラッシュ? 大阪は東京とは比較できないほど食にお金をかけ、味にもこだわる「目利き」が多い街です。ここで成功を収めることは、すべての商人(あきんど)の夢といえるでしょう。 近年、この関西エリアに、関東や東海地域が地盤のスーパーの進出ラッシュが続いています。すでに飽和状態ともいえるその土地への出店に勝算はあるのでしょうか? なぜあえてその厳しい市場に進出するのか? 今回はスーパー各社の思惑と、それを迎え撃つ地場スーパーの戦略や心境を「元スーパーマーケット社長」の視点から解説します。 関西進出の背景としてまず挙げられるのは、2025年の大阪万博や近い将来の統合型リゾート(IR)の開業など、今後の成長が期待される点です。このような「伸びしろ」が見込める関西エリアに、現状の出店余地が限られてきた関東圏のスーパーが目をつけるのは当然の流れです。人口の多い関西なら、十分に競争できるという自信もあるのでしょう。 オーケー、ロピア、肉のハナマサほか関西進出したスーパー オーケー高井田店、開店を知らせる張り紙(写真:サイゾーウーマン) 近年、関西に進出してきた主なスーパーは以下の通りです。 オーケー(神奈川):24年に初進出。EDLP(エブリデーロープライス)で知られるディスカウントスーパー。 肉のハナマサ(東京):24年に初進出。大阪の激安スーパー「玉出」と業務提携。 食生活♡♡ロピア(神奈川):20年に関西1号店オープン。テレビやSNSで注目される成長率ナンバーワンのスーパー。 その他、バロー(岐阜、10年に滋賀で関西1号店)やトライアル(福岡、06年に京都で関西1号店)も関西に進出済みです。 特に注目すべきは、関西進出が悲願とされてきたオーケーです。オーケーは3年前に兵庫・大阪を拠点として62店舗を展開する(24年4月時点)「関西スーパー」の買収を試みたものの、競争相手に敗北。しかし、関西進出の夢を諦めることなく、24年11月に東大阪市にて初出店を果たしました。 さらに、1~2年で2桁規模の店舗展開を計画しています。おそらく迎え撃つ側もいちばん脅威に感じているスーパーではないでしょうか。 オーケーを迎え撃つ関西実力派スーパー、万代、平和堂、オークワ アメリカのウォルマートを手本にしたと言われるオーケーは、首都圏に156店舗を持ち展開し、業界シェア率2番手以下のメーカーに絞って「大量仕入れ」をして安く売ったり、もし他店のほうが安かったら値下げするという「地域最安値宣言」など、ディスカウント路線。 それでありながら総菜などの品質も高く、果物では「今は美味しくありません」と表示する「オネスト(正直)カード」などにより、顧客満足度ナンバーワンのスーパーです。 地場スーパーとしては、ライフ、万代、平和堂、オークワなどの実力派が迎え撃ちます。本音を言えば「ただでさえ競争が激しいのに、なんで今さら関西に進出してくるんだ……」と恨み節のひとつも言いたいところでしょう(私の想像です)。 自分たちが長年築き上げてきた市場(縄張り)を簡単に「よそ者」に奪われるわけにはいきません。主要取引先や金融機関の協力も得ながら、徹底的に対抗するでしょう。 かたや、出店のオーケー側も失敗すれば評判を落として「再挑戦」も難しくなります。その結果、双方が社運をかけた熾烈な戦いが繰り広げられることになるでしょう。 オーケーの開店後、近隣にあるスーパーは売り上げが増えた? 関西の有力スーパー、万代(写真:サイゾーウーマン) さて、関西のお客さんの特徴といえば、関東に比べて価格に敏感、なんならもっと「値切る」。その半面安くても不要ものは買わない。食べ物はおいしくて当たり前、期待を裏切ったらその噂が一気に広がる情報網を持ち、店の従業員とのつながりも深い。義理人情に厚く、結局は親しんだ店を選ぶ……。 そんな独特な地域で、関東や東海地域のスーパーが生き残れるのか? どうやってお客さんの心を掴むのか?