コラム
“中学受験”に見る親と子の姿

「ボリュゾ」の中学受験はなぜ大変? 「絶望しかなかった」平均偏差値49の母の実体験

2023/11/11 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

写真ACより

 今年も「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補が発表され、年末を感じる季節を迎えている。どの業界にも、毎年、特有のはやり言葉や造語が登場するものだが、もちろん、中学受験界も例外ではない。

 中学受験生の親の間では、最近は「ボリュゾ」という言葉が流行語のようになっているのをご存じだろうか。

 「ボリュゾ」とは「ボリュームゾーン」の略で、「人数の一番多いゾーン」のことを指す。中学受験界では、主に日能研や四谷大塚が出す偏差値表で、45~55あたりの中間層にいる子どもたちのことを表す言葉として使われており、近年、定着しつつあるワードだ(偏差値は相対評価なので、母集団が変われば偏差値も変わる。ゆえに、模試会社によってもボリュゾの数値には違いがある)。

 中学受験生の親を悩ませているのが、ズバリ「我が子の偏差値」なのだが、「ボリュゾ」にいる子の親のそれは深刻だ。なぜなら、「ボリュゾ」の子は、試験のたびに偏差値が大きく変わり、なかなか安定しないのが常。調子の良い時は、上位校レベルの偏差値60に届きそうなのに、悪い時には下位校に位置する40前後になるということも稀ではなく、志望校の選択が難しいのである。

 現在、中学1年生の明奈さん(仮名)の母である美穂さん(仮名)も、「ボリュゾ」の受験を経験した人物。中学受験を振り返り、「まるで“パズル”のようだった」と表現した。

「小6当時、明奈の偏差値は平均すると49くらい。でも、それはあくまで“平均”で、58の時もあれば、反対に40という時もあって、本当に併願校探しには苦慮しました。良い偏差値を取ると『これから上がっていくかも!?』と期待してしまうのですが、その次の模試では大幅ダウンの繰り返し。塾の先生に相談しても『この時期からは、全員必死で勉強していきますから、偏差値って下がることはあっても、なかなか上がらないんですよ。「ボリュゾ」でキープできているならば立派なものです』と言われる始末で、絶望しかなかったですね……」

 そこで美穂さんは、勉強は子どもに任せて、親ができることをしようと思い直したという。

「明奈は勉強に身が入らないなんてことはなく、むしろ、課題はコツコツとやっていました。ちゃんとやっているのに、相対評価である偏差値は上がらない。ならば、明奈に『もっと頑張れ!』というのは違うと思ったんです。親の役目は明奈に合った学校に行かせてあげること。それには、数多くの学校を見て回らなくてはならないって思いました」

 美穂さんは、私立中学の集まる各合同説明会はもちろん、学校主催の説明会にも足繁く通うようにしたという。

「もちろん、低学年の頃から、暇を見ては足を運んでいたんですが、当時は夢一杯で高偏差値校を中心に見ていました。小6からは新たな気持ちで、学校探しを仕切り直したって感じですね」

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