中学受験、偏差値50に届かない息子を「小6秋に強制退塾」させた親の後悔
塾は客商売ということもあるが、子どもたちの頑張りを最も近くで見ているだけに、通常、親が退塾を申し出ても、思い留まるよう説得するケースが大半。しかし、悟志くんはなぜか引き留められることもなく、中学受験はそのまま“強制終了”になったそうだ。
「主人は、『このまま受験をしたとしてもたいした学校に入れない。こんな塾に金をつぎ込み、ロクでもない学校に金を払い続けるなんてことはできない! 高校受験で頑張ればいい!』と言って聞きませんでした」
当の悟志くんは、もともとおとなしい性格で、口数も少ないためか、母親の佐和子さんにもその本心はつかめないまま、学区公立中学に進学。
そして、特に問題もないまま、県立高校に進学し、学校推薦を使って私立の中堅大学に入学した。しかし、大学を卒業したものの、就職活動は一切せず、現在に至るという。
「もちろん、コロナ禍の影響もあるんでしょうが、一番の原因は中学受験の“強制終了”なのでは? っていう疑念が拭えないんです。息子のチャレンジする気持ちを根こそぎ奪った気がしてしまって」
佐和子さんが言うには、悟志くんは中学、高校時代、特に懸命に勉強に打ち込んでいたわけではなく、受験時も「この内申なら、○○高校は受かる」「この評定平均なら、○○大学は無試験で入れる」といった具合に、受動的に進学先を決めたそうだ。
つまり、悟志くんは努力の末に何かを成し遂げる経験が乏しいわけだが、佐和子さんは「そもそもチャレンジすること自体がムダという先入観があるのでは?」と考えており、それを植え付けてしまった責任を感じている。
「主人は悟志に対して『もうほっておけ!』の一言。でも、こうなったのは私たち夫婦が、中学受験を中途半端に終わらせたからなのかな? と思うと、後悔しかないです」