サイゾーウーマン芸能お笑い芸人大久保佳代子、“使い捨て”でない理由 芸能 時代を映す女性芸人 大久保佳代子、男性中心のテレビで担ってきた「役割」と“使い捨て”にされない理由 2023/06/29 18:00 飲用てれび(テレビウォッチャー) 芸能ウラ情報 大久保佳代子は、男性中心のテレビで「隙間の役割」をこなしてきた 複数の女性芸人に「女芸人という生き方」についてインタビューする番組に大久保が出演したときのこと。彼女は「ちょっとまず私が、芸人っていう肩書に対しては非常に、そんな……って思うところがありまして」と、自身が芸人代表のような立場でインタビューを受けることへの違和感を口にした。そして「笑いの正体」について尋ねられ、次のように答えた。 「その現場の空気を読んで、何が求められてるかを理解し把握して、それに沿って発言なり動けるようにするのは、今まで心がけてきたことかなっていう気はしますけどね」(『笑いの正体』NHK総合、22年7月5日) 同番組ではほかに上沼恵美子や友近、横澤夏子、Aマッソ・加納、ゆりやんレトリィバァなどがVTR出演していた。彼女らも同じように「笑いの正体」について聞かれていたが、その回答は「生きざま」(上沼)、「麻薬」(友近)、「幸せ」(横澤)、「探す」(加納)、「エクスタシー」(ゆりやん)。 これらと比べると大久保の「空気」という回答は異質である。ほかの女性芸人たちがどちらかといえば主体を自分に置き、その自分の生き方や幸福、快楽や探究などを笑いと結びつけているのに対し、大久保は笑いの主体を自分の外に置く。なお、相方の光浦も似たようなことを言っている。 「コントを作ることが好きとか、明確なことがあったらいいと思うの。でも、テレビタレントって、やっぱり要求されたことをいかに早く嗅ぎ取るかとかも仕事だったりもするもんで。なんて言ったらいいのかな、やっぱり人様の座標軸ありき」(『ボクらの時代』同前) 空気を読む。要求を嗅ぎ取る。その場の座標軸を読み、自身のポジションを確認する。“セクハラ”や“下ネタ”といった表向きの武器を支えていた本当の武器は、そんな空気読みの能力なのではないか。 そして、そんな武器を彼女が磨いてきたのは、男性が中心的な役割を果たす現場だった。女性芸人は「隙間の役割」をこなすのが仕事だったと大久保は語る。 「(『めちゃイケ』は)スタッフも男が多いし、メイン的な役割するのはナイナイはじめ男性が多いし、たまに役割いただきますけど、そしたらそこに入れられた女性芸人は、隙間の役割をちゃんとこなすのが仕事かなぐらいに思ってました」(『笑いの正体』同前) 彼女からは(そして光浦からも)、お笑い芸人やバラエティ番組の世界は男性のものである、との言及が何度か行われている。それがどこまでが事実の報告なのか、諦念なのか、それとも皮肉なのかはわからないが、「基本バラエティって男芸人で成立するものと私は思ってるんですよ」というように(『とんねるずのみなさんのおかげでした』フジテレビ系、15年2月26日)。あるいは―― 「幼少期、漫才ブームを見たり、たけしさんの『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)を聞いたりして、笑いだけを目的にやってるっていうのがカッコいいって思ってたんで。どっかでだから、ホント偏見ですけど小さいときからのアレで、どっかで笑いは男のものってね、ちょっと思ってるところがあるんですよね」(『笑いの正体』同前) 先に、芸人として語らされることへの違和感を大久保が語った場面を引用した。彼女の違和感の理由は、一つには、自分は芸人というよりタレントとして活動してきたという謙遜があるのだろう。 が、別の理由も読み取りたくなる。男性を中心に構成されてきたお笑いの世界、つまり“芸人”とは暗に“(男)芸人”のことであった世界をサバイブしてきた者として、芸人という肩書と自身の輪郭がうまく重ならない。そんな理由も、当人が意図しているかどうかは別として、ありはしなかっただろうか。 半“素人”のような芸人として世に出てくる。リスクをはらんだ“下ネタ”や“セクハラ”を頻繁に繰り出す。“(男)芸人”のなかで“女芸人”として立ち回る。いずれも不安定な状況を、大久保はその高い空気読みの能力でサバイブしてきた。時代が移り変わっても彼女はそのバランス感覚で乗り切っていくのではないか。実際、以前よりも“下ネタ”などが穏健なものになった彼女のメディア出演が減っているようには今のところ見えない。 「使い捨てなのよ、タレントなんて」というコメントは確かに常套句だ。しかし、そのような聞き慣れた理解しやすいフレーズを番組上での自身の役割を理解しながら後輩タレントに“説教”っぽく繰り出し、わかりやすく笑いにつなげるところに、まさに彼女が簡単に「使い捨て」されなかった理由が含まれているのだと思う。 売れっ子のヒコロヒー、『THE W』『R-1』で優勝しないほうがいいワケ 今、注目されている女性ピン芸人の1人がヒコロヒーだ。近畿大学時代、先輩に誘われて学園祭のお笑いライブに立ち、各芸能プロダクションからスカウトされ、現在の松竹芸能を...サイゾーウーマン2023.05.19 前のページ12 飲用てれび(テレビウォッチャー) 関西在住のテレビウォッチャー。 X:@@inyou_te 最終更新:2023/06/29 18:00 空気を読んでないようで読んでる 関連記事 松本人志は、なぜ批判されるのか? YouTube再生回数に見る「数字を持ってる」事実『ラヴィット!』相席スタート・山添寛は実質「降板」状態――TBS社長謝罪も一件落着ならず中田敦彦に批判された松本人志、「連絡待ってる」ツイートは優しさか哀れみか?和牛・水田信二、結婚発表で掘り起こされる「DMナンパ」流出騒動とは?売れっ子のヒコロヒー、『THE W』『R-1』で優勝しないほうがいいワケ 次の記事 『テレ東音楽祭』に不祥事タレント続々 >