『ザ・ノンフィクション』失踪や殴り合いのけんか……元受刑者支援の現実「あの日 妹を殺されて2 ~たとえ裏切られても~」
自社の経営という点から見れば、ショウタを雇ったことのメリットはなかったであろうが、2年ぶりに彼と再会した草刈は、道を踏み外さず社会復帰を遂げていることを、ただただ喜んでいた。それは、社会に加害者が増やさないという自身の信念が一つ、形になったことへの喜びだったのだろう。心底感心する。
ただ、ショウタのケースは珍しいのかもしれない。失踪した後に連絡も取れなくなるのはよくあるようだ。なお、前回の放送では真面目に働く様子が伝えられていた元受刑者・スグルも、今回の放送内で触れられていなかった。「何事もなさすぎて放送するほどではなかった」のであればいいのだが。
ちなみに、今回番組内で説明された再犯者率は49.1%(2021年版犯罪白書より)で、前回放送時に触れられていた、2019年度版犯罪白書の再犯者率48.8%よりも上昇してしまっている。
『ザ・ノンフィクション』「苦しさ」「興味本位」ではない薬物利用の動機
番組中、衝撃的だった言葉があった。コウスケがダルクの見学に行った際、元薬物依存者がミーティングで話していたことだ。
「(薬物を)苦しくて使ったわけではないです、興味本位で使ったわけでもないです。ただ何となく使いました」
つい想像しがちな「苦しくて(苦しさから逃げたくて)」「興味本位で」という理由ではなく、「ただ何となく」という、スマホを見るかのようなゆるい感覚で、薬物に手を出す人がいる。
そしてこの発言をした人の、自身への洞察の深さにも驚く。よく言われがちな「苦しさ」や「興味本位」は、どうも自分にはピンとこなかったのだろう。安易な想像で、人をわかった気になってはいけないと背筋が伸びる言葉だった。
次週は「美咲をさがして ~帰りを信じた家族の3年~」。2019年9月、山梨県・道志村にあるキャンプ場で、突然行方がわからなくなった小倉美咲さん(当時7)。必死で美咲さんを探す母親のとも子は、ネットで心無い中傷を受けることになり……。
関連記事
『ザ・ノンフィクション』コロナと物価高、“勝負師”なフィリピン人店主の一手は?「母と娘のラーメン ~ピンチをチャンスに変える人~」
『ザ・ノンフィクション』利用料月5,000円の赤字フリースクールと補助金問題「そこにいていいんだよ ~もじゃくん夫婦と不登校の子どもたち~」
『ザ・ノンフィクション』金に執着する認知症の父に、息子は声を荒げ……「あの日 僕を捨てた父は ~孤独な芸人の悲しき人生~ 後編」
『ザ・ノンフィクション』父親の遺産と、父の厄介な内縁の妻「あの日 僕を捨てた父は ~孤独な芸人の悲しき人生~ 前編」
『ザ・ノンフィクション』父親の遺産と、父の厄介な内縁の妻「あの日 僕を捨てた父は ~孤独な芸人の悲しき人生~ 前編」