闇金の債務者が“ヤクザ”投入? 電話をかけてきた「名古屋のオマタ」の正体
「走行距離も少なめだし、まだ3年落ちで車検の残もあるから、280(万円)は固いです。きれいな車だって、査定業者が褒めていました」
「きれいだったろう? 色が赤じゃなければ、オレが買いたいくらいだよ」
「確かに。やっぱり、白か黒がいいですよね。取り(買取価格のこと)も高いし」
利息や車庫代の支払いが止まれば、その客と付き合う利益はなくなるため、車の評価が高いうちに売却して債権額以上の回収を図ります。
利用者からすれば、到底納得のいく金額ではないでしょうが、名変書類一式を預けているので止める術はありません。車の相場に疎い客には、何年も利息と車庫代を払わせながらも、さして変わらぬ評価に落ちたことにして内入れさせ、頃合いをみて因縁をつけて高額で売却する事例もありました。印鑑証明が届かなかった、車が盗まれたなど、適当な理由をつければ、いつでも好きな時に売却できるのです。
「わしは、ブレイズインターナショナルの荻野さんの代理人でな。名古屋のオマタっちゅうもんやけど、伊東部長さんはおられるかの?」
翌日、3時を過ぎても荻野社長は現れず、その代わりに代理人を名乗る「名古屋のオマタ」という男性から連絡が入りました。ダミ声で脅すように話してくるので、普通の人ではなさそうです。そのことを伝えてから電話をつなぐと、スピーカーをオンにして応答した伊東部長に対して、電話口のオマタは先ほどと同じように自己紹介を始めました。
「代理人って、オマタさんは弁護士ですか? 荻野社長は、どうしたの?」
「名古屋のオマタじゃ。それでわかるやろ。荻野はウチで面倒見ている奴でのぉ。おたくに詰められてるって、泣き入れてきてるんよ。車の件、ちょっと待ってやってくれんか」
周囲で聞く社員のみんなは、どこか芝居がかったオマタさんの口調がツボに入ったようで、小バカにするようにクスクスと笑っています。
「もしかして、看板の話をされています? ○×会のオマタさんってことで、よろしいですか?」
「おお、そういうこっちゃ。わかるやろ」
「そういう話なら、折り返しますね。少々お待ちください」
「わしは気が長いほうじゃないけん、はよしてな」