『ザ・ノンフィクション』人力車回にも登場、「スパルタ職場」を志願する人たち
5月7日放送の『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)、テーマは「人力車に魅せられて 3 ~浅草 女たちの迷い道~ 前編」。
『ザ・ノンフィクション』あらすじ
東京・浅草の風景に彩りを添える人力車。10社以上がしのぎを削る中、赤いはんてんがトレードマークの「東京力車」には53人の俥夫(しゃふ、人力車の運転手)がおり、そのうち15人が女性だ。
東京力車の俥夫になるには、社内の卒検に合格する必要がある。それまでは研修生だ。卒検はシミュレーション形式で東京力車社長の西尾を「客役」として人力車に乗せ、浅草を案内するというものだが、人力車を安全に走行させながら、浅草の観光案内も行わねばならない試験はかなり難易度が高く、研修期間中で6割以上が辞めてしまうという。社長を乗せて走る緊張感からか、卒検中に過呼吸を起こしてしまう研修生もいた。
研修生の指導役を務めているのが青山学院大学4年生の俥夫・ミイ。ミイ自身も卒検に苦労し、6回目でようやく合格できた。ミイは中学時代、水泳の有望な選手だったが、高校から伸び悩んでしまう。それが彼女にはかなり堪えていたようで「あの自信ないまま社会出たら、やられて終わってただろうな」と話し、その後の東京力車での成功が心の支えとなっているようだ。ミイは大学で、大学公認新聞「アオスポ」の記者としても活動しており、アナウンサーを志願している。
愛知の小学校で教頭をしているミイの母・文恵が上京した際、ミイは文恵を人力車に乗せ、浅草を案内。その夜、母と娘は対話をする。「アナウンサーの試験結果は振るわない一方、それ以上に東京力車への思いを語る」ミイと、「東京力車は娘にとって大事な場所なのだろうけれど、それはそれとして就職してほしい」文恵の間には、すれ違いが生まれているようだった。
そして、ミイは19歳のアキナの教育係となる。アキナも研修生生活が8カ月を超え、卒検に苦労している模様。特訓の末、アキナのリベンジ卒検を迎えるが、かじ棒(人力車を引くために俥夫が握る棒状の部分)を落とす大きなミスをしてしまい、不合格に。ただ字幕で、今回の放送直前である2023年5月1日の卒検で、アキナが無事合格したと伝えられた。
一方のミイは就職せず、アルバイトとして東京力車に残る選択をし、報告のため愛知の実家に向かう。
『ザ・ノンフィクション』スパルタ職場で働きたい!
アキナが東京力車に入りたいと思ったのは同番組を見たことがきっかけだったそう。なお、その放送回は以下だと思われる。
同回は、卒検に落ち続ける30歳のアツシが、教育担当の押木と猛特訓するも、結局合格できず東京力車を去る――という内容だった。なお、アツシはその後の放送回で、軽井沢の人力車会社で俥夫として働いている姿を見せていた。
『ザ・ノンフィクション』の「スパルタ職場シリーズ」といえば、ほかにも、横浜の「秋山木工」や京都の「泣き虫舞妓物語」があるが、どちらにも「『ザ・ノンフィクション』を見て志願した」というアキナのような人がいた。
私は秋山木工も東京力車も京都の舞妓も「絶対自分には無理」と思ったけれど、これらを見て「私もやってみたい」と思う人もいるのだから、人の感じ方はさまざまだ。企業側からすれば、この厳しい条件を見た上で、なお「やってみたい」と思える熱意ある人材を集められるわけで、同番組は実に効率のいい人材募集方法なのかもしれない。
『ザ・ノンフィクション』アキナの「オッス」に足りないもの
卒検に苦戦していたアキナの口癖は「オッス」。これは中学時代の運動部で身につけたもののようだ。しかし、接客のシーンでは「オッスはちょっと」と、押木に軽くたしなめられる場面も。たいていの人ならここで言うのをやめると思うが、それでも「オッス」を続けるアキナにとって、「オッス」には譲れぬ美学があるのかもしれない。ただ、アキナは自宅に帰ったときも「ただいま」の要領で「オッス」と言っており、単なる習慣になっている可能性も高い。
一方で、19歳女子の口癖が「オッス」というのは、アキナ以外の人にしてみれば「なんで?」だろう。さらに、番組を見る限り、アキナのテンションは低めで、「オッス……」にも消極的な雰囲気が漂っているため、違和感に拍車をかけていた。
もしアキナが、弾けるように力強く「オッス!!!」と言っているのであれば、「この人はこういうキャラなんだろう」と、納得感があったように思う。
次回は今週の続編。就職活動をせず東京力車に残る決断をしたミイに対し、母・文恵は何を話すのか。