闇金の本当にあったコワい話――社員を青ざめさせた、債務者の“呪詛”とは?
こんにちは、元闇金おばさんことるり子です。以前、全10回の短期連載を行いましたが、今回、あらためて新連載としてスタートすることになりました。
金融屋の事務員として生活していた当時、通勤先の本社事務所は、都内有名繁華街の最寄り駅から徒歩3分くらいのところにありました。事務所の対面には、有名ホテルがそびえ立っており、心と財布に余裕があるときには早起きして、豪華な朝食ブュッフェを満喫してから出勤したものです。
男性営業社員のみなさんも、商談の際には案件を抱えるブローカーとラウンジで耳を寄せ合い、クルマを担保に預かるときにはホテルの地下駐車場で引き渡しを行うなど、頻繁に出入りを繰り返していました。少し潔癖なところがあって、日々のトイレをホテルで済ませていた伊東部長は、それをカムフラージュするためなのか、ランチや接待でもよく使っていたと記憶しています。
とある冬の日のこと。始業前の朝礼中に、伊東部長の担当するお客さんから電話がかかってきました。ここ2年ほど取引のあるデイリー広告社の中尾社長(仮名)です。
「お世話になります。ただいま朝礼中ですので、すぐに折り返しいたします」
「いや、ちょっと急ぎなので、今すぐにつないでください。お願いします」
おそらくは、今日の当座が足りていないのでしょう。切羽詰まった様子なので、朝礼中の部長にメモを渡すと、すぐに社長が言いました。
「出てやれ」
「はい、失礼します」
朝礼が中断され、社員の皆が注目する中、電話のスピーカー機能をオンにした部長が、みんなの前で会話を始めます。
取引先の倒産で切羽詰まった債務者のSOS
「もしもし! 社長、いま朝礼中なんだよね。急ぎって、どうしたの?」
「忙しいところ、すみません。今日、不渡を出しちゃいそうなんです。ここで潰れたら、伊東さんのところにも返せなくなっちゃうし、どうにか助けてもらえないかと思いまして」
「はあ? まだ時間あるのに、なにを言っているんですか。いくら足りないのよ?」
「今日入金予定があった取引先が、急に弁護士を入れてきて、倒産しちゃったんですよ。いま手元に300万ほどあるんですけど、今日の当座、あと200万ほど足りないんです」
その瞬間、デスクの袖から1冊の顧客ファイルを取り出した伊東部長は、それを佐藤さんに手渡しました。同時に、中尾社長を呼び出すよう社長から耳打ちされた部長は、目を合わせてうなずくと事務所に来るよう誘導を始めます。
「なんだ、社長。水臭いな。早く言ってくださいよ。ウチが用意してあげるから、いますぐおいで」
「本当に貸していただけるんですか? 家族も車も、みんな伊東さんのところに入れちゃっているから、これ以上は何も用意できないですけど……」
「大丈夫。手持ちのお金と印鑑、それに通帳と手形帳を持って、ウチの事務所まで来てください」
「ありがとうございます。やっぱり伊東さんに相談してよかった。1時間もかからないと思いますので、よろしくお願いいたします」