コラム
【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

昭和天皇は朝ドラ『純ちゃんの応援歌』のファンだった! 皇室が愛したテレビドラマたち

2023/06/03 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

――ほかには昭和天皇は映画もお好きだったと聞いています。お忍びで映画館まで足を運ばれたのでしょうか?

堀江 さすがに映画館ではありませんが、皇居の中に、映画フィルムを再生できるホールがあって、それをご利用だったようです。吹上御所の玄関ホールには映写設備がありました。また、当時の宮内庁の庁舎3階の講堂はふだんは記者会見などに使われていたそうですが、映写設備もあったので、天皇陛下のための映画館にもなったのだとか。

 以前はレンタルビデオのお店が街のあちこちにありましたよね。しかし、昭和天皇は、当時の庶民がビデオテープをレンタルしたように、映画会社からフィルムを借りてご覧になっています。

 昭和45年度(1970年)に天皇がご覧になった映画は、なんと200本以上。20世紀フォックス社からは1本につき300円のレンタル代で、52回。現在の貨幣価値で換算すれば、2000円前後といえるでしょうか。意外にお値打ち価格のような気がします。ほかには、日本映画新社、読売映画社、理研映画社の各社からも同じ料金で52回分のフィルムのレンタルを行ったそうです。娯楽映画もご覧になったようですが、記録映画、ニュース映画などをとにかく好んでおられたとのこと。

――年間200本もの映画をご覧であったというと、映画評論家になれるくらい、映画がお好きだったということですね。

堀江 そういえるでしょう。録画したテレビ番組は就寝前のリラックスタイムにご覧になっていたという記録がありますが、映画鑑賞は、昼間のご公務の合間でしょうか。娯楽作品より科学映画、そして記録映画がかなり多いことを考えると、社会情勢を知る窓口として、映画を利用していただけでなく、昭和天皇の中で、日常的なテレビのニュースより、映画というメディアへの信頼度が高かったと考えられます。

 映画を見に行ったら、ニュース映画が本編の“前座”として上映されたりしていた、戦前の習慣が戦後も残っていたともいえるでしょうが……。

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『眠れなくなるほど怖い世界史』(三笠書房)など。最新刊は『日本史 不適切にもほどがある話』(三笠書房)。

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最終更新:2023/06/03 17:00
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