『スラダン』『コナン』が興行収入100億突破の一方、ほぼ話題にならなかった“超人気アニメ”映画とは?
異例のロングランを記録しているアニメーション映画『THE FIRST SLAM DUNK』(2022年12月3日公開)が、今年7月31日時点で興行収入150億円を超えたと伝えられ、ネット上のファンが沸いている。昨今、日本映画界では、アニメ作品の盛り上がりが顕著だが、「“超人気アニメ”の最新映画なのに、ほぼ話題になっていない作品がある」(映画誌ライター)という。
大ヒット中の『THE FIRST SLAM DUNK』は、漫画家・井上雄彦氏が「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載し、アニメ化も果たした人気作『SLAM DUNK』の最新映画。原作の主人公は桜木花道だったが、今作は宮城リョータを中心にストーリーを展開。7月31日は宮城の誕生日ということで全国各地で特別上映が実施され、その記念すべき日に興収150億円を突破。8月末で上映終了が発表されているものの、それまでにさまざまなイベントが用意されていることもあり、まだまだ成績を伸ばしそうだ。
「今年封切られたアニメ映画にも好調な作品が多く、例えば、4月14日に公開された『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』は、人気キャラクター・灰原哀(林原めぐみ)にスポットを当てたストーリーで、7月30日時点で興収134億円を超えたと伝えられています。この数字は歴代劇場版の中でトップの成績です」(同)
なお、日本公開映画の歴代興収ランキング(興行通信社調べ、以下同)を見ていくと、『THE FIRST SLAM DUNK』は現在第14位、『名探偵コナン 黒鉄の魚影』は24位。そして25位につけているのが、今年4月28日に公開された『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』だ。
「任天堂と『ミニオンズ』シリーズなどで知られるイルミネーションが共同制作した同作は、日本での洋画アニメ史上最速となる公開31日で興行収入100億円を突破。7月30日時点では133億円超えという大記録を刻んでいます」(同)
『セーラームーン』最新アニメ映画、前編はトップ10圏外の寂しい結果
このように複数のアニメ映画が大ヒットを飛ばす中、ほとんど話題にならなかったのが、『美少女戦士セーラームーン』の最新作だという。タイトルは『劇場版 美少女戦士セーラームーンCosmos』で、6月9日に前編、同30日に後編が公開された。
原作は、少女漫画誌「なかよし」(講談社)で1992年2月号~97年3月号まで連載された『美少女戦士セーラームーン』(作・武内直子)。92年にテレビアニメ化を果たし、一大旋風を巻き起こした後、2014年からは新作アニメシリーズ『美少女戦士セーラームーンCrystal』がスタート。こちらは第3期まで放送され、その後、21年に劇場公開された第4期『Eternal』(前後編)を経て、今作で完結を迎えることになったが……。
「『Cosmos』は原作の最終章をもとに描いた作品で、後編に登場するセーラーコスモスのボイスキャストに女優・北川景子が抜てきされたことも話題に。ちなみに北川は2003~04年にかけて放送されたドラマ版『美少女戦士セーラームーン』(TBS系)で火野レイ/セーラーマーズを演じていました」(同)
そんな『Cosmos』だが、前編は公開初週から「国内映画ランキング」(全国週末興行成績)のトップ10に入らず、後編は初登場9位に入るも翌週には圏外へ。ちなみに『THE FIRST SLAM DUNK』『名探偵コナン 黒鉄の魚影』、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』はいずれも初登場1位を獲得していた。
「『Cosmos』はそもそも上映館数が200スクリーン程度と少なめではありましたが、後編がかろうじて9位に入った同週のランキングを見ると、6位には上映開始時は173スクリーンで上映された、公開7週目の『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』がランクイン。かつては国民的アニメと称された『美少女戦士セーラームーン』の最新映画としては、かなり寂しい結果といえるでしょう」(同)
『セーラームーン』最新アニメ映画はなぜ盛り上がらなかったのか?
上映館数の問題ではないなら、『Cosmos』はなぜここまで盛り上がらなかったのか。
「その理由の一つとして、公開時期にほかの注目作の上映が重なったことが挙げられるでしょう。前編が公開された6月9日はディズニーの実写ミュージカル『リトル・マーメイド』も上映を開始し、初登場1位に。また、この時まだ『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が2位につけていましたし、3位は上映2週目の是枝裕和監督作『怪物』(6月2日公開)がランクインするなど、“強敵”ぞろいだったんです」(同)
後編公開日かつ月野うさぎの誕生日でもあった6月30日には、漫画家・和久井健氏が「週刊少年マガジン」(講談社)で連載していた『東京卍リベンジャーズ』の実写映画シリーズ『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編-決戦-』の上映が始まり、初登場1位を獲得。同日公開の世界的大ヒットシリーズの最新作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』が2位につけ、3位は『リトル・マーメイド』、4位は『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』……と、上位はやはり激戦となっていた。
「『Cosmos』が盛り上がらなかったのは、『原作を知らないファンにはとっつきにくい内容だったから』という理由もありそう。実際、一部ネット上では『原作やテレビアニメシリーズを見ていないと楽しめないかも』『ファンには懐かしいけど、そうじゃないと理解できない内容なのでは』という指摘が上がっています。例えば『THE FIRST SLAM DUNK』は、シンプルにバスケットボールの試合が物語の主軸であったことから、原作を知らない層も十分楽しめたはず。しかし、『Cosmos』は世界観やキャラクターの設定などを知らなければ、気軽に『見てみよう』とならないのではないでしょうか」(同)
その半面、往年のファンからの評判も「決して高くない」(同)という『劇場版 美少女戦士セーラームーンCosmos』。この結果を制作陣はどのように受け止めているのだろうか。