コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

『あちこちオードリー』若林正恭、「人を傷つけない」ための過剰な気遣いが生んだ“嫌なシニカル”

2022/12/29 21:00
仁科友里(ライター)

 ただ、これだけだと、若林に「うるさいオジサン」という印象を抱く人もいるかもしれない。しかし、同番組出演者の平成ノブシコブシ・徳井健太が「これがMCということ」と援護射撃をしていたため、そういったネガティブな印象は受けなかった。

 徳井は、「MCとなると、(スタッフの)1つの乱れが自分の番組に響いてくる」「若林くん、本当は言いたくないよ」「でも、このままフロアの子が春日にタメ口きいていたら、全体が変になるから一応言うっていう仕事も、MCってやっていかなきゃいけない」と、若林はあくまでも「仕事のため」、20代のフロアディレクターを注意したのだと強調していた。こういうサポートする人がいることで、シニカルな人が悪者にならないで済むわけだ。

 笑いにもトレンドがあり、毒舌やシニカルな笑いが、敬遠されがちになる時期もあるだろう。売れっ子になったことで、そうした物言いがしづらくことも否定できない。けれど、だからといって、それらの笑いが「いらない」わけではないと思うし、特にシニカルな笑いは、若林の独壇場だと思う。番組MCにまで上り詰めた自身の立場をある程度踏まえつつ、他人を巻き込まない、正論の上に立った「オレはこう思う」というシニカルな笑いで、私たちをうならせてほしいものだ。


仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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最終更新:2022/12/29 21:00
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