新月9『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』主演! ドラマ評論家が語る“ヤバい二宮和也”の魅力とは?
ちなみに、堤氏は当時、『ケイゾク』(1999年、TBS系)や『池袋』、そして『TRICK』(2000年、テレビ朝日系)といったヒット作を立て続けに演出し、飛ぶ鳥を落とす勢いの映像作家だった。『ハンドク!!!』では、「医者は患者の体を治すことはできても、心を救うことはできない」というエピソードが、乾いた映像とブラックな笑いを通して繰り返し描かれる。
『堤っ』(角川書店)に収録された『ハンドク!!!』プロデューサー・植田博樹氏と堤氏の対談の中で、堤氏が20代の時に体験した亡き妻の闘病生活が、本作を作るきっかけだったと植田氏は語っている。高額の医療費を払えるかどうかで医者の態度が豹変する経験をした堤氏は、すべてが終わった時に「死に対して無感情」になったという。
当時、堤氏が感じた「人の命は平等ではない」「受けられる医療には貧富の格差がある」という辛辣な死生観は、『ハンドク!!!』の根底に流れているテーマだ。すっかり人気俳優となった高橋一生がゲスト出演した、第7話は特に象徴的だといえる。
ノブは動脈瘤で盲目となった親友・南野風(高橋)を、SMHで診てもらえないかと一番に持ち掛ける。その後、一番がダメ元で院長の新堂一子(沢村一樹)に相談すると、風の入院を承諾。しかし、新堂の目的は、SMHを取材するジャーナリスト・筑前哲一郎(升毅)の息子で、心臓病の正一郎(郭智博)のドナー候補者に、風を仕立てること。正一郎と仲良くなった風は、“正一郎のために、自分の心臓を移植してくれ”という遺言を残して急逝。新堂は風が亡くなるとすぐに手術を行い、正一郎の心臓移植を成功させた。
その後、風に遺書を書くよう仕向けたのが新堂だと知ったノブは、SMHに潜り込み、新堂を背後からナイフで刺す。この場面のノブは、今風に言うと「無敵の人」の凶行を思わせる。ノブのようなキレた若者を演じさせると、当時の二宮は水を得た魚のようだった。