ビッグモーター社と同レベル? 闇金社員までだました、“悪徳”中古車販売店
店舗の状況確認に向かった2人が事務所に戻ると、ほどなくして車両移動を終えた藤原さんと小田さんも帰社され、各車のキーが佐藤さんに手渡されます。
「バッテリーは2台とも大丈夫だったんですけど、ポルシェの調子が悪かったですよ。エンジンが回らないというか、ぎこちない感じがしました」
「なんでだろう? パンクかな?」
「そう思って確認したんですけど、大丈夫でした。どこか壊れているのかもしれないですね」
「評価割れしなきゃいいけどな……」
いつもお願いしている買取業者の査定担当者が事務所に現れ、早速に実車の査定が行われると、査定を終えた買取業者の口から意外な結果がもたらされます。
「申し訳ありません。お見せいただいた車両は、買取りいたしかねます」
「はあ? なんで?」
「ポルシェは水没車、190Eはニコイチ(事故でダメになった同車種2台分をつなげて1台にした車)の車で、印鑑証明(ローン会社のもの)も偽造されたものですよ。こちらをご覧ください」
ポルシェのメンテナンスノートを開いた査定担当者が、水没と明記されたページを提示すると、佐藤さんの顔がみるみると紅潮していきます。
「こちらも、ご覧ください」
さらに、ローン会社のものとされる印鑑証明を照明にかざして透かしが入っていないと指摘されたところ、傍らで話を聞いていた伊東部長が顔面蒼白状態の佐藤さんに言いました。
「佐藤君、君の確認不足だな」
「はい、申し訳ございません……」
「早く社長に報告したほうがいいよ。オレも一緒に行ってあげるから……」
結局、水没したポルシェは部品屋に買い取っていただき、名変できなくなったベンツはとかし屋の西本さんに頼んで売却。一部の債権は回収されましたが、そのほとんどが焦げ付いてしまいました。青ざめた顔で社長室に入る佐藤さんの姿は痛々しく、後ろから抱きしめてあげたかったです。
※本記事は事実をもとに再構成しています
(著=るり子、監修=伊東ゆう)