エコバッグ窃盗犯の女VSベテラン万引きGメン! 防犯機器の「電源を抜く」狡猾な手口
こんにちは、保安員の澄江です。今回は前回に引き続き、大量の万引き被害に悩まされる中部地方の大型ショッピングモールEに出張した際のことを記していきたいと思います。
出張2日目。昨日の報告を兼ねて出勤のあいさつに出向くと、昨夜遅くまで一緒にいた女性刑事が、総合事務所で私のことを待ち受けていました。昨日、捕まえた女の件で作成した調書に誤字が見つかり、訂正印をもらいにきたそうです。
どうやら一睡もしていないようで、昨夜に比べると疲労の色が濃く見え、髪の毛の脂気も増しています。留置されている女の状況を尋ねると、取り調べは違う刑事が担当しているから詳細はわからないと話しつつ、少なくとも協力的な態度ではないと愚痴をこぼされました。
執行猶予中の身であることから、そう簡単に罪を認めるわけにはいかず、最後の悪あがきをしているのでしょう。過去に盗んだ商品を、ネット上で転売していた証拠まで上がっていることを思えば、無駄な抵抗をしても心証を悪くするだけで有利になることはなさそうです。
「昨夜の件、被疑者からの話が十分に聞けていないので、検察庁から呼ばれることになるかもしれません」
「そうですよね。記録も残してあるし、呼ばれたらきちんと対応しますよ」
年に数回は検察庁に呼ばれていますが、いくらかの日当と交通費は支給されるので、私からすればアルバイトのようなものです。庁内に入れば、腰縄を巻かれた手錠姿の犯罪者たちが警察官に連れられ闊歩しており、その非日常的な情景を楽しむ自分も否定できません。
過去には、テレビで話題となった保険金殺人犯と庁内の廊下ですれ違い、窃盗で逮捕された元野球選手の隣で調べを受けたこともありました。衝立1枚を隔てて座るため、その内容が自然と耳に入り、ついつい聞き耳を立てたことを覚えています。
女性刑事を見送り、出勤のあいさつとあわせて昨日の報告書を店長に手渡すと、満面の笑顔で対応してくれました。昨日同様、顔認証システムの受信端末を持って現場に入ると、早速に発報して驚かされます。
慌てて画面を確認すれば、検知場所の情報と合わせて、ペラペラの状態に見えるLサイズのエコバッグを手首に提げた中年女性が映っていました。どことなく、タレントの柴田理恵さんに似ている50歳くらいの女性です。
検知場所付近に駆けつけて、それとなく周囲を見渡すも、その姿は見つかりません。この店の顔認証データは、珍しいほど確度が高いため、早く発見しないとやられてしまう気持ちに駆られて焦ります。不自然なほどの早足で広い店内を探し回ると、ようやくに食品売場の方から健康食品売場に入っていく女性の姿を見つけました。ペラペラだったはずのエコバッグは、すでに膨らんでおり、このまま出られてしまえば、もやもやすること必至の状況です。