コラム
【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

メーガンは本当に“多様性のシンボル”なのか?Netflix『ハリー&メーガン』にモヤつく理由

2023/01/28 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

 もはや名ばかりの王族となったヘンリー王子には、メーガンさんとセット販売されるリアリティ・タレントとして生きていくしか、活路はないのでしょうか。『ハリー&メーガン』では、ほぼすべての質問への口火を切るのはメーガンさんでしたから、口下手でシャイなヘンリー王子の行く末には不安が募るばかりです。

 そうしたヘンリー王子が抱える鬱屈が、活動的なメーガン・マークルさんをより魅力的に際立たせたのでしょうが、彼女は妃殿下向けというより、活動家向けのパーソナリティの持ち主でした。また、彼女の“中流アメリカ人意識”はイギリス王族の出身であるヘンリー王子との結婚でも微塵も変化せず、結果的に、二人の結婚は「貴賤結婚」といわれる関係にありがちな問題を大いに抱え込むことになったのです。

「21世紀に身分の話!?」と思われるかもしれませんが、欧米社会において、生まれ育った家庭環境、そして社会環境はスティグマ(刻印)として生涯、その人につきまとう代物だと今なお、強く考えられています。これは厳然たる事実で、メーガンさんがこの番組の中でとった言動を見ていても、明らかです。

 彼女はあらゆる貧困を支援する立場を崩さず、“多様性のシンボル”として振る舞いたいようでしたが、自身がギャングの横行する貧民街の出身だと報道されたことにはたいそうご立腹で、自分が少女時代に暮らした街並みや、住んでいた家を母親とともに車で移動しながら、「素晴らしい場所!」とコメントする姿をわざわざ撮影し、見せてきました。古風なタイプで、規範を守り、成績はオールAの優等生の少女であったとも……。

 しかし、後に自身が認めているように、イギリスの上流階級の頂点に位置する英王室出身のヘンリー王子とメーガンさんには身分的、経済的な格差だけでなく、文化的な大きな落差があり、これはどうやっても解決できるものではなかったようです。これが彼らの結婚を「貴賤結婚」だったと認めざるをえない理由となって、彼らに大きな不幸をもたらしたと考えられます。

 誰しもそうですが、自分をこそ、平均的な人物だと考えがちです。

『ハリー&メーガン』の発言を見る限り、メーガンさんは、とりわけそういう傾向が強い上に、自分が宇宙の中心のように生きており、周囲の人々にもその“秩序”に従うことを求めているようです。

 そして彼女は、自分の価値観の外に決して出ようとしないのですね。自分の生まれ育った文化圏を“最上”として捉えるがあまり、そのポジションから見て“下”になる貧しい移民層の人々の支援では強く輝くことができるのですが、それよりも“上”の世界にはまったく順応できず、輝きを失ってしまっていたようです。

 たとえば、彼女はヘンリー王子が属するイギリスの上流階級の伝統、慣例、文化にはまったく無知であり、無知であることをむしろ誇っているかのようなそぶりが見られたのには閉口してしまいました。

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