King&Prince分裂劇、なぜ“暴走ティアラ”は生まれるのか? 臨床心理士が「陰謀論に走る理由」を解説
なお、“暴走ティアラ”化しやすい人の傾向については、そもそもアイドルにハマるタイプの人全般にその“素質”がありそうだ。
「もちろんアイドルファンすべてに当てはまるわけではありませんが、私の研究によると、直接的に関与のないアイドルと自分の一体感を心の支えにするタイプの人には、3つの特徴があります。1つ目は『良くも悪くも人に影響されにくく、主観的な判断を正しいと考えやすい』、2つ目は『人一倍敏感で、不安や心の痛みを感じやすく、感情的になりやすい』、3つ目は2つ目と関連しているのですが、『感情的な面が行動的なエネルギーになりやすい』。
またこういった特徴を持つ人は、自分と感性の合う人には心を許す一方、感性が合わない人には表面的にしか交流しない面を持つため、『自分と意見の合う人ばかりが周りにいる』という環境を作りがちともいえます」
杉山氏の研究による「アイドルにハマる人の特徴」は、“暴走ティアラ”の言動とつながる。応援するキンプリの分裂に人一倍心を痛め、その痛みを緩和するために犯人捜しを行う。「この人が犯人だ」という主観的な判断に絶対的な自信を持って、抗議行動を起こす。自分の周りには同意見の人ばかりという環境も相まって、さらに勢いづいていく――。
“暴走ティアラ”の言動を受け、杉山氏は「アイドルにハマるタイプの人のパーソナリティ通りに、行動のプロセスを踏んでいると感じた」そうだ。
“暴走ティアラ”を攻撃するのは同じ穴のムジナ――“キンプリという物語”の終わらせ方を見つけてほしい
しかし一方で、“暴走ティアラ”の言動に、心をモヤモヤさせているティアラがいるのも事実。SNS上には、残り少ない5人での活動を穏やかに応援したいと願いながらも、“暴走ティアラ”の影響で、心を乱されているという声も多数見受けられる。
「“暴走”していないティアラは、“暴走”する人のせいで、世間から『ティアラはタチが悪い』と見られること、またキンプリ自体の品位を落としかねないことを危惧しているのかもしれません。ただ、『自分と“暴走ティアラ”は違う』と思うことはいいのですが、“暴走ティアラ”を攻撃すると、結局、同じ穴のムジナになってしまいます」
5人体制のキンプリを「喪失」し、心の痛みを感じているのは、「すべてのティアラに共通していること」と、杉山氏は言う。
「ティアラの中には、その痛みを受け入れられない人がいる……と捉えるのがいいのではないでしょうか。はたから見ると“暴走”にしか見えない言動であっても、彼女たちは、自分にとっての“キンプリという物語”を完結させようとしているのです。
そしていま、心がモヤモヤしているというティアラも、自分なりの“キンプリという物語”の終わらせ方を考えてほしいですね。ジャニーズを旅立つ3人、ジャニーズに残る2人、そして5人のキンプリを失った自分自身、そのいずれもが幸せになる完結の仕方が見つかることを祈っています」
杉山崇(すぎやま・たかし)
神奈川大学心理相談センター所長、人間科学部教授。公益社団法人日本心理学会代議員。子育て支援、障害児教育、犯罪者矯正、職場のメンタルヘルスなど、さまざまな心理系の職域を経験。『いつまでも消えない怒りがなくなる 許す練習』(あさ出版)など著書多数。
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