田中みな実の「人付き合いない」発言――庶民からの共感が「危険」と感じるワケ
例えば、会社員の場合、一緒に働く人の顔ぶれが変わるのは、人事異動や転勤、あるいは自分が転職したとき程度で、基本はそんなに変わらない。プライベートで自分から積極的に交友を増やそうと思わない限り、人間関係はほぼ固定化されてしまうだろう。
それに対し、田中のようにオファーがあって成立する人気商売の場合、一緒に仕事をする人の顔ぶれはどんどん変わり、人と知り合うチャンスは会社員より格段に多い。もちろんチャンスがあることと、親しくしたい人と出会えるかは別の話だが、「その気になれば」人付き合いには困らないわけだ。
特に田中のような売れっ子と親しくなりたいとすり寄ってくる人は、たくさんいるだろう。それに、もし田中が本当に人間関係を持たなかったとしても、田中には身の回りの世話を焼いてくれるマネジャーがついているわけだから、ひとりぼっちになって孤立無援になることはまず考えにくい。
けれど、一般人、特に一人暮らしの女性が田中を真似て、周りの人を「どんどん排除していく」ことをすると、本当に“独り”になってしまう可能性がある。南海トラフ地震や新型コロナ肺炎など、人間にはどうすることもできない自然界の脅威が迫る中、日ごろからゆるやかにでも誰かとつながっておかないと、いざという時に「誰にも頼れない」ということになりかねないのだ。
阿佐ヶ谷姉妹は、女性の共感を得ているタレントとしてよく名前が挙がるコンビだが、その理由は、彼女たちのネタがウケているからといったこと以外に、2人が醸す雰囲気、あるいは「気の合う人がすぐ近くにいて、いざとなったら頼れる安心感がうらやましい」からというのもあるだろう。田中の「人付き合いないですよ」発言が世間から共感を呼ぶ一方、若い女性は、阿佐ヶ谷姉妹的な距離感の人間関係のあり方を参考にするのも手だと思うのだ。
話を田中に戻そう。そもそも他人にイライラするのは、単にその人と相性が悪いこともあるが、自分の思考が「ああするべき」「そんなのムダ」と支配的もしくは批判的なときにも起きやすい。田中の意見に共感する人は、実はそういった思考に陥っている可能性があるだけに、周りの人間を排除する前に、まずは自分を振り返ってみるのも大事だろう。
そして、田中自身にも、ぜひ自分を振り返ってほしい……なんて思わない。女子アナから始まり、女性誌の表紙を飾るまでビッグになっても、なーんかイライラしている。それが彼女のタレントとしての個性であり、最大の魅力だと思うから。
一般人よりはるかに恵まれているのに、まるで一般のように悩む。それが田中の最強の武器かもしれない。