女優・久保田紗友は「とにかく真面目で視野が広い」——映画『Love Will Tear Us Apart』宇賀那健一監督が語った“魅力”
――これまでさまざまなジャンルの作品を生み出してきた宇賀那監督ですが、どのようなところからストーリーのアイディアを思いつくのですか?
宇賀那監督 デビュー作の『黒い暴動』(16年)は、元ガングロギャルたちの物語なんですが、その前に撮った自主映画のオーディションに参加してくれた木夏咲という女優が、地元の山形でガングロギャルをしていたそうで、当時のエピソードを聞いて、ストーリーが思いついたんです。彼女いわく、山形の一部のガングロギャルの間では“階級”があって、自分のレベルを上げるためには、河原で決闘して相手のルーズソックスを奪い取るか、神経衰弱で勝負するんですって。それを真顔で話していたこともあり、「ギャルならではの文化って面白いな」と興味が湧きました。
また、娯楽が禁止された日本で音楽に出会った若者たちの姿を描いた『サラバ静寂』(18年)は、16年に風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)が改正されたことが製作のきっかけです。
『魔法少年☆ワイルドバージン』(19年)は、「童貞のまま30歳を迎えると魔法使いになれる」という都市伝説をモチーフにしていて、飲みの席で言った冗談がすごくウケたので、「これを映画にしたらイケるな」と(笑)。だから、映画を作るアイディアはいろんな瞬間に生まれています。
――今回の『Love Will Tear Us Apart』を拝見し、恋は人を狂わせるとあらためて感じました。恋をすればするほど、その人しか見えなくなるというか……。
宇賀那監督 そうなんですよね。本人たちは至って真面目ですが、一歩引いて考えると、キャラクターたちの行動は、狂っていないとできないことだし、愛があるからこそできることでもあるんです。
――そういった意味では、この作品はホラー映画が苦手な人でも見やすい作品なのではないかと思いました。日本での公開に先駆け、『ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭』にてワールドプレミアも行われましたが、海外の方の反応はいかがでした?
宇賀那監督 「そうだよね」って納得した部分と、「そうなんだ」と驚いた部分がありました。前者についていうと、海外ではスプラッターシーンで笑いが起きるんです。『ポートランドホラー映画祭』でグランプリをいただき、そのプログラマーが上映中の様子を動画に収めて送ってくれたんですが、やはり、スプラッターシーンで爆笑と拍手が起きていました。これは海外ならではの反応かなと思います。これはある種、映画のリテラシーが高いからこそ起こる文化でもありますよね。
一方で、後者については、海外の方のレビューを見ると、わりと真面目な感想が多くて、「いじめとかネグレクトとか、貧困から生まれた悲劇へのアンサーだ」という声もあり、そういった捉えられ方もするんだなと意外に感じました。
――では最後に、「ぜひここを見てほしい」というポイントがあれば教えてください。
宇賀那監督 この映画は、僕の中では、「超純愛映画」として作りました。もちろん、ホラーシーンもないわけではありませんが、あくまでジャンルの一つとして、その要素を借りているだけなので、ホラー映画は苦手という方でも楽しんで見ていただけると思っております。新しい愛の形を描いた作品だと思いますので、好き嫌いは分かれるかもしれませんが、ぜひ劇場に足を運んでいただけたらうれしいです。
『Love Will Tear Us Apart』
公式サイト:https://lwtua.jp/
監督:宇賀那健一
脚本:宇賀那健一 渡辺紘文
出演:久保田紗友、青木柚、莉子、ゆうたろう、前田敦子(特別出演)、高橋ひとみ、田中俊介、麿赤兒、吹越満ほか
プロデューサー:當間咲耶香 宇賀那健一 共同プロデューサー/編集:小美野昌史
制作プロダクション:VANDALISM
製作:「Love Will Tear Us Apart」製作委員会
配給:VANDALISM/エクストリーム
2023年/87分/シネスコ/日本/カラー/DCP/R15+
(C)『Love Will Tear Us Apart』製作委員会