エコバッグ窃盗犯の女VSベテラン万引きGメン! 防犯機器の「電源を抜く」狡猾な手口
結局、何一つ買わないまま店の外に出たので、そそくさと早足で歩く女が、駐輪場に停めた電動自転車に手をかけたところで声をかけました。
「保安の者です。お客さん、ご精算、お忘れじゃないでしょうか?」
「あ、はい。いや、買うつもりじゃなくて。すみません」
万引きした人に声をかけ、買うつもりじゃなくてと返されたのは、長年のキャリアの中でも初めてのこと。わずかに動揺して固まってしまいましたが、盗むつもりで来たと解釈するに至って、平静を装って事務所までの同行を求めます。
「ええ、わかっていますよ。事務所まで、一緒に来ていただけますか?」
「はい、あの、いや、ごめんなさい。お金、持っていないけど、大丈夫かしら」
「大丈夫ではないですね。お話は、事務所で聞きますから」
事務所に連れて行き、エコバッグに隠した商品を出させると、計26点、合計で6万円ほどの商品が出てきました。エコバッグの底には、ジュールス・デストルーパーのクッキー(548円相当)が4箱も隠されており、こちらも未精算であると本人が認めています。所持金を尋ねれば、3,000円ほどしか持っておらず、すべてを買い取ることはできません。
身分のわかるものを求めたところ、財布の中から折りたたまれた国民保険証を出してくれたので確認すると、女は54歳。ここから自転車で20分くらいの場所でひとり暮らしをしているそうで、迎えに来てくれるような人はいないと話しています。
「機械の電源を抜いたのは、なぜですか?」
「うるさかったから……」
「こんなにたくさん、どうするつもりで?」
「旦那がコロナで死んじゃって、お金がなかったんです」
店長を呼んで判断を仰ぐと、過去の被害も特定されている人だからと、すぐに警察を呼びました。するとまもなく、先ほど帰ったばかりの女性刑事が、少しうんざりした様子で事務所に現れます。