コラム
【連載】彼女が婚外恋愛に走った理由

サブカル好き夫婦の人生を変えたキャンプの夜――お互いの友達との「浮気」がもたらした離婚の顛末

2022/11/06 16:00
いしいのりえ

 家庭を持っている女性が、家庭の外で恋愛を楽しむ――いわゆる“婚外恋愛”。その渦中にいる女性たちは、なぜか絶対に“不倫”という言葉を使わない。仰々しく “婚外恋愛”と言わなくても、別に“不倫”でいいんじゃないか? しかしそこには、相手との間柄をどうしても“恋愛”だと思いたい、彼女たちの強い願望があるのだろう。

(C)いしいのりえ

 健康で活力にあふれ、どんな無茶も利き、睡眠時間が短くてもへっちゃらで、仕事や恋愛に打ち込んできた――そんな20代を過ごした人が「当時は、自分が年を取るなんて夢にも思わなかった」としみじみ語る姿をよく見かける。

「私も20代の頃は『自分最強』って思って、この状態が永遠に続くような気がしていましたよ。まさかそんな自分がアラフィフになるなんて……でも今でも実は違った意味で『最強』って思っています」

 恋愛の延長のような結婚生活に奔走した20代、一人で生きていく覚悟を決めた30代を駆け抜け、現在、40代後半の亜耶さん(仮)。清々しい笑みを浮かべながら、一夜のちょっとした婚外恋愛が、自身の人生を一変させたという稀有な経験を明かしてくれた。

 北関東出身の亜耶さんは、地元の友達も含めて結婚が早かった。

「短大を卒業してからすぐに結婚しました。大学当時から交際していた彼は同い年。とてもウマが合い、離れたくなくって、在学中はずっと『通い同棲』みたいな感じだったんですよ。今月はこっちのアパート、来月はあっち……みたいに。お互いに就職が決まって卒業が近づいてくるにつれて『家賃もったいないね』ってことになって、卒業と同時に、お互いの両親に結婚を報告しに行きました」

 最初は彼のアパートで暮らし、貯金して少し広めのマンションに引っ越したという亜耶さん。地に足をつけて家庭を築くというよりも、「人生ゲームをやっているような……どんどんステップアップしていく感覚が楽しかったんですよ」と語る。

 お互いフルタイムの正社員で働いていたが、 当時はそれほど収入がなかったためか、子どもがほしいとも感じなかったそうだ。

「とにかく、夫と一緒にいることが楽しかったんですよね。当時はまだ『残業推奨主義』みたいな時代でしたから、毎日帰りが夜10時とかザラだったんですけど、クタクタになって帰ってから元夫と一緒にお風呂に入って、くだらない話をする時間が癒やしだったんです。私も元夫もサブカル好きなので、『みうらじゅんの新刊、面白かったよね』とか。金曜日の深夜、ビールを飲みながら『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)を2人で見る時間が今でも忘れられません。本当に楽しかった」

 20代当時の結婚生活を振り返りながら、「私は元夫のファンでしたね」と亜耶さんは目を細めた。

 だからこそ、たった一度の過ちが許せなかったのだろう。

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