“中学受験”に見る親と子の姿

「中学受験の失敗」が、わが家には必要だった――小学校受験不合格のリベンジを果たした娘が、学校を辞めたワケ

2022/09/10 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

小学校受験は不合格、6年後にリベンジを果たしたけれど……

 そこで、恵美子さんは娘の麻那さんをS大付属小学校に入れるべく“お受験”をさせたのだが、結果は不合格。仕方なく、照準を中学受験に切り替え、6年後、見事リベンジを果たしたという。

「最初は麻耶も学校が楽しそうでした。でも、中学1年生の後半あたりからですかね……登校を渋るようになってきて、徐々に欠席する日が増えていったんです。理由があるなら、それを解決するように動けばいいだけだと思うんですが、麻耶は、『朝になると体が動かなくなる』『なぜそうなるか自分でもわからない』と言うばかりで、途方に暮れてしまいました」
 
 学校の先生方は麻耶さんをすごく心配してくれたそうで、本人だけでなく、クラスメイトや部活仲間などにも話を聞き、学校を休みがちになった原因を究明しようとしたらしい。しかし、いじめもない、友人関係のトラブルもない、勉強の遅れもない、病気でもないという結果で、恵美子さんは余計に混乱してしまったという。

 結局、麻耶さんは出席日数がネックとなり、併設高校への進学は認められなかった。

 そんな中3の学年が終わろうとする冬のある日、麻耶さんが突然、通信制のC高校のホームページを恵美子さんに見せながら、こう宣言したという。

「ママ、麻耶はここに行こうかと思う。S中はママが言うように、すごくいい学校。友達もみんな優しくて、いい子ばかり。でも、麻耶には合わないってことがわかったの。今度は麻耶が決めてもいい?」


 恵美子さんは、麻耶さんのその言葉に衝撃を受けたそうだ。

「私、何をやっていたんだろう……って思いました。S小受験をさせたのも、S中へのリベンジを決めたのも、すべて私。何でなんでしょうね、『私が麻耶のために選んだんだから、絶対、麻耶も喜ぶはず! この環境に入りさえすれば、麻耶の人生はすごく楽しくなるに違いない!』って思い込んでいたんです。でも、麻耶と私とは別の人間だという、そんな当たり前のことすら、私には見えなくなっていたんです。私は最低の母親だって思いました」

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