ヘンリー王子の自叙伝『スペア』、売り上げ好調のウラで「フィクション本」と批判された“事実と異なる記述”とは?
1月10日の発売初日に143万部以上を売り上げ「1日で史上最も多く売れたノンフィクション本」になったと発表されたヘンリー王子の自叙伝『スペア』。リーク通りの内容をウィットにあふれた語り口でつづった読みやすい本だが、本を読んだ人からは「初体験、薬物体験、戦争で殺した人数など書く必要はあったのか」「70年間王室を守ってきたエリザベス女王に申し訳ないと思わないのか」「いつになったら被害者意識から抜け出すのか」と批判が続出。
また、プロモーションのためメディアに立て続けに出たことからか、「ニューヨーク・タイムズ」は「同じことを繰り返すだけで、飽き飽きする」としらけ気味。さらに、事実と異なる箇所がいくつもあるため、「ノンフィクションではなくフィクション本なのでは」と揶揄する声も上がっているようだ。
売り上げ好調の『スペア』には、すでに欧米メディアが抜粋して報じているウィリアム皇太子やチャールズ国王との確執、カミラ王妃のように自分自身のPRのためメディアに情報を流す王室メンバーへの批判、母・ダイアナ元妃の死と、メディアやタブロイドへの不満などがつづられている。
また、自身の初体験秘話や、勉強ができず早々に大学進学を諦めたこと、アメリカのコメディ『フレンズ』が大好きで三枚目キャラのチャンドラーと自分を重ね合わせていたこと、そのコメディの出演者コートニー・コックスの自宅に泊まったことがあり(マジック)マッシュルームでトリップしたことなど、”ヘンリー王子のトリビア”がふんだんに盛り込まれ、ファンを大喜びさせる内容となっている。
一方で、世間から最も問題視されている「タリバン兵を25人殺した」という告白について、王子は本の発売当日に出演した米CBSの深夜トーク番組『ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア』で、「私がこの数を自慢しているとイギリスのメディアは伝えているが、誤りだ」「彼らは私の家族を危険にさらすような報道をしている」と批判。
「(戦争のPTSDで)自殺する退役軍人が多いから、それを防ぐために、あえて数字を書いた」と説明したが、本には退役軍人の自殺率の高さやそれを防ぎたいという記述はなかった。このことに関して、現役・退役軍人たちは「戦争で殺害した人数を公言することが問題なのだ」と強く非難している。
イギリス国民からも「恥ずかしい」という声、「もう王子じゃない。ハリウッドスターに成り下がった」と軽蔑する声が噴出。中には、「王子の口から、彼が経験したストーリーを語る必要があった」「彼のメンタルヘルスのため、トラウマのヒーリングのために必要だった」と、『スペア』出版に賛同する人もいるが、ネット上では家族の許可なくプライバシーに関わる情報をあけすけに語っていることに不快感を示す人のほうが圧倒的に多い。