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スーパーの裏側

【ロピア】【オーケー】現金払いのスーパー、なぜ安い? プリペイドカードの“罠”とは?

2024/11/29 17:00
小林久(元スーパーやまと社長)
ロピア外観(写真:サイゾーウーマン)

 食品スーパーに関する疑問や消費者が知らない裏側を、創業105年にあたる2017年に倒産した老舗スーパー「やまと」の元3代目社長で『こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~』(商業界)の著者・小林久氏に解説してもらいます。今回は「現金払いしかダメなスーパーと、電子マネー・タッチ決済OKの店の違い」について明かします。

目次

スーパーマーケット、現金払いの店が値引きできるワケ
【ロピア】現金払いのみ、【OKストア】現金払いは3%割引の背景
スーパー独自の電子マネーカードに“罠”?
スーパーが、ある意味“客を選び”低価格を実現している

スーパーマーケット、現金払いの店が値引きできるワケ

 コロナ禍以降、スーパーや小売店でのキャッシュレス決済が一気に普及しました。小銭入れどころか財布を持ち歩くことすら面倒になった人も多いのではないでしょうか? 

 しかし、この便利な「キャッシュレス決済」、スーパーや小売店にとっては、両手を挙げて賛成とも言い難い事情があります。

 一般的なスーパーの粗利益率は20〜30%、ディスカウント店なら10〜20%といわれる中、カード会社に払う1%から5%の手数料は、丸々利益を削る大きなコストです。一日100万円のカード決済があれば、1〜5万円の利益がその手数料に消えていきます。

 極端な話、店は現金管理の煩雑さを除けば、お客様全員が「現金払い」してくれたほうがありがたいと思っているでしょう。

 カード払いは多様化した決済方法に対応するサービスの一つですが、そのコストとしての手数料は非常に高くつきます。皆さんが必死に貯めているVポイントや楽天ポイントといったポイントの原資は、元々店がカード会社に払った手数料の中から捻出されていますが、それで店がお客様に感謝されることはありません。

 それなら現金払いのお客様に対して、カード決済の手数料分くらい値引きしても計算は合う、と考えて、そうしたスーパーが出てくるのも自然なことだと思います。

【ロピア】現金払いのみ、【OKストア】現金払いは3%割引はナゼ?

 スーパーにとって、現金払いのメリットとは以下2点が挙げられます。

①クレジットカード会社に手数料を支払う必要がない
②その場で現金を得ることで、即座に資金繰り(キャッシュフロー)に使える

 また、カード決済に対応するシステムの導入や維持管理にもコストがかかりますから、現金払いならそれを全額削減できるというメリットがあります。

 ディスカウントスーパーの「OKストア」は、会員カード提示で現金払いのみ3%割引(酒類を除く食料品)していますが、カード会社に手数料を払うより、3%分をお客様に還元したほうが、自社やお客様にメリットがあると考えているのでしょう。現金払いのみのロピアでも、手数料分を商品価格に上乗せしないことで、お客様の支持を集めているといえるでしょう。

 よく「あの店は安いけど、現金払いのみだから行かない」という話を聞きますが、本来は「あの店が安いのは現金払いだから」と解釈するべきであり、カード決済の手数料を省くことで低価格を実現している以上、その店でクレジットカードが使える日はおそらく来ないでしょう。

 「当店はお客様にご不便をお掛けする分、お値段を安くします。それでいかがでしょうか?」という両者の暗黙の「譲歩」がそこにはあります。

スーパー独自の電子マネーカードに“罠”?

 スーパー業界では、「トライアル」や「業務スーパー」など独自の電子マネーカードや決済用のアプリを導入している会社が目立ちます。クレジットカード決済には手数料がかかる半面、もしその仕組みを自社で運用できれば、店側にとっても大きなコスト削減にもなります。

 スーパーに限らず、皆さんの財布の中にも電子マネーカードば何枚か入っているのではありませんか? お客様はそのカードにお金をプリペイド(先払い)することでポイントやクーポンがもらえ、割引などのサービスが受けられます。

 「プリペイドの罠」とまでは言いませんが、まだ何も買われていないのにお金だけ先にもらえるのですから、少しくらいサービスしても十分勘定は合います(笑)。

 加えて、購入金額や来店回数に応じてサービスがアップするため、リピート客が増えることでしょう。その結果、スーパーは固定客がもたらす貴重な「購買データ」を収集することができるわけです。

 集めたデータは自社の販促活動に役立てることはもちろん、メーカーに提供する場合もあります。それで対価(商品や販促支援金等)を得ることもあるんです。カードやアプリを申し込む際、承諾内容の中に「購買データを第三者(取引先やメーカー)に開示することがあります」という一文があるのはそのためでもあります。

スーパーが、ある意味“客を選び”低価格を実現している

 物価上昇に収入が追いつかない現在、毎日の食費を抑えることで生活防衛している人が多いはず。そのため低価格を売りにするスーパーやドラッグストアが人気を集めるのは必然です。

 スーパーにしても、単に価格を下げるだけでは利益を削る消耗戦となり、お客様に限らず従業員や取引先にも悪影響が及ぶでしょう。そのため低価格でも経営継続できるように、あえてコストがかかるカード決済をやめ(ある意味、店が客を選び)、現金払いに特化することで低価格販売を実現しているというわけです。

小林久(元スーパーやまと社長)

1962年山梨県韮崎市生まれ、山梨県立韮崎高校、明治大学商学部卒。山梨県に最盛期16店舗、年商64億円を稼いでいた創業105年の老舗スーパー「やまと」の元3代目社長。先代からの赤字経営を引き継ぎ「破綻スーパー再生」を軸に短期間で業績を回復した。2014年頃から大手資本の進出により次第に経営が悪化、17年12月に倒産。自身も自己破産へ。自身の失敗から得た教訓を企業にアドバイスしている。著書『こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~』(商業界)『続・こうして店は潰れた』(同文舘出版)。

【スーパーやまと元社長 小林久ホームページ | こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~】

最終更新:2024/11/29 17:00
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