『ザ・ノンフィクション』新宿二丁目の深夜食堂、第1弾あらすじと“名物ママ”の人物像
※初出:2023年3月21日
日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。3月19日は「新宿二丁目の深夜食堂 後編 ~名物夫婦 53年の物語~」というテーマで放送された。
「新宿二丁目の深夜食堂 後編 ~名物夫婦 53年の物語~」あらすじ
新宿二丁目の雑居ビル2階にある、深夜0時から朝9時まで営業の深夜食堂「クイン」。調理担当の夫・孝道とホール担当の妻・りっちゃんという、ともに77歳の夫婦で切り盛りしており、1970年の開業から50年間以上も、新宿の街を見つめてきた。すでに飲んできた客も多いはずだが、「クイン」で定食や総菜を食べながら飲み直す人も多く、閉店前の朝には空になったビール瓶が並ぶ。
「クイン」の店内は昔ながらの純喫茶とスナックを足して2で割ったような雰囲気で、日替わり定食は400円と格安だ。昨今の食材の高騰で、飲食店の価格上昇も話題になっているが、番組スタッフが「クインも値上げをしないのか」と尋ねたところ、孝道は「定食だけで(酒を飲まずに)来るお客さんを見るとさ、金がないんだなと思ってさ」と話し、経営は家賃を賄えれば良い、という方針のよう。「今はね、運動のために(店を)やっている」と笑う。
りっちゃんはいざ店内に入れば威勢よく場を取り仕切るが、2階にある店に向かうための階段の上り下りもつらそうで、夫婦は引退も考えている。しかし、客からは続けてほしいと懇願されている。
店を訪れる客もさまざまだ。二丁目でバーを経営する65歳のあきは40年近く店に通う常連で、「クイン」は5品おまかせ1万円のあき専用裏メニューも用意。裏メニューには大きな金目鯛一匹丸ごとの煮つけやステーキも含まれおり、豪勢だ。
43歳のみなみも20年来の常連で、本業は六本木の老舗ショーパブ「金魚」のダンサー。新型コロナウイルスの感染拡大でショーの仕事が激減したことや、その時期に母親を自宅に呼び寄せたことなどもあり、介護の仕事に興味を持ち、今はダンサーと介護士の二足の草鞋を履く生活を送っている。
40歳の勇輝は、母親の死後、父親との関係が悪化したことを悩んだ際、りっちゃんに相談し、ずいぶん気が楽になったようだ。社交ダンスを始めた勇輝の踊りを見たいとりっちゃんは話すが、足が悪いりっちゃんにスタジオまで来てもらうのも悪いと、勇輝は社交ダンスをスタジオで撮影。りっちゃんは「クイン」で目を細めながらその動画を眺めていた。
孝道が78歳の誕生日を迎え、あきはイチゴのホールケーキをプレゼントする。りっちゃんはスニーカーを贈り、その後、2人は新宿の街でデートを楽しんでいた。「クイン」は来年、店舗の賃貸契約の更新があるが、店の進退はそのときの孝道、りっちゃんの体調次第とのことだ。
「新宿二丁目の深夜食堂 後編 ~名物夫婦 53年の物語~」レビュー
一見かかあ天下に見える夫婦の絶妙なバランス
孝道はりっちゃんのことを「りっちゃん見ててあれでしょう? 素晴らしい人間だと思うでしょ?」「なかなかいないよ、ああいう女は。いい女だなと思うよ」とベタ褒めしていた。日本の78歳でこんなに妻のことを褒める夫は稀有といっていい。あまりに褒めるので、逆に何かやましいところがあるのではと邪推してしまうほどだ。
最初はパワフルなりっちゃんのかかあ天下っぽく見えたが、孝道は「尻に敷かれた」感じはしない。「かかあ天下な妻」は「尻に敷かれた夫」とワンセットにとらえられがちだが、孝道はマイペースで飄々としており、気弱な雰囲気はまったくない。
そしてよくよく見ていると、りっちゃんも孝道を尻に敷いている感は不思議とない。番組の最後の新宿デートでキャベツを食べていたときには、「クイン」で孝道が出すキャベツのほうがおいしいと、可愛いことも言っていた。
なお、「クイン」が値上げをしないのも孝明の意思のようで、りっちゃんは値上げ賛成派だったよう。りっちゃんと孝道は、絶妙なパワーバランスを保ったいい夫婦に見えた。