コラム
“中学受験”に見る親と子の姿

小6初夏から中学受験は遅すぎる? 娘が伝統私立校に“駆け込み”で合格できたワケ

2023/08/26 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

RioMatさんの写真ACからの写真

 中学受験は小学3年生の2月から準備を始めるのが一般的。しかし中には、6年生から参入するご家庭もある。この遅れて中学受験に参加することを、業界用語で「駆け込み受験」と呼ぶ。一般論ではあるが、駆け込み受験はハンデありきのスタートになりがちだ。

 中学受験は、難関校になればなるほど、入試で学習指導要領を逸脱した問題を出す。受験生は、そうした問題を解くための学力を付けなければならないわけだが、駆け込み受験組はその準備期間がほかの受験生より圧倒的に短い。ハンデ戦とわかった上で参入するには、当然それ相応の理由と覚悟が必要だ。

 しかし、「早いうちから中学受験の準備をしていれば、もっと楽ができたかもしれませんが、『どうしても合格したい!』という意志があれば、乗り越えられるものだとも思います」と語るのは、現在、中学3年生の心美さん(仮名)の母、美保さん(仮名)である。

 心美さんが中学受験を決意し、中学受験塾に入塾したのは6年生の初夏のことだった。

「うちは子どもが3人いまして、私立中学なんて贅沢なことはまったく考えていなかったんです。でも、『この道しかない!』と腹をくくって受験を決めました」

 心美さんはもともと、学校が大好きな元気いっぱいの少女だったそうだが、その学校生活は6年生で一変したという。クラス替えが行われ、新しい担任のもと新学期がスタートしたものの、すぐにコロナ禍が発生した。

「緊急事態宣言で、しばらくの間、休校だったこともあり、クラスのまとまりはなかったと思います。その後、登校が再開されたのですが、心美のクラスメイトがどうやらコロナに感染したといううわさが流れて……。誰だって、なりたくてなる人はいないのに、その時の学校の対応は本当にひどいものでした。学年集会の席上、学年主任の先生が『この学年でコロナに感染した児童がいます』と発言したというんです」

 この発表を受け、子どもたち、そして親たちは“犯人捜し”をするかのように、その日の欠席者の把握に努めたらしく、結果的に欠席していた心美ちゃんのクラスメイトが“ターゲット”になったそうだ。

「その子が本当にコロナだったのかもわかりません。でも、結果として、その日以来、学校に来られなくなったんですね。どうも、子ども同士のLINEグループの中で、仲間外れのような扱いを受けてしまったようで……。心美には、それが理不尽にも恐怖にも感じる一件になったようで、まったく関係ない部外者ではあるのですが、心美まで学校に行くのを嫌がるようになったんです」

 コロナ禍でなくても、特定の子を仲間外しにするのは、小中学生の女の子同士の中ではよくある話かもしれない。しかし、心美ちゃんのように優しく、繊細な心を持つ子は、他人の痛みまで自分事のように受け止めてしまうことがある。

「心美は心ない発表をした学校の先生にも、意地悪をしたクラスメイトにも不信感しかなく、『この人たちと同じ空間にいたくない』と言いだしたんです。私も、コロナ禍を言い訳に、ロクに授業もしないばかりか、学級崩壊状態になっているクラスをどうにかしようという心意気もない学校には絶望していました。このまま地域の公立中学に入学しても、同じメンバーなのかと思うと、心美が完全な不登校に陥る可能性を否定できなかったんです」

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