パパ活をして稼ぎながらも、誰かに助けてほしいと思っていた――体を売るようになって1年半後
シェアハウスで暮らす20代女性の、ここに至るまでの想像を超えた物語を聞きます。
目次
・パパ活をして稼ぎながらも、誰かに助けてほしいと思っていた
・“知り合いのおじさん”の怒りを買い、暴力を受けた
古賀凛さん(仮名・29)は、6年前リョウと名乗るホストと出会い、何度か店にいくうちに貯金が底をついた。リョウから逃げて転居もしたが、地元に戻った時にまた連絡してしまい、甘い言葉をかけられてまた店に通うことになった。すると、リョウにつぎ込むお金も毎月最高額を更新するようになる。風俗嬢をして稼ぎ、店への支払いをする日々だった。
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パパ活をして稼ぎながらも、誰かに助けてほしいと思っていた
凛さんはリョウの店に通いつづけながらもどこか冷静な面もあり、毎日の収入と支出をアプリで管理していた。毎月の収入とリョウの店に払った金額がどちらも毎月50万円程度だったのが――もちろんこれも相当な金額なのだが――翌月には80万、90万となり、とうとう150万に達していた。
毎月、体を売って150万稼ぎ、それをそのままリョウにつぎ込む……それにしても、なぜそんな金額になったのか?
凛さんは、リョウに「目標額を決めたい」と要求されて、それに従っていたのだ。凛さんはリョウに支配されていたのかもしれない。
「50万しか無理」と伝えたが、そのうち「70万必要」となった。そんなに稼げないと拒むと、「凛が体を売ることになっても支えるから」「結婚するのに必要だから、来月で店をやめるから、お願い」などと言われると、無理してでも従ってしまう。
「風俗で働き、休みの日にはパパ活をして稼ぐ。そうしてリョウの店に行き、会計額以上のお金を渡していました」
そうしながらも、凛さんは誰かにこの泥沼から救い出してほしいとも思っていた。
凛さんは、警察に助けを求めた。
「でも、『お金を渡したあなたが悪い』『私たちはあなたの話を聞くことしかできません』としか言ってもらえませんでした」
弁護士にも相談したが、相手にしてもらえなかったという。そうこうしているうちに、リョウが提示する“目標額”はどんどん上がっていった。100万稼いだときは、ATMで1回に下ろせる最高額の50万を超えるので、日付が変わった深夜にまたお金を下ろしに行かされた。
「一度、『別れる』と言ったら、リョウが自殺未遂をしたんです。連絡が取れなくなって、夜中に『病院にいる』と連絡が来ました。それからは、リョウの『死ぬ』という言葉がよみがえって怖くなり、リョウの要求を断ることができなくなりました
本当に、リョウが自殺未遂をしたのかはわからない。「証拠はありません」と凛さんは言う。
“知り合いのおじさん”の怒りを買い、暴力を受けた
もう精神的に限界だった。これ以上体を売ることはできない。元彼に80万借りたこともある。リョウは「目標額を達成したら、結婚しよう。そしたら、必ず返すから」と言った。
凛さんは心のバランスを崩し、体重も10キロ近く落ちた。とうとう、闇金に手を出してしまった。すると今度は融資保証詐欺に引っかかった。いわゆる“マネーロンダリング”に加担させられていたのだという。凛さんは口座を凍結され、新しく口座をつくることもできなくなった。
そして昨年、ふとしたきっかけで、住まわせてもらっていた“知り合いのおじさん”の怒りを買い、ひどい暴力を受けた。「今すぐ出ていけ」と怒鳴られ、凛さんは自治体の男女共同参画室が運営している相談窓口に連絡した。
凛さんのこの冷静な判断力……ホストに大金をつぎ込むこととの対極にあるこの力があるのになぜ? 不思議でならない。が、誰しも多かれ少なかれそういう面を持っているのだろう。
ともかく、適切な相談窓口につながったのは幸運だった。自治体の担当者から居住支援をしているNPOを紹介してもらい、シェルターに逃げ込むことができたのだ。風俗嬢をしながらリョウに大金を注ぐようになってから、1年半が過ぎていた。
それにしても、なぜ凛さんは「つらくて苦しい。このままではいけない。リョウから逃げたい」と思い、実際に転居したり、警察や弁護士にも助けを求めたりしながらも、何度もリョウのもとに戻ってしまっていたのか。
――続きは8月18日公開です