そこがいちばんのポイントでしょう。 スーパー業界では、強力なライバルが自社エリアに進出してくる場合、奪われる客数や売り上げを予測し、少しでも影響が出ないように「対抗策」を講じます。相手が値段で勝負するスーパーならそれを下回る価格にする、または逆に価格競争は避けて、品質や接客、地域特性に合わせた実績データや信用力で勝負するなどさまざまです。 オーケーの開店後、近隣にあるスーパー「万代」や「ライフ」に出店の影響を聞いたところ、どちらも「心配したがかえって売り上げは増えている。自社の強みを生かして今後も差別化を図っていく」と答えていました。 それが本当ならこんな結構なことはありません。関東と関西のスーパーが共存していくことは、地域の消費者にとっても喜ばしいことだからです。 ローカルスーパーや、商店街の売り上げが「壊滅的」に? 一方で、私はこうも考えます。開店当初はお客さんを奪い合う「争奪戦」、双方が利益を削って価格を引き下げている可能性が高い。この状態が長く続くとは思えず、いずれ体力勝負の潰し合いになるのではないかと……。 既存の大型店の商圏内に新たな大型店が出店した場合、安売りやサービス合戦目当てに、より広範囲からお客さんが集まります。開店セールの行列がそれです。その間は売上総額が増えるため「競合店が出ても売り上げが伸びた」という現象が起きることがあります(開店特需)。 しかし開店セール目当ての消費者は次第に来店しなくなりますから、結局は既存のパイを奪い合うことになります。それでも売り上げが増えていくとしたら、大型店以外のローカルスーパーや、商店街の売り上げが「壊滅的」に奪われているということに他なりません。 消費者にとって価格競争やサービス合戦は歓迎ですが、自由競争の陰で泣いている中小店があることも忘れてはいけません。まさに選択肢が広がった消費者側の賢い選択こそが、商圏の活性化につながるものと信じています。 関西で「共存共栄」や「相乗効果」という理想が実現するのか、それとも「やられたらやり返す」「江戸の敵を大阪で」という熾烈な戦争が繰り広げられるのか? 進出ラッシュはまだ始まったばかり。虎視眈々と次の一手を狙う企業たちと、勝負の行方を見極める「目利き」の消費者たち。果たして、生き残りを果たすのはどの店か。25年、関西のスーパー戦争から目が離せません。 小林久(元スーパーやまと社長) 1962年山梨県韮崎市生まれ、山梨県立韮崎高校、明治大学商学部卒。山梨県に最盛期16店舗、年商64億円を稼いでいた創業105年の老舗スーパー「やまと」の元3代目社長。先代からの赤字経営を引き継ぎ「破綻スーパー再生」を軸に短期間で業績を回復した。2014年頃から大手資本の進出により次第に経営が悪化、17年12月に倒産。自身も自己破産へ。自身の失敗から得た教訓を企業にアドバイスしている。著書『こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~』(商業界)『続・こうして店は潰れた』(同文舘出版)。 【スーパーやまと元社長 小林久ホームページ | こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~】 最終更新:2025/01/10 17:00 関西のスーパーめぐり楽しそう! 関連記事 関西進出のスーパー【オーケー】オープン日に行ってみた! 大阪人が驚いた「大満足」の惣菜は?関西おなじみスーパー【万代】、ひときわ目立つ鮮魚コーナーで見つけた絶品は?食品スーパー【オークワ】のイメージ激変!? まるでカフェのデリカ&ベーカリー専門店行ってみた【ロピア】73店で64万パック表示違反品を販売――なぜ問題は放置され続けた?買収騒動の【セブン&アイ】、【ロピア】の快進撃! スーパー業界の勢力図2024 次の記事 『日本一の最低男』初回3.1% >