闇金の債務者が“ヤクザ”投入? 電話をかけてきた「名古屋のオマタ」の正体
こんにちは、元闇金事務員、自称「元闇金おばさん」のるり子です。今回は、担保車両の売却決済時に登場したエセヤクザについて、お話ししたいと思います。
「伊東部長、ブレイズインターナショナルさんの印鑑証明、残り半月です。今月分の金利と車庫代も入っていません」
「ああ、わかっている。車内は禁煙で飲食禁止、ペットも入れるなとか、いろいろうるさい神経質な客でさ。ずいぶん大事にしている感じだけど、約束を守れないなら仕方ないよな。そろそろ詰めるか」
印鑑証明の期日管理は、私の仕事。基本的には3カ月ごとの徴求が原則ですが、正規品(名変可能な車のこと)の車両を担保にしている利用者については、売却決済時の名義変更に支障が出るため2カ月ごとに徴求しなければなりません。
ブレイズインターナショナルに対しては、月3分の金利のほか毎月の車庫代3万円を支払う約束で200万円の貸付があり、会社名義であるBMW5シリーズの真っ赤なワゴンを担保に預かっていました。印鑑証明のほか、金利と車庫代の支払いも半月ほど遅れているため、その社名は遅延客として白板に大きく赤字で書かれています。
早速に、スピーカー機能をオンにしてブレイズインターナショナルの荻野社長に電話をかけた伊東部長は、相手が応答すると同時に言いました。
「社長、いまどこにいるのよ? 金利と車庫代は半月も遅れているし、印鑑証明も切れちゃうから、もう売却決済してもらえって上から言われちゃってさ。それで大丈夫?」
「ちょっと待ってください。本当にごめんなさい。大事な車なので、絶対に売らないで! 600万円で買った車を、たった200万円で流されちゃあ、かなわないですよ」
「じゃあ、今日いっぱい待ってあげるから、9万円と印鑑証明を持ってきてよ。何時に来ます?」
「いや、すみません。いま地方にいて、どうしても明日になっちゃうんですけど……」
明日の午後3時までに必ず来社するという荻野社長に、これが最後だと告げて電話を切った伊東部長は、念のために担保車の評価を再確認するよう藤原さんに命じました